先日、小学生になっても卵を一切食べていないお子さんが今後の方針を相談に、遠路遥々受診されました。
親御さんもかなり困っておりました。そりゃそうですよね。医師は「検査が高いから、食べるな」と言えば一言で済みますが、親御さんは3食、365日×何年もピリピリしていなければならないのです。
今のままではまずいし、おかしいと考え、いろいろインターネットなどで調べてみたそうです。そこでようやく当院が声を大にしている「食物負荷試験」や「経口減感作療法」という最新の検査や治療があることを知ったそうです。地元では人気の医院をかかりつけにされていたそうですが、そのことを聞いてみても、受け流されてしまったそうです。
この辺は、相当専門的に勉強していなければ答えられないので、専門でない先生はいきなり患者さんから切り出されると、面食らうと思います。しかし、患者さんが必死に調べたことに対し、答えないというのは誠実と言えるでしょうか?。私がその場で答えられない場合は、「今度来るまでに専門の先生に相談しておくから、ちょっと待ってもらえますか?」と言ったと思います。
これまでの新潟での食物アレルギーは、言い方は悪いですが「臭いものにはふたをしろ」的な対応だったと思うのです。「数値が高く、アナフィラキシーになると困るから、食べないで」と繰り返してきました。
患者さんには、適切な医療を受ける権利があります。小児科医なら誰でも、さすがに「食物負荷試験」があること自体は知っていると思います。でもそんな検査があることをどの医師も口にしてこなかったので、言わば“封印”されていた状態と言っても過言ではないでしょう。
4月くらいまで猛威を振るっていたRSウィルスは、暖かくなってほとんどみられなくなりましたが、本当に今シーズンは大流行でした。呼吸困難を起こし、何人も入院が必要になり、病院のお世話になりました。そのRSウィルスは、外来では調べると医院の持ち出しになるため、調べない医師が多いのです。昨年12月から4月上旬まで当院では83人のRSウィルス感染を確認しています。一方、ラジオなどの感染症情報ではその間5人しかいないことになっています。RSウィルスも地元では“封印”されているのです。
医療のレベルは、医師の知識の差により変わってきます。どの患者さんも正しい医療を受けて頂きたいのです。当院では「食物負荷試験」を積極的に行っていますが、これは当院を知っていて、遠くても当院を受診できる患者さんだけのものにしてはいけないと思うのです。
先月末にテレビ局が当院の「食物負荷試験」の様子を取材に来てくださいました。そろそろ放映されるのではないかと思っています。夕方のニュースをどれだけの方が観てくださるのかよく分かりません。これまでは私の講演を聞いたり、ネットで調べた方にしか分からなかった「食物負荷試験」がメディアで取り上げられると言うことは、これまでの“封印”が解かれる最大のチャンスだと思っています。
食物アレルギーは、“数値が下がるまで様子をみる”というのが従来の対応でした。ですから小児科医は「食物アレルギーくらい自分でも診れる。他の医師に紹介する必要なんてない。」と考えているでしょう。その結果、冒頭のような小学校高学年になっても、卵を一切口にしていない患者さんが“作り出されて”きました。真面目なお母さん程、「子どものために」と医師の言い付けを守ってきたのだと思います。しかし、逆に適切にその除去の指示を解除しないと、食べられるはずのものを「僕は食べられない」と思い込んでしまうのです。
「食物負荷試験」が広まることは、医師にとっては都合が悪いことかもしれませんが、患者さんにとっては食べられる食品が増える可能性が広がるため、好都合のはずです。どんどん“封印”が解かれるべきですし、患者さんが適正な医療を受ける機会も広がるべきでしょう。
当院で開院して2年半程で500件ほどの「食物負荷試験」をやっていますが、約85%のお子さんは症状が出ず、安全に食べられました。残りの方は口の周りが赤くなったり、蕁麻疹が出たりで、軽い咳込みが見られたお子さんも稀にいます。一例もアナフィラキシーショックになったケースはありません。
実は、「食物負荷試験」の存在を知った患者さんが、ある病院で小児科医に相談したら「自分の子どもじゃないからそんなことができるんだ」と言われたそうです。申し訳ないですが、大きな誤解をしているとしか思えません。そんな危険なら「ガイドライン」で推奨するはずはないし、そもそも経験豊富な専門医に紹介すればいいのです。もしかしたら、「食物負荷試験」のことを知って、かかりつけに相談しても、そんな誤ったことを言われて更に“封印”されてしまうことを危惧しています。
当院はぜんそくやアトピー性皮膚炎にも力を入れていますが、新潟では患者さんが一番我慢を無理強いされている食物アレルギーに特に力を注がざるを得ませんでした。それがようやく次のステップに移行しようとしているのだと思います。
食物アレルギーの医療は「食物負荷試験」なくしてできないと言われています。食物アレルギーは子どもの病気の中でもかなり頻度の高い病気です。「食物負荷試験」は患者さんなら誰でも受ける権利があるし、やり慣れた専門医に紹介されるべきなのです。永年の“封印”が解かれて、正しい医療が広まり、不必要な除去や制限が新潟県からなくなることを祈っています。


