週末は、上越市の休日夜間診療所の仕事がありました。
子どもから大人が嘔吐や下痢で受診されるケースが多く、まだ胃腸炎の患者さんが多いのだなと実感しました。その中で、蕁麻疹の患者さんが2名おりました。
そのうちの一人はまだ赤ちゃんだったのですが、ベビーフードを食べた後に蕁麻疹が出てきて、急いで受診されました。お母さんが機転を利かせて、ベビーフードの容器の包装をはがして持ってきて下さいました。
今回の患者さんの最大の特徴は、お母さんがフィリピン人だということです。同じアジアとはいえ、異なる文化、風習の中でお子さんを一生懸命育てていらっしゃいました。日本に来て何年経つのかは聞いておりませんが、漢字をマスターすることは並大抵の努力では難しいだろうと思います。
実は、以前もヨーグルトを食べて、蕁麻疹が出たことがあったそうです。今回も、よく気付いて持って来られたなと思うのですが、ベビーフードの包装には原材料表示が記載されており、「乳」という漢字の下に○印が付いていました。卵や牛乳などその食品の含まれるアレルゲンが表示されていることは理解されていたようです。乳製品に注意しなければならないことは分かっていたにもかかわらず、漢字が読めないがために、知らずにベビーフードを与えてしまったのです。
現時点では、卵、牛乳、小麦、ピーナッツ、ソバ、エビ、カニに関して表示義務があるのですが、もちろん食物アレルギーを起こす頻度が高く、強めの症状を起こすから表示が義務化されている訳です。日頃、診療していると外国人のお母さんも時々お見かけします。その下に英語の表示をつけた方が望ましいと思うのです。
このお子さんは母乳栄養だったため、例えば母乳が出にくくなった時や、園に預けて母乳を飲ませられない時にミルクを与える必要がある場合は注意が必要です。今回、比較的微量の乳成分で全身に蕁麻疹が見られたため、普通ミルクは飲ませられないでしょう。アレルギー用ミルクを使った対応が必要になります。こういうことは教えられないと分からない方も多いことでしょう。
お母さんも日本語でそれなりにコミュニケーションは取れるのですが、時折英語まじりでの会話になります。私も知っている単語を組み込みながら、食物アレルギーの基本や他のアレルゲンにもアレルギーがある可能性もあるため、アレルギー検査が必要なことを説明しました。
多分、以前かかっていた小児科で説明は受けているのだと思うのですが、もしかしたら日本語を充分に理解しておらず、整理できていなかったようです。また、数ヶ月前にRSウィルスにかかり入院したことがあるそうです。熱もないのに入院したことがひっかかっていたようで、それについても質問されました。休日診療所の診察時に私が応えるのも違和感がない訳ではありませんが、乳児がRSウィルスにかかると発熱がみられないことも少ないこと、ゼーゼーいって呼吸困難があったから入院を勧められたであろうこと、RSウィルスが恐い病気であることなども併せてお話ししました。
だいぶ理解が進み、胸に支えていたものが取れた様子で、診察室を出て行く時に「いいイクスプラネーションね~」とおっしゃってくれました。イクスプレインとは「説明する」という単語で、イクスプラネーションとは「説明」という名詞です。親御さんが外国人で、食物アレルギーのような慢性疾患をお持ちの場合は、より一層キチンと理解できるようなイクスプレインが求められるのだろうと思いました。
食物アレルギーは当院が専門で、こういう患者さんは私が診た方がいいとは思ったのですが、上越市内在住でも当院とは離れた地区にお住まいでしたし、既にかかっている小児科がありましたので、そこで今後も継続して診て頂くつもりでした。帰りの窓口で、私がどこの医院の人間か聞いていかれたようです。私が小児科医であることも、アレルギーが専門であることもご存知ないのにです。逆にそれくらい不安で仕方なかったのかもしれません。
推測になりますが、普通の会話はかなりできますので、医師の方も日本人と同じ扱いをしていたのかもしれません。小児科外来はどこも忙しく、説明に充分の時間をかけられないため、更に日本語もまだ充分理解できない状況で、二度もお子さんが蕁麻疹が広範囲に出て、とても不安に思っていたのでしょう。
こういう患者さんの受け皿も考えていかなければならないのだろうと考えさせられた一日でした。


