「医師がみなアレルギーに詳しいと言うのは幻想である」とある医学雑誌に書いてありました。
先日、「何を食べさせたらいいか分からない」、「咳が長引く」という親御さんが当院を初めて受診されました。
これまでの流れをお話しすると、生後間もなく“湿疹”が出て小児科に行ったそうです。アレルギー検査をやったら卵、大豆、小麦の値が高かったそうです。湿疹の方は今は皮膚科に行っているそうですが、よくなったり悪くなったりを繰り返しているようです。不思議なことに皮膚科でも診断名は告げられていません。その後、ゼーゼーし出し、結局RSウィルスに罹患し、呼吸困難になったため病院に入院したそうです。それを契機に咳が出やすくなり、小児科に通っているもののを“風邪”と診断され、風邪薬をもらっているにもかかわらず、かれこれ1ヶ月も咳が止まらないのだそうです。
専門医が診れば、アトピーと食物アレルギーがあり、RSウィルスに罹患し、ぜんそく予備軍になったというのはすぐに分かってしまいます。しかし、そうでない先生にとっては簡単ではないのでしょう。
ミルクは飲んでいますので、ミルクアレルギーはないようですが、卵と大豆、小麦に強めの反応が出ていました。前医の指導は「卵は食べられないとして、食べるものがなくなるから、大豆と小麦は食べてもいいんじゃない?」という話だったそうです。アバウトな説明に、親御さんは心配で何を食べていいやら分からなくなり、混乱していました。そりゃそうですよね。医師はプロとして、極力分かりやすく、指導する必要があるのです。指導に結びつけるためにアレルギー検査をしたのですから、なぜ活かさないのだろうと思います。
大豆でも小麦でもアナフィラキシーという強いアレルギー症状を起こすお子さんはいます。何を根拠に「食べていい」と言うのかが、私にもよく分かりません。分からなければ、分かる医師に紹介するのが筋だと思うのですが…。分からないのを放置していると、似たような症状の患者さんにいつも同じ中途半端な指導を繰り返してしまいます。
まだ離乳食が始まって間もないので、米と野菜で進めて、安全に食べられるであろうタンパク質を考えながら食べさせていくのが正しい指導だと思います。何も理由なく、大豆や小麦が陽性になった訳ではないので、むやみに食べさせてしまうのは危険なことがあります。
生後間もなく出ていたのは、アトピー性皮膚炎だったのですが、小児科医と皮膚科医の両方が診ていても、キチンと診断が付けられていませんでした。「食物アレルギー」は小児科、「湿疹」は皮膚科と分けて診ていることに問題がない訳ではないと思います。乳児のアトピーに食物アレルギーを合併しやすく、食べ物が湿疹を悪化させることもあり、アレルギーを分かった医師が両方を診るのがベストだと思います。しかし、小児科のアレルギー専門医は新潟には極めて少なく、こういう別々に診られているケースはとても多く、どっちつかずになってしまうのでしょう。
アトピーと食物アレルギーのある赤ちゃんは、成長とともに咳が長引きやすくなることがあります。アレルギーの体質があると、アレルギーの病気が集中しやすくなります。かわいそうなことに、ぜんそくも合併することが少なくありません。私ならアトピーと食物アレルギーがあると、「ぜんそくが出るかもしれない」と網を張っています。往々にして合併してくることがあるのです。
そのお子さんがRSウィルスに罹患しました。RSウィルスにかかると、その後何年もゼーゼー言いやすくなります。このお子さんは、アトピーも食物アレルギーもあるので、今回RSウィルスにかかったしまったこともあり、かなりの確率でぜんそくを発症するものと思います。かれこれ1ヶ月間風邪薬を飲んでも咳が止まらなかったのは、“風邪”じゃないからです。
このお子さんは3つ病気がありますが、どれも的確な対応がされているとは思っていません。まだぜんそくとは診断できませんが、いずれゼーゼーが出てくると思います。ぜんそくとアトピー、食物アレルギーが3つとも過小に対応されていると言えると思います。
さすがに心配になって、医者を代えようかと思っていたそうです。周囲の人が「あまりむやみに医者を代えるのはよくない」と言ってくれたそうですが、私からすれば「おかしいと思ったら、医者を代えて下さい」と言いたいくらいです。結局、知人が当院の受診を勧めて下さったようです。
こういうパターンは新潟ではよく経験します。このお子さんは重症とは思っていませんが、これくらいであっても専門医が対応すべきなのでしょう。そうでないと患者さんが気の毒です。私が何でも知っていて、対応できる訳ではありませんが、それなりの知識は持っているつもりです。医師の間でも、親御さんの間でも、これくらいの病状の患者さんはアレルギー専門医が診るべきであるという認識が広まらない限り、症状が落ち着かず、不安の絶えない患者さんが減らないのだろうと思っています。


