先日、東北地方の某市から患者さんが受診されました。当院まで200km以上ありますので、朝5時に自宅を出てきたそうです。
当院で診ている、ぜんそくとアトピーと食物アレルギーを合併したアレルギー体質の強いお子さんのお母さんの妹さんのお子さんでした。つまり私の診ている患者さんのいとこに当たる訳です。
そのお子さんはまだ赤ちゃんなのですが、体の広範囲がガサガサで、かなり痒がった状態でした。実は、地元の「小児科、アレルギー科」の医院にかかっていたのだそうですが、アトピーとは診断されていませんでした。
姉のお子さんで、当院で診ている姉のお子さんはアトピーも決して軽くなく、それを見ていたため、親御さんはアトピーだと確信していました。しかしいくら聞いても「アトピーではない」と言われ、不信感を持つに至り、思い切って当院へ来られたそうです。よく言えば“セカンドオピニオン”となるでしょうか?。
一見して、アトピー性皮膚炎でした。しかも最重症でした。申し訳ないのですが、これをアトピーと診断できなければ、「アレルギー科」としては致命的と言わざるを得ません。何を根拠に「アトピーでない」と診断したのかとすら思います。
このお子さん場合も、アレルギー検査は行われており、卵と小麦が陽性でした。いつも言っているように、本当に湿疹の悪化要因になっていれば、除去の必要があるのですが、特に根拠もなく、母乳を与えている母でさえも卵と小麦を摂らないように指導されていました。敢えて言わせて頂けば、指導があべこべで、やっていることに一貫性が…と思わざるを得ません。ただでさえ、母はお子さんが痒がり、夜もぐっすり寝てくれないのに、母にも卵と小麦を避けさせるというより一層のストレスをかけるのはどうかと思います。
治療も、診断が適切でないので、不十分でした。湿疹が通っても改善しておりませんでした。本来なら赤ちゃんの瑞々しい肌が、ガサガサ、ゴワゴワしています。かなり炎症の強い状況でした。アトピーと診断して、皮膚の炎症を鎮める薬を選択し、塗り方も指導し、それだけ遠路なので申し訳ないのですが、2週間後に再診して頂きました。
さて、2週間後ですが、皮膚はかなり改善していました。かゆみも確実に減り、体を不機嫌に掻き壊すことはなくなってきたそうです。日々改善する姿を見てご家族は、私のことを「すっげー先生だな」とおっしゃってくれたそうですが、決して私が特殊な力を持っているのではないのです。「すっげー」と言われて悪い気はしませんが、私は「アレルギー科」の小児科医として、ガイドライン通りの当然のことをしただけなのです。
やはり「アレルギー科」の標榜の仕方に課題がありそうです。「アレルギー科」を名乗るのであれば、せめて重症なアトピー性皮膚炎は診断できなければならないし、母の食事指導についても冷静であるべきだし、軟膏も皮膚症状に見合ったものを処方しなくてはなりません。
決して今回が例外的なことではなく、地元や新潟県内でも日常茶飯事的に繰り返されていることだと思います。今回の患者さんの住んでいる県にも、もちろんキチンと対応できる小児科医はいるはずです。ただし、私の経験からすると少数だと思います。「アレルギー科」という看板はよく見かけますが、本当に専門的な指導をしているかどうかに関しては、あまり指標にならないと言わざるを得ません。
さすがに200km以上の距離を定期的に通って頂く訳にもいかず、その県内の本当の専門医を探さなければなりません。新潟県の小児科医なら誰が何の専門かどうかは分かりますが、他県はそうはいきません。あまり専門的でない先生に紹介してしまって、折角良くなって来た皮膚をまた悪化させることは患者さんに迷惑をかけることになります。
ちなみに、どうしたかといいますと、日本アレルギー学会のホームページから専門医を探しました。するとその県には何人かの専門医が見つかりました。その中でよりキチンと対応してくれるであろう先生を選択しなければなりません。
その次に食物アレルギー研究会のホームページから「食物負荷試験」をやっている病院を探しました。これもいつも言っているように医師の目の前でアレルゲンを食べさせて、食べられるかどうかを調べる検査ですから、正しい知識とある意味、正義感を持っていないとなかなかできません。幸い、アレルギー専門医であり、「食物負荷試験」をやっている先生を探し当てることができました。こういう先生なら安心してそれ以降の治療を任せることができます。
このお子さんの場合、離乳食として卵と小麦を与えることに慎重でなければならないでしょうが、成長とともに食べられるようになるはずですから、「食物負荷試験」でキチンと必要最小限の除去をして下さるはずです。
本当なら、こういう重症な食物アレルギーを持ったアトピー性皮膚炎の患者さんの受け皿が決まっていないといけないと思います。恵まれた関東のある県では、日本を代表するようなアレルギーの病院を複数持っていますから、重症なアレルギーで困ったら、行政の方からもその病院に行くよう周囲が受診を薦めるシステムができあがっているそうです。逆に、こういった体勢の整った都道府県は稀と言わざるを得ず、新潟や今回の患者さんの県では路頭に迷うようなケースも少なくないと予想されます。
上越では園の先生が当院への受診を薦めて下さることもあるようですが、困り果てて市外から当院に来られるケースも少なくありません。私がすべてを間違いなく対応できるかどうかは分かりませんが、それなりには対処できていると思います。しかし、行政が個人の開業医への受診を薦めるのも問題があるでしょうし、難しい問題と言えるでしょう。
なかなか解決は困難でしょうが、「これでいいのか?」と言えるだろうと思いますし、「これで良くない」とは確実に言えるだろうと考えています。


