先日、重症なアトピー性皮膚炎のお子さんが当院を初めて受診されました。
某政令指定都市からこちらに引っ越してこられたそうで、それまでは大都市の大きな病院の皮膚科で診てもらっていたようです。
一見して重症そうな患者さんでしたので、これまでの経過を詳細に聞いておく必要があります。すると乳児のうちからアトピー性皮膚炎と診断されており、食物アレルギーの存在を疑い、アレルギー検査を行われていました。検査が陽性の食品も多く、除去を指示されていました。「さすが都会は皮膚科の先生は、食物の関与を関与を考えて、的確に診断してちゃんとした治療をしているんだな」と感心しながら話を聞いていました。
皮膚は炎症が強く、痒そうにしています。アトピー性皮膚炎は外来治療を一生懸命しても改善がなければ、入院加療も有り得ます。その患者さんも「治療を強化したので、これでもダメなら入院して治療しましょう」と説明されていたそうです。新潟ではあまり聞かないように思いますが、入院した上でキチンとケアをして、一旦皮膚症状を安定させて、また外来治療に移行することはあるのです。「都会の先生はレベルが高いな」と思っていました。
このお子さんは、アレルギー検査で卵と牛乳、大豆が陽性でした。2歳になるのに、完全除去をしていました。その話を聞いた時に「あれれ」と思いました。その間、これらのアレルゲンを完全に除去するように言われていたそうです。アレルギー検査の値が極めて高い訳でもなく、過去に食べてしまって強いアレルギー症状を起こしたこともなかったのです。
私は「少なくとも納豆や豆腐は除去を続ける必要があるのだろうか?」と思いました。2歳という年齢で、即時型反応を起こしにくい大豆を完全に除去するケースはあまり経験がありません。卵も牛乳も加工品まで一切食べられないかどうかは、「食物負荷試験」をやってみなければ分からないはずです。
話をよく聞いてみると、大きな病院なのでもちろん小児科もあるのですが、小児科との連携はなかったようです。一般的には、皮膚科の先生が子どもの患者に「食物負荷試験」をやることはまずないものと思われます。皮膚症状が思わしくなかったので、除去を続けていたとおっしゃるかもしれませんが、アレルゲンと思われる食品を除去し続けて、症状が変わらなければ、逆に食物は関係ないんじゃないかと考えて、除去してきた食品の解除を試みて欲しかったと思います。
「食物負荷試験」を多くやっていると、「これくらいなら食べられるんじゃないか」という手応えはあります。多分、豆腐やビスケットなどは食べても何ともない可能性が高いし、トライしてみる価値はありそうです。
それにしても、入院を勧められただけあって皮膚症状は決してよくはありません。皮疹の程度から「重症」の更に上の「最重症」の部類に属すると判断されました。私のよく話に出すアトピーのガイドラインには、皮膚の炎症を抑える薬を選択し、充分に炎症を鎮めると重症度は「最重症」から「重症」に下がるので、治療のレベルを落とし、しかし更に治療を続け「重症」から「中等症」に下げる努力をすると記載されています。
どんな治療を受けていたのかは、お薬手帳を見れば分かります。医師によって治療の見解が異なる場合もあっていいのですが、私の認識からすると、皮膚の炎症を抑えるには弱い薬が少量しか出されていませんでした。今は薬の量も、チューブで大人の指の第一関節ですから2.5センチくらいを出して、それを大人の手のひらの面積を塗るのが適量といわれており、それが世界のスタンダードになっています。その先生もお考えがあってのことだと思いますが、赤ちゃんの顔にも使用するような弱い薬が、先の使用量からすると2~3日で終わってしまうくらいの量しか処方されていませんでした。
皮膚症状が安定しないのに、私が同じような治療をしたら、なかなか改善しないことになるでしょう。いつも言うように良くならなければ、なぜ良くならないかを考え、良くする努力をしないといけません。この患者さんの場合は、薬の強さ、塗る量に課題がありそうです。そこを狙って対処すれば、改善する可能性が高いと思われます。
また、卵、牛乳、大豆を完全に除去し続ける必要はないと感じています。少なくとも加工品は食べられると思われ、それも親御さんに証明するために「食物負荷試験」をやっていきたいと考えています。
一般的には田舎よりも都会、開業医よりも大病院の医師の方がレベルの高い医療を受けられるものと考える患者さんは多いと思います。ただ、私もそれなりにこだわって勉強はしているつもりです。親御さんには「田舎の医者だからこんなものだろう」とは思われたくないし、結局は医師の信念や技術で治療経過が変わってくることを理解して頂こうと思っています。


