いよいよテレビ局からの取材当日を迎えました。
食物アレルギーの医療というのは、とかく注目はされません。大人も意外と見られることが分かっているのですが、基本は“食べない”ことです。不注意で食べてしまえば、それは「自己責任」となります。本人も反省しきり…ということになるでしょう。
しかし、子どもの場合はそうはいきません。往々にして何の疑いもなく食べてしまい、一気に症状が出てしまいます。それは大人の責任です。食物アレルギーの子どもは5~10%とも言われており、かなりの頻度になります。軽いお子さんから最重症のお子さんまでいます。1品から多項目に渡る子もいます。成長期のお子さんは、命がけで食事をなんてことになってしまいます。
食物アレルギーは、薬を飲めば治る病気ではありません。基本は「食べられるようになるまで待つ」というスタンスです。ぜんそくの新薬が開発されると、大々的に勉強会が開催されたりします。開発した企業がスポンサーになって開かれるのですが、それは企業の思惑がある訳です。しかし、食物アレルギーは薬もないので、勉強会や講演会は行われないのです。新しいぜんそくの治療薬を使うと、効果は絶大です。医師側も治療のし甲斐があるのですが、食物アレルギーは“じっと耐える身”なのです。脚光は浴びづらいのです。
食物アレルギーは、小児科医の間でも敬遠されがちな病気です。どこの小児科も混んでおり、3分診療せざるを得ない状況が続いています。食物アレルギーは本格的にやるには専門的な知識が必要であり、例えば卵焼きを食べて蕁麻疹が出たとします。アレルギー検査で卵を調べてそれで終わりって医院もあるでしょうが、過去の卵の摂取歴を聞き出さなくてはなりません。以前、茶碗蒸しを食べても何も症状が出なかったとしたら、今回のエピソードが本当に卵焼きで起きたのか検証しなければならないのです。
この姿勢は、食物アレルギーの対応の基本中の基本です。しかし、こんなことさえ行われていないケースが多いように感じています。スピード重視の医療をやっているところ程、こういう傾向が強いと思います。私なら過去の食事歴を聞き出し、皮膚テストも行います。腕に卵のエキスを垂らし、そこを小針で傷を付け、その傷から染み込んだエキスに反応し、アレルギーがあればその部分が腫れるというしくみの検査です。検査は15分後に判定ですから、また診察室に入って頂き、説明することになります。
今回は卵だけの話でしたが、卵、牛乳、小麦、甲殻類、魚類、ナッツ類などと多項目でアレルギーを起こす場合は、各食品について問診が必要になりますし、皮膚テストをやるにも手間がかかります。食物アレルギーのガイドラインには多品目にアレルギーがある場合は、専門医に紹介すると明記されています。残念ながら専門でない先生はガイドラインを熟知していないので、これまで紹介になった試しがありません。
中には、医師から面倒くさがられるような対応をされている患者さんもいます。病気があって、成長期でもあり、確実に食べられるものを増やしたいと思って、小児科医に相談に行っているのに、充分に説明もされずに追い返されてしまうのです。重症だと誰にも相談できず、必死にネットでアレルギー対応食品を調べ、与えている親御さんに過去何人にも会ってきました。食物アレルギーは「自分ひとりで耐えるもの」とお考えの親御さんは少なくないように思います。
私が専門と言うこともありますが、食物アレルギーこそ、医師の良心が試される分野はないと思っています。一生懸命やればやる程時間と取られ、医院の収益には結びつきません。「食物負荷試験」をやれば、時間もかかるし、症状が誘発されるリスクもあります。テレビでは事業仕分けが話題になっていますが、小児科の診療における「事業仕分け」では食物アレルギー医療は“不採算”ってことになってしまうのかもしれません。私も充分に対応できていないところもあると思いますが、私の目から見て“良心的”に医療をしている小児科医は極めて少ないと言わざるを得ません。それが新潟県の現状です。
こんな現状を取材で語りたいのですが、冷静にマイクに向かうことは私には難しいでしょうし、大したことは言えないと思われ、せめて格好悪くない程度のインタビューで済ませたいのですが(汗)。
当院は、アレルギーのお子さんが多く、親御さんと話す時間が長いので、診察室にはおもちゃが沢山置いてあります。診察のベットもおもちゃが所狭しと並べられ、使う時はおもちゃをどけなければ診察できません。取材に備え、一部撤去しようかという意見もあったのですが、「普段通りでいこう」ってことになっています。言葉遣いも結構フランクで「今日はどうなさいましたか?」なんて言葉は使いません。今日のタイトルの言葉は、かかりつけの患者さんのお母さんから「先生がよそ行きの言葉を使っていたら、笑ってやる」と言われたのです。
もともと注目されることが好きでなく、テレビ取材なんてされたことがないため、平常心で応対できる自信は全くありません。かかりつけの患者さんに笑われないためにも、できれば全て普段通りの対応をモットーに望みたいと思っています。


