当院は、県内で最も「食物負荷試験」をやっている小児科だと思います。
食物アレルギーの診断書って、実は難しいものです。厳しく書いておけば、多少の誤食があっても何も起きません。それを書いた医師は何ら責任を負う必要がありません。一方、ギリギリの指示を出した場合は、体調が悪い時に症状が誘発されてしまうかもしれません。となると、園や学校側に迷惑をかけてしまうことにもなりますし、指示書を書いた医師として信用を減らしてしまうこともあるかもしれません。
私の考えでは、ギリギリよりもやや厳し目がベストだと思っています。厳しく、きつめの指示だと、オーバーな指示なので「あれもこれもダメ」となってしまいます。本人も「どうして僕だけ食べられないの?」となってしまいますし、園や学校も誤食がないかピリピリしていなければならず、本人のため、園や学校側のためにもプロとして適切な診断書を書く必要があります。
例えば、卵のアレルギー検査がクラス3だったとします。同じクラス3でも食べて何ともないケースもあれば、アナフィラキシーを起こしてしまうケースもあります。つまり、数字だけでは判断できない訳です。
当院では積極的に「食物負荷試験」をやっています。卵アレルギーなら、卵焼きなどの卵料理を食べられれば、克服したことになります。生卵がもっとも抗原性が強いのですが、給食では生や半熟の卵は出ないはずだからです。ですから、1個の卵を使って作った卵焼きを「食物負荷試験」に使い、食べられるかどうか判断しています。
しかし、アレルギー検査の結果があまりにも高く、無理そうだと思うこともあります。例えばクラス4とか6の場合だと、私も心配になります。それでも卵を食べさせることを諦めません。どういうことかと言うと、卵の加工品なら食べられる可能性があるからです。
先日、「食物負荷試験」を1日に4人やったのですが、偶然にもすべてカステラが食材でした。1~2歳のお子さんがほとんどでしたが、検査結果はクラス3や4で、一人だけクラス6でした。クラス6ならば、多分99%の小児科医が卵は加工品も含めて食べてはいけないと指示するでしょう。
私もただ無鉄砲に、実験的に食べさせている訳ではありません。お母さんから日頃の食生活を聞いて、勝算があって挑戦しているつもりです。無理矢理強行し、強いアレルギー症状を誘発してしまうと、親御さんが「食物負荷試験」を怖がってしまうこともあるのです。できれば失敗は許されません。この辺は、「なるべく食べさせてあげたい」と願う親心がなければなりません。それがなければ、無責任なくらいオーバーな指示しか出せないことになります。
結果を言いますが、クラス6のお子さんも含め、カステラを4人とも食べることができました。4人とも蕁麻疹が出たり、食べたがらないということもなく、ビックリするくらいあっさり完食してくれました。
念のために言っておきますが、クラス6でも全員がカステラを食べられる訳ではありません。アナフィラキシーを起こすお子さんもいることでしょう。食物アレルギーに精通した専門医が問診も診察も充分行って、挑戦してみた結果、食べられることが分かったのです。「食べられるものは食べさせてあげた」という一心で負荷試験を行っています。
もしかしたら、クラス6でも卵焼きが食べられてしまうのかもしれません。何年も前に3歳くらいのお子さんでクラス6にもかかわらず、卵焼きを食べさせて食べられた経験を持っていますし、平成19年に開院して以来の当院の経験でもクラス5であっても、卵焼きを問題なく食べてもらっています。
卵の検査結果がクラス5や6では、卵を完全に除去しなければならないと考えている方は多いと思います。アレルギー科を標榜する小児科医も同様でしょう。固定観念にとらわれていると、何も見えなくなってしまいます。その時点で、患者さんに適切な指示を出すことはできないのです。
ダメだと思っていると、何もできません。宝くじは買わないと当たらないという話に似ているかもしれません。とにかく挑戦してみないと、一歩も進めないのです。「うちの子はアレルギー検査が高いから、食べられないはず」だと思っていませんか?。
この文章を読んで、「挑戦してみたい」とか今の食事指導に疑問を感じたのなら是非相談してみてください。固定観念から一歩踏み出しましょう。


