小児科 すこやかアレルギークリニック

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酸素濃度89%
2010年06月04日 更新

寒暖の差があると、ぜんそく発作が誘発されやすいことをご存知の方も多いと思います。

今はその時期であり、4月からずっと調子のイマイチのお子さんがたちが少なくありません。ゼーゼー言ったり、強い咳込みで吐いたり、目覚めたりします。こうなると本人が一番辛いのですが、親御さんも当然おちおち寝ていられなくなります。つまり、患者さんとその家族の生活の質(QOL)は大きく低下します。

とっても変な言い方になりますが、自分の診ている患者さんがこうなっても、私には咳込みが聞こえる訳ではないし、自分自身の睡眠が妨げられる訳ではないのです。ただ、ぜんそくの治療にもこだわっているため、プライドが許さないのです。一日でも早く、こんな状況から脱してもらわないと困るのです。特に私の専門分野に関しては「絶対良くしてやる」という執念を持ち続けているつもりです。

ぜんそくを“風邪”や“マイコプラズマ”などと診断され、良くならないのに同じ薬を出し続けられている話をします。日頃診療していると、こういうケースはよく遭遇します。

自分を頼ってくれる患者さんが必死で通っているのに、症状が改善されていないににもかかわらず、同じ薬を出すのは“プロ意識”が足りないと言われても仕方ないと思います。医師は、患者さんの困っている症状を何とか良くしたいと思い、「どうしたら良くなるか」と悩むべきなのです。地元の患者さんはお人好しなのか、こんな状況でもあまり変だと思わないようですが、私はこれを「おかしい」と思って頂きたいのです。

先日、咳が止まらないという赤ちゃんが当院を受診されました。他の小児科で治療を受けていたそうです。1ヶ月程前には熱が続き、ひどく痰の絡む咳をしており、胸がペコペコして苦しそうだったということです。まだ赤ちゃんで「苦しい」とは教えてくれませんから、小児科医は聴診や検査で「この赤ちゃんがどれだけ苦しいのか」を客観的に判断しなければなりません。

こんな時に有用なのが「経皮酸素濃度」を調べることです。ドラマなどでも出てきますが、指先を大きな洗濯バサミのようなものではさみ、酸素がどれだけ体に取り込まれているか即座に調べられる器械があるのです。

正常値は98~100%であり、95%以下が赤点になります。この数値が低ければ低い程、呼吸困難が強いことを表します。例えば、お子さんが算数のテストで92点を取ってきたとします。普通なら「よしよし、頑張ったね」となるのですが、医学の世界では92点(%)は「こりゃヤバい。相当息苦しいはず。」と考えなければなりません。

一般的に、ぜんそく発作の時にこの値は低下します。しかも小発作より中発作、中発作より大発作と重くなればなる程下がります。ぜんそくに限らず、痰が詰まっても下がります。肺炎があっても、よほどひどくなければ下がることはありません。

先の赤ちゃんが某医院さんで苦しそうと言うことで経皮酸素濃度を測ってみたら、89%だったそうです。これだけ低い値でも何も指示はでなかったそうです。

私なら即座に酸素を吸わせ、なぜ酸素の取り込みが少ないのかを考えつつ、入院を考えます。それくらい悪い値です。これは研修医でも、呼吸不全を診る機会の少ないであろう整形外科や眼科の先生でも、慌てふためくような値なのです。RSウィルスなど痰が多く出る病気では、痰がつまり死亡例もあるのです。

私のよく言う小児ぜんそくのガイドラインには、軽い発作(小発作)なら96%以上、中発作なら92~95%、大発作なら91%以下、更にひどい呼吸不全なら91%未満と定義されています。大発作と呼吸不全は入院治療が必要と明記されています。

この赤ちゃんはぜんそくとはまだ診断できない状況ですが、89%という数字を当てはめてみると、良識のある医師なら慌てるという意味がご理解頂けると思います。小児科医がこれでは子どもの健康は守れません。敢えて言わせて頂きますが、ビックリするようなレベルの医療が行われている場合もあるのです。

患者さんは素人です。89%がどれだけ低い値かよく分かりません。親御さんは赤ちゃんが苦しそうだから、プロだと信頼して小児科医院を受診したのです。経皮酸素濃度を測った所までは良かったのですが、その悪い値を見て対応されないのは、とてもおかしなことです。患者さんは“おかしなこと”にも気付かないのです。

何のために検査するのか?。結果が悪ければ、それを治療に役立てるのが医療のはずです。こんなに悪い値であっても、入院が必要なくらいの呼吸不全の状態であっても何も対応されず、経皮酸素濃度を測ったからと医療費は請求されてしまうのは理不尽だと思っています。

上越はぜんそくの重い発作を起こしても、場合によっては1週間近く朝晩と点滴に通わせる医療をしている施設もあるようですが、ガイドラインには載っていない治療(?)ですし、私はおかしな医療はなくさなければならないと思っています。

今回の赤ちゃんも89%の状態で私の元を受診されたのなら、入院は避けられなかったと思います。親御さんの意思とは裏腹に酸素不足で辛い思いをさせてしまいました。入院の上で酸素を投与されれば息苦しい状況を軽減できたと思います。どの親御さんも入院はできれば避けたいでしょうが、ここまで悪ければ入院加療しか選択の余地はないと思います。

患者教育という言葉があります。特に慢性疾患の場合は、患者さんも病気についてある程度の知識を持たなければならないと思います。医師が良識と良心を持って対応してくれれば「お任せ」でいいでしょうが、ご自分のお子さんを守るためには、経皮酸素濃度が低ければ低い程、より強い呼吸困難を表していることを親御さん達に認識して頂くしかないと思います。

患者さんは医療が何が正しく、何がおかしいかよく分からないと思います。時々この場で触れていこうと思いますし、お子さんを守るためには、最低限は知識を持って頂きたいと思っています。