医学は日進月歩です。それは紛れもない事実でしょう。
小児科診療の中心は、一般的には感染症です。感染症の大半はウィルス感染症ですが、特効薬があるのがインフルエンザのタミフルと、水ぼうそうのゾビラックス、バルトレックスくらいで、他のウィルスには特に薬はありません。抗生剤は全く効きません。
一方、細菌感染症には溶連菌や肺炎球菌、大腸菌などがあり、抗生剤が期待できます。どの小児科医でも扁桃炎や気管支炎、肺炎などは診断できるし、あとはどの薬を選択するかくらいで、そんなに大きく差がつくものではないと思っています。
私がアレルギーを専門としているように、やはり県内には感染症の専門施設で学んだ医師もごく少数ですがいます。感染症の本物の専門家からすれば「そんなことはない」と言われるかもしれませんが、一般的には人間の体には「免疫力」がありますから、足を引っ張らない治療をすれば改善していくと言っても間違いではないと思っています。
アレルギーの分野ではどうでしょう。地元の小児科でも、ぜんそくを風邪やマイコプラズマ、アトピー性皮膚炎を乳児湿疹と診断されているケースがかなり多いのです。風邪やマイコプラズマ、乳児湿疹と信じて疑っておらずつまり、残念なことに同じ診断が繰り返されています。食物アレルギーもアレルギー検査が陰性化しないと食べないよう指導されています。
今はそんなことがないように「ガイドライン」が各疾患ごとに出されているのですが、あまり参考にされていないようです。つまり、小児科の診療範囲の中で、アレルギーの子の割合も多いですし、アレルギーが医師の実力差がもっとも出る分野だと思うのです。
「ガイドライン」も約3年ごとくらいに改訂されるため、急に大きく変わることはないのですが、有効な新しい薬が発売されたりすると、プロとしてのその薬の使い方を知りたくなります。
アドエアというぜんそく治療薬があります。これはフルタイドという吸入ステロイドと、セレベントという長時間作動型の気管支拡張薬の2種類が混ぜられた薬です。ぜんそく患者さんで重症な方は、気管支が常に狭くなろうとしています。酸素の通り道が狭くなっては困るので、セレベントを吸えば気管支が広がり楽になるのです。また、ちょっと難しくなりますが、気管支にはアレルギー性の炎症があり、より痛んでしまうので炎症を抑えるフルタイドが必要になります。つまり、重症なぜんそく患者さんには、アドエアが一石二鳥であり、有効な治療なのです。
このアドエア、重症患者さんのみに使われる薬なのに「あれっ」という使い方がされていることがあります。フルタイドという吸入ステロイドが既に使われおり、別に調子が悪い訳でもないのに何故か処方されていたり、ぜんそくと診断されたばかりで、まず重症度を見極めてから治療薬を選択すべきなのに、いきなりアドエアが出されるケースがあります。2008年12月に改訂された「ガイドライン」にはアドエアの使い方が明記されているにもかかわらずです。
アドエアだけに限りませんが、新しい薬が発売されると、学会でもその効果が検証され、その薬に関する発表が増えます。そういった話を聞いていれば、どういうケースにどう使うのが有効な使い方なのかを勉強できるのです。
当院の場合、アレルギーにこだわっているし、上越市外からもアレルギーで困っている患者さんが受診されます。地元の医療に納得できず、期待を胸に受診されるケースも多く、いい加減な対応をしては申し訳ないと思うからこそ、アレルギーについてはキチンと知識を貯えておく必要があるのです。
重症なぜんそくのお子さんは、ダニの他にペットのフケが悪化要因になり得ます。一般的には、そんな患者さんがペットを飼いたいと言ってもダメというのが専門医の意見となります。しかし、ペットを飼うことで精神的にも安定し、ぜんそくの病状が改善したという学会発表を聞いたことがあります。ペットを飼うことで更に悪化してしまうケースもあるでしょうが、常識とは逆のケースもあり得ることを知っていると、診療の幅ができると思うのです。
当院の最も広めたい「食物負荷試験」も注目されているため、学会会場は黒山の人だかりになるのですが、新潟県から小児科医の参加は極めて少なく、より一層他県と比べた“人並み”から遠ざかる結果になっています。
個人的には標榜が自由な「アレルギー科」という看板は、アレルギー関係の学会に出ていないと標榜できないようにしなければならないと思っています。こだわっていなくても、また専門的に医療していなくても標榜できてしまい、患者さんがそれを頼りに受診してしまうのが現状です。つまり、「アレルギー科」の標榜は、医師の良識にかかっているのです。逆に我々アレルギー専門医が、知識や実力の差を示すことで、本物の「アレルギー科」かどうかを知ってもらうしかないでしょう。
医療にはいろんな問題が山積しています。私の専門分野もいつも指摘しているように例外ではありません。いずれにしても、専門的で良心的な医療をするためには学会に参加して自分のレベルを高い状態で維持する必要があるのです。田舎では休まない方が良い医師と評価されているところもあるように感じていますが、決してそうではないと思います。
土曜は市外からの受診も多く、休むのもはばかられますが、学会に参加することは自分が正直に医療していくために必要なものです。もちろん今後の医療に役立ていくことをお約束します。何卒ご理解の程、お願い致します。


