暑い日が続いています。
夏期休暇が終わったと思ったら、土曜は当院でぜんそくの治療を受けている患者さんの治療を中止していいか判断するための「気道過敏性試験」を行いました。午前中は診療で、体の空いた午後にしかできないのです。それが終わったら、市の休日診療所の仕事が入っていました。夕方から夜まで診療です。
週が明けたら、10月に開催する「すこやか健康フェア」の準備もしなければなりません。いま話題の「経口減感作療法」の話なので、食物アレルギーで困っている患者さんに希望を持って頂きたいと思っており、多くの方にこのイベントのことを告知する必要があります。それにはそれ相当の準備が必要だと思っています。それとは別に、9月には食物アレルギーの講演が中越の方から2件依頼があり、その準備もあります。ゆっくりしているヒマはありません(汗)。
先日、「孤高のメス」という映画を観ました。
夏期休暇の飛行機の中で片道12時間程かかったのですが、飛行機の前席の背もたれの部分にモニターが付いており、映画を楽しめるサービスがありました。そこで観たのです。
アメリカで修行を積んだ優秀な外科医が田舎の総合病院の外科を立て直す、という内容でした。ありがちと言えばありがちなのですが、その病院の外科では、ガンをの手術をする際にベストを尽くさずにおおざっぱに病変部を摘出して、再発して死亡したら「寿命だった。仕方ない。」と説明するようなことをしていたようです。
また、手術の腕も稚拙で、不用意に血管を傷つけて大出血を起こし、「難しかった」と言い訳をして近隣の大学病院に緊急搬送するというレベルの医療をしているという設定でした。映画の中でも、盲腸と診断されて手術をしてみたら、誤診だったという場面が出ていました。
こういった病院が、映画の中だけなのかどうかは分かりませんが、すべての手術をする医師が同じレベルではないことは確かでしょう。
専門かどうかもあるでしょうし、個人的手技に上手い下手があるでしょうし、そのタイプの手術の経験が豊富か経験があまりないかの差もあるでしょう。最近は手術の成功率を公表している病院もあるようです。患者さんにとっては自分の命を預ける訳ですから、参考になるはずです。実際、病院によって成功率の数字は異なっていると思います。ただ、難しいケースを大病院に送り、そうでもない手術を行っている病院もあるでしょうし、難しくてもトライせざるを得ない専門病院もあるでしょうから、成功率の数字だけでものを言えないのも現実だろうと思います。
映画の中に出てきた看護師の意見として、これまで手術に立ち会うのが苦痛だったが、その先生が赴任してからは無駄のない、高度なメスさばきに感動し、手術にスタッフとして参加するのが楽しみになったと言っていました。医療者の立場からも納得のいかない手術が行われていたのなら、その看護師さんの気持ちも分かります。
最大の山場は、今でこそ家族が承諾すれば脳死患者から臓器提供できるように法が整備されましたが、主人公の医師が家族からの承諾を得て、肝臓の移植に踏み切るというところです。もともとその病院にいた外科医は、新しく来た医師の活躍を好ましく思っておらず、ここぞとばかりに“違法”な手術が行われるとマスコミや警察に情報を漏らします。騒ぎを大きくして、失脚させようと狙った訳です。
結論的には、そこはさすが映画。難しい手術を難なく成功させ、キチンとした手順で全てをクリアしていたため、院長からの嘆願書のお陰もあり、おとがめなしという結末でした。失脚させるなんて生々しい話も、実際にありそうな設定だと思います。
いずれにしても、外科系の場合は手術の成功、失敗が素人である患者さんの立場からみてもハッキリ分かるので、医師の技術の差をある程度は見極められるのだと思います。しかし、小児科や内科など内科系の場合はそれがないのです。ぜんそくを“風邪”や“マイコプラズマ”と正しくない診断をされていても「長引いているだけだ」と医師から言われれば、「ああ、そっか」と信じてしまうでしょう。アトピー性皮膚炎を“乳児湿疹”と診断されていても、乳児期のアトピーは軽快する確率もそれなりあるので、本当に乳児湿疹と信じている患者さんも少なくありません。
私自身もアレルギー以外の分野は、その道の専門家に到底かなわないと思っています。なるべく自分で対応しようとは思っていますが、「これは専門医にお願いすべきだな」と考えれば、躊躇なく紹介状を書いています。一方、アレルギーに関しては、敢えて言わせて頂きますが、医師の間の技術、知識の差がものすごく大きいと言わざるを得ません。専門医に即紹介すべきケースでも、専門でない先生が診ている場合もかなり見受けられます。
内科系の病気の場合は、人間の持つ「自然治癒力」があるため、治療が正しくなくても症状が治まってしまうことも多々あるのです。ですから、素人である患者さんは、内科系の医師の技術や知識の差を見極められないと思うのです。
先日、内科の先生のところで水ぼうそうと診断されて、病児保育にまでお子さんを預けていたのに、当院で診察したら水ぼうそうでなく、とびひであったということがありました。とびひと言われてお母さんも驚いていました。私の方も、明らかに水ぼうそうではないのにと驚いていました。私の目に止まらなければ、あとで本物の水ぼうそうにかかり、「2回かかりました」なんて話になったかもしれません。
親御さん達は、医師なら誰に診てもらっても同じと思っている方々も少なくないと思います。外科系の医師の技術の差からくる手術の結果に差があるように、小児科をはじめとして内科系の医師にも、技術の差が少なくないことを知っておく必要があると思います。小児科医と内科•小児科を標榜する内科医にも差がありますし、同じ小児科であっても実力差はあります。そして、専門医とそうでない医師の間にも驚く程の差が存在します。
まずそれを認識して頂かないと、地元のひいては新潟県のレベルアップにはつながらないと考えています。


