先日は咳が長期間止まらず、医療機関を結果として転々としてこられた親御さんの話をしました。
親御さんから「こんなに説明してもらい、今日は納得して帰ることができる」とおっしゃっていました。前の先生にしてみれば“嫌な患者”だったかもしれませんが、私にとっては話をよく聞いて充分理解してくれる“いい患者”だと思いました。同じ患者さんでも医師にとっては正反対の評価になると思うのです。
私の経験を言わせて頂ければ、分からなければ分かりそうな医師に紹介した方が、患者さんのウケがいいと思います。
何でも分かる医者なんていない訳ですから、正直に「分かりません」と言った方が信頼してもらえますし、紹介状を書きますと言うと「ありがとうございます」と言われることが多いです。「この人、こんなことも分からないんだ」と考えるよりは、きっと「自分の子どものことを心配してくれて、もっと詳しい先生に紹介してくれる」とほとんどが肯定的に捉えて下さっています。
実際こんなことがありました。虫さされのような盛り上がった湿疹が手足に多数あり、とても痒がったお子さんが受診されました。ある小児科でステロイドの軟膏が出されていましたが、全く良くならないという理由で当院を頼って受診されました。ちなみに患者さんには診断の説明もなく、更にステロイドであるという説明もありませんでした。上越の医療レベルもまだまだだと思わざるを得ません。まだ患者さんの立場が弱いのでしょうね。
私は直感的に虫さされだと思いました。確かに服の中にはなく、手足と顔に限局していますから、虫の刺しやすい場所です。ただし、かなり多数です。しかも顔にもいくつも出ています。どういう理由かよく分かりませんが、虫さされによる炎症がとても強く、痒みも強いのだろうと考えました。前医のステロイドは皮膚の炎症に見合ったものではなかったので、効かないのだろうと思いました。
1週間後に受診して頂いたのですが、私の考えた処方薬を使い、改善傾向になっていました。しかし、手足の湿疹はしぶとく残っており、顔にも広がっているようです。治療方針は間違っていないと思いますが、私の診たことのないくらい多数の虫さされであり、顔に広がっていたため、自分が診つづけていいのか?という葛藤がありました。
自問自答した上で、ベテランの皮膚科の先生の紹介状を書くことにしました。虫さされで紹介状を書くのは、正直抵抗がありました。しかし、本当に虫さされか断定できないし、増えているのも不気味でした。誰が診るのがベストか考えると、百戦錬磨の皮膚科の先生に任せた方がいいと判断したのです。
自分で言うのも何ですが、親御さんからすれば私のやったことにマイナスのイメージはあまりないと思うのです。逆に紹介しない小児科医の方が対応が良心的でなかったと思われると思います。ちなみに、皮膚科の先生から返事を頂き、私の考えは間違っていなかったようです。紹介状を書くことで、答え合わせができた訳です。私も今後似たようなケースには、自信を持って対応できると思っています。
対応しても良くならなければ、医師としての評価を落とすことにつながります。それも引っ張れば引っ張る程、信頼を失いかねません。自分の手に余るようなら、素直に認めて対応できる医師に紹介状を書く方が信頼を保てると思いますし、その方が患者さんにとっても優しい医療が実現できると思うのです。私は自分のプライドよりも、患者さんにとってのベストの治療を提供する方を選ぶべきだと思います。周囲では、なかなかそうされていないように感じます。そういう考え方を私の地元に広げていきたいと思っています。


