先日、患者さんが転居に伴い、紹介状を持って当院を受診されました。
アトピーと食物アレルギーの赤ちゃんだったのですが、紹介状にはびっしりとこれまでの経過が書かれていました。普通小児科医のやらない皮膚テストもやってありました。ただ者ではないなと思い、病院名を見ると某県の大学病院と書いてあります。
一般的に大学病院は、最高水準の医療を提供する場です。そういう施設に通っておられた患者さんが、当院のような田舎の開業医を受診されると、中には「医療水準が下がっても仕方ない」とお思いの患者さんもいらっしゃると思うのです。
ただ、私も低レベルな医療をしているつもりはないし、昨日も触れましたが食物アレルギーでは日本の第一人者の先生から手取り足取りご指導頂いたというプライドがあります。その後も学会で最新技術を学びながら、信念を持ってこだわって医療しているつもりです。国内の大学病院で食物アレルギーを売りにしている施設はあまり多くありません。場合によっては、それ以上のものができる場合もあるかもしれません。
時間をかけてキチンと説明すれば、「食物アレルギーの心得を持っている小児科医なんだな」と分かって頂けるはずです。それはもちろんですが、私の場合はいつもガイドラインを片手に説明しています。診察室の左側には本棚があり、そこには食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、ぜんそくのガイドラインが手を伸ばせば届く位置に置いてあります。
時々、「オレってちっちぇーな」と思ってしまうのですが、ガイドラインの中に書いているガイドライン作成委員の恩師の名前を指差して、「この先生の元で指導してもらっているので、それなりのことはできるつもりです」と言ってしまっています(汗)。「オレは虎の威を借る狐か」って思っちゃうのですが、ある意味最も手っ取り早く患者さんを安心させる方法なのかもしれません。
先の患者さんの場合、少し私の方針とズレがありました。アレルギー検査結果を重視し過ぎているきらいがあり、卵、乳、小麦、大豆、米が除去されていました。もう少し食べさせてみた方がいいと思われ、解除を進めていかなければならないと考えました。
話を聞けば、食べて実際に症状が出たのは小麦だけだそうで、他は数字で判断されていたことになります。1歳を過ぎると積極的に「食物負荷試験」を行い、除去や制限を解除する方向に転ずることが多いと思いますので、親御さんにはガイドラインを示し、「食べさせてみないと分かりませんので、負荷試験を進めていきましょう」とお話ししました。親御さんも「食物負荷試験」の話はあまり聞いていなかったようで、ずっとこれらの食品を除去するのは大変だし、医院で食べさせる姿勢に安心してくださったようです。
当院は「田舎の開業医」であることは事実です。ただ、都会の方が競争もあるでしょうし、刺激が多いのかもしれません。しかし、都会の大病院がハイレベルで、田舎の開業医がレベルが低いとは言えないはずです。結局、医師の心掛け次第でどうにでも変わることだと思っています。実際に開業してみて、いろんなレベルの医師がいることがよく分かりました。でも本来、医療レベルの均一化を図る目的で各種ガイドラインができたはずなのですが…。
とある患者さんが大学病院である病気の治療を受けていて、上越に引っ越してこられたそうです。ある開業医で引き続き経過をみてもらうつもりだったのですが、薬の副作用を心配して医師に相談してみたら「そんなの知らない」の一言で済まされたそうです。さぞかし落胆されただろうと思いますし、今は心得のある専門医の元で治療を受けています。引っ越して来たばかりの患者さんは、上越の医療事情をご存知でないのでこんなことが起きてしまったのでしょう。私なら紹介状を持ってこられた時点で、「専門の先生に診てもらった方がいい」と地元で最も詳しい先生の名前を教えると思います。
冒頭の患者さんがどうして当院を選んでくださったのか分かりませんが、私の専門分野ですから当院でフォローすべき患者さんだと思います。田舎でも場合によっては、大学病院レベルの医療ができることを示せたらいいなと思っていますが、それよりも何よりも現時点で食べられるものと食べられないものを明確にし、必要最小限の除去になるよう努力したいと思っています。


