先日、上越に引っ越してきたばかりの患者さんに「ここは危険な地域なのかと思った」と言われました。
いきなりでどういうことかと言いますと、そのお子さんはゴールデンウィーク明けに熱があり、当院は待ち時間が長めということで、他の医療機関を受診したそうです。そしてマイコプラズマと診断されたそうです。
そのお母さんの周りのお子さんは皆マイコプラズマと診断されており、それまで何度かの引っ越しで他の地域を転々とされてきて、こんなにマイコプラズマが周囲にいることはなかったので、“危険”かと思ったのだそうです。
お母さんも疑問に思い、ネットで調べてみたそうです。マイコプラズマは5歳くらいから多くなり、咳がかなり出る病気と書いてあったそうです。私と同じ認識です。ちなみにお子さんは1歳で、咳も出ていなかったそうです。お母さんは「こりゃ、おかしい」と思ったとおっしゃっていました。
以前も触れましたが、つい最近まで流行っていたRSウィルスは高熱が続き、痰が絡み、ゼーゼーいう病気です。兄弟がRSウィルスが検出されていたし、典型的な症状だったのでRSウィルスが出るのは明らかでした。ある医院を受診して、お願いして検査してもらったそうですが、RSウィルスとマイコプラズマと診断されたそうです。
この患者さんは双子で、まだ8ヶ月でした。RSウィルスにかかりやすい年齢ですが、マイコプラズマはかかりにくいはずです。だいぶ前にマイコプラズマの検査は疑陽性が多いと触れました。以前かかった時の抗体を引きずっていて、治っているのに検査上は陽性になってしまうことが多いという意味です。しかし、生後8ヶ月で二人とも既にかかっているとは考えにくく、それこそ母に聞いてみても「風邪も引いたことがない」状況だったのです。
つい昨日もやはり10ヶ月にもかかわらず、「何度もマイコプラズマと診断された」という赤ちゃんが受診されました。仮に本物のマイコプラズマであっても、一度かかるとしばらくは抗体があるので、そう何度もかかるはずがないのです。申し訳ないですが、私も上越は“危険”な地域だと思います。
最近は、咳の長引くと医院を替えて、当院を受診される方が増えました。マイコプラズマといわれ、内服だけでなく、点滴にも通うよう言われたとおっしゃる方が多いのです。当院はマイコプラズマを疑うお子さんが多くなく、開院して2年半、「マイコプラズマが流行っている」という“噂”はよく聞きますが、点滴をしたことは一度もありません。大抵の患者さんにぜんそくがあるのを見逃されていて、マイコプラズマの治療はせずに、ぜんそくの薬を使うだけで、全員が数日で改善しているのです。医師は、診断能力を上げる努力をすべきだろうと考えています。
先日、目の周りの湿疹で当院を初診された患者さんがいらっしゃいました。他の部位にもあり、アトピーと診断すべきだろうと説明しました。そのお子さんは、他の医療機関でぜんそくの治療をされているのだそうです。確かに発作で入院しており、診断は正しそうです。治療もされているので、それはそれでいいのですが、医師から「小児ぜんそくは小学校に上がるまでに99%治る」と説明されたそうです。
それを聞いてビックリしました。10年以上前は一般的に8割治ると言われていましたが、最近は5~6割というのが専門医の間で常識になっています。つまり、気を緩めずキッチリと治療しないと大人に持ち越す可能性が高いということです。
私の記憶が確かなら、大人のぜんそくのうち、10数%は小児ぜんそくからの持ち越しです。アメリカのマルチネス医師らが、早期一過性喘鳴といって5~6歳までに6割はゼーゼーを繰り返さなくなるというデータを出しています。これも専門医の間では有名なデータです。申し訳ないですが、軽症だけ診ていても99%という治癒率にはならないと思います。
この考えが広まってしまうと、子どものぜんそくはほとんどが治療しなくてもいいということになりかねません。当院で診ている小学生、中学生でたまにゼーゼーしたり、肺機能が悪く治療を継続しなければならない患者さんが動揺してしまいます。ぜんそくには重症の方もおりますが、予後は決して楽観できるものではないのです。
私の地元は、“マイコプラズマがやたらと多い”、“ぜんそくが治り過ぎる”ようです。私は専門病院で学ばせて頂きましたし、子どものアレルギーや呼吸器疾患に少しは知識があるつもりです。私の知識を総動員しても、にわかに信じがたいのです。医師から説明されると「そうなんだ」と思ってしまうことでしょう。都市伝説ではありませんが「信じるか信じないかは、あなた次第です」という考えは医療の分野では通用しないと考えています。


