食物アレルギーの正しい診療をするためには、「食物負荷試験」が不可欠と言われています。
今は、医師の経験や勘に頼る医療は推奨されない時代です。経験豊富な医師とそうでない医師がいます。残念ながら、経験の少ない医師だと、あまりレベルの高い医療は期待できませんし、今かかっている医師がキチンと根拠のある医療をやっているかどうかは、患者さんからは全く分かりません。
その差を解消しようと、日本の第一人者の先生方が、「ガイドライン」を作っています。食物アレルギーはまだ解明されていない部分があり、患者さんによって原因食品も異なれば、アレルギー検査の値も異なります。同じクラス3という数値であっても、食べて何ともない人とアナフィラキシーを起こす人に分かれてしまいます。いわば十人十色なので、本当は「ガイドライン」を作成するのは至難の業だったはずです。先日、恩師にその辺りを聞いてみましたが、最初は意見がまとまらずご苦労されたそうです。そういう視点で見ると、「大変だったんだろうな」と思ってしまいます。
食物アレルギーで困っている子ども達は大勢います。さらに何を与えていいのか分からず困惑している親御さんも多いのです。現時点で正しいと思われる考え方を専門医の間でまとめて、どの患者さんも正しい方向で医療を受けられるようにしたのが「ガイドライン」なのです。それを使っていない医師があまりにも多い現実は、何故なんだろう?と不思議でなりません。
いずれにしても、当院ではこだわって、「食物負荷試験」をやっています。新しいことをやることには、相当エネルギーが必要です。私もとにかく正しい医療を広めたいがために、アレルギー専門病院で修行してきましたので、一人でもやれるくらいの技術は習得してきたつもりです。開院当初は、看護スタッフも初めてみる試験だったので、私のやることをみているだけでした。今は、適確に判断できるようになったと思います。
当院は医師は一人で、診療と同時並行して「食物負荷試験」を行っています。気になることがあれば、負荷試験をやっている部屋に行って診察もしなければなりません。スムーズに試験が進めば、診療の差し障りにはなりません。もしアナフィラキシーなど強めの症状が出た時はどうなるか?。当然、緊急事態ですから、かかりきりになります。
当院では強めに症状が出ることは頻度的に少ないのですが、食べられるギリギリの線を引くために、ある程度は挑戦する必要があるのです。アナフィラキシーショックの経験はありませんが、蕁麻疹と咳、蕁麻疹と嘔吐といった2つ以上の症状が出た場合をアナフィラキシーといいますので、過去にアナフィラキシーを起こしてしまった経験はあります。口の周りに発赤や蕁麻疹が出る程度なら慌てる必要はありませんが、強めに症状が出たら、いち早く出た症状を抑える治療が求められます。
こうなると、体は一つしかないため、診療はストップしてしまいます。勤務医時代は、2診体勢でやっていれば、ドクターが二人で診療しており、患者さんと話し込んでも、もう一方の先生が診察を続けてくれるので、大きな影響はありませんでした。ところが開業してみると、そういうことは一切なくなります。誰も助けてはくれません。
実は先日も、そうなってしまい、一気に30人待ちなんて状態になってしまいました。まさに“大渋滞”です。待っている患者さんに申し訳ないと思いつつも、優先順位と言うものがありますから、目の前の仕事をこなしていくしかありません。
「食物負荷試験」は強めに症状を起こしてしまうリスクもあります。今の医療はリスクを嫌う傾向にあるように感じています。リスクを恐れては食物アレルギーに関しては何もできないし、必要のない除去を患者さんに強いることになってしまうのです。
あまりリスク、リスクと言うと検査を受ける気を削がれる親御さんもいらっしゃるかもしれません。私もそれなりに「食物負荷試験」のノウハウは持っているつもりですから、強めに症状を起こしてしまうのは、そうあるものではありません。私の記憶では、口の周りに蕁麻疹が出た程度の軽いものも症状が出たと判断しても、全く症状の出なかったのは9割近くだったと思います。
正しい医療を心掛けるのが本当の“プロ”だと思っています。誰も助けてくれなくても、また大渋滞することになっても「食物負荷試験」は続けていくつもりです。


