小児科 すこやかアレルギークリニック

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「負荷試験のせいだ」
2010年08月26日 更新

夏休みもコツコツと「食物負荷試験」をやっています。

小学生になると、夏休みにくらいしか検査に受診できないこともあるので、ここぞとばかりに検査に受診して下さっています。親御さんの気持ちを思うと身の引き締まる思いがしますが、170キロ離れた街から受診した下さったお子さんもいますし、県外からお越しのお子さんもいました。

「食物負荷試験」は、食べられるかどうかシロクロをつける検査です。ある程度の技術を持てば、まず危険な負荷にはならないと思います。そりゃ、検査で重い症状を起こしてしまうことを誰も望んではいません。しかし、食べられる、食べられないのギリギリを探ろうとすれば、悪い方に傾いてしまうこともあります。

もし、50回負荷試験をして、50回とも症状が出ない場合は、神がかり的かもしれませんし、“当たり障りのない”負荷試験をやっているのかもしれません。ギリギリまで攻めれば、症状が出てしまうことは避けられないと思います。あとは症状が出ても、速やかに適切な治療をすれば、よほど重篤な症状でなければ、入院に至ることはまずないと思います。

昨日も触れましたが、当院での全負荷試験の10数%は症状が出ています。この数字が高いのか低いのかはよく分かりません。症状の出たうちのほとんどが、口の周りに発赤や蕁麻疹が出る程度で済んでいます。過去に10人程だったでしょうか、広範囲が赤くなり、咳や嘔吐がみられたこともありました。

先日も、小児科医から卵を完全に除去するように指示され、ず~とそれを守り通していたお子さんが、「本当にこのままでいいのか?」と疑問に思い、当院を受診されました。

たいていなら誤食といって、誤って食べてしまうこともあるので、それを参考にできるのですが、誤食はみられませんでした。何年間も全く食べていなかったので、本人と親御さんが卵に対し恐怖心を持っていました。「卵くらい食べなくても」とおっしゃる方もいますが、いつも親御さんの目の前で食事を摂れる訳ではありません。いつかは卵と“遭遇”してしまうでしょうから、だったらこれを機会に私の目の前で食べてもらうのがいいだろうと思いました。何とか説得して「食物負荷試験」でシロクロつけることにしました。

実際に食べさせてみると、顔や体に蕁麻疹がポツポツと出だし、徐々に体が広範囲に赤くなってしまいました。そして、アレルギーを抑える治療を要しました。私が思っていたよりも、卵アレルギーが強く残っていることが分かりました。

今回、私が食べさせなければ、このアレルギー症状は起きませんでした。ですから、負荷試験を勧め、実施した私に責任があります。因果関係は明らかなので「負荷試験のせいだ」と言われれば、言い逃れも何もできません。お子さんにアレルギー症状を起こさせてしまい申し訳なく思っています。

ただ、確実に言えることは、現時点で卵料理を少しでも食べると強いアレルギー症状が出てしまうことが明らかになりました。負荷試験の直前までは、食べて何ともないかもしれず、「除去する必要がない」という結論に至ったかもしれないのです。しばらくは、除去を続ける必要があること、薬を使うとどうなるかが親御さんにも理解して頂けたと思います。今回の負荷試験では、シロクロと言う意味ではクロでしたが、明確になった部分もあり、それを今後に活かして頂きたいと思い、親御さんには時間をかけて説明したつもりです。

話は変わりますが、当院はアレルギーのお子さんが多く通って下さっているため、ぜんそく、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーのほかにアレルギー性結膜炎、鼻炎、蕁麻疹等のお子さんもいます。当院の夏期休暇の少し前に、蕁麻疹が出たお子さんが受診されていました。

原因として、少なくとも食物アレルギーでないことは問診から明らかでした。実は蕁麻疹は、原因の特定が難しいことが多いのですが、治療は抗アレルギー薬を飲めば、ほとんどが数日で消失してしまいます。中には、蕁麻疹が少し長引くお子さんもいて、薬が切れるとぶり返すケースもあります。

その患者さんには、当院の休みのこともあり、抗アレルギー薬は長めに出していたのですが、内服している時は消えていたものの、飲みきったら蕁麻疹がぶり返してきたそうです。あいにく、当院は休診だったので、別の小児科を受診したそうです。

実は、蕁麻疹の出始める10日ほど前に「食物負荷試験」をやっていました。その医院さんで、それまでの状況を説明したそうですが、「食物負荷試験」の話も出されたようなのです。それで当院かかりつけの患者さんであると分かったようで、前後関係もよく聞いていないのに、蕁麻疹の原因が「食物負荷試験のせいだ」と“診断”されたそうです。ちなみに、当院での負荷試験の後で、その食品は食べていなかったのだそうです。

アレルギーの知識があれば、10日前に負荷試験をして、負荷した食品を食べてもいないのに10日も経ってから1週間以上蕁麻疹が出ることは、まず考えられません。その話を聞いて、私は悲しくなりました。

いつも口を酸っぱくして言っている通り、「食物負荷試験」をせずに食物アレルギーの診断、管理をすることは不可能です。新潟県には「食物負荷試験」がほとんど普及しておらず、結果として正しく診断されているケースは極めて少ないと言わざるを得ません。それを何とかしたいと思って、昨日も言ったように手間がかかろうとリスクを背負おうと、患者さんのためと思い、一生懸命やっているつもりです。

普段当院にかかっていなくても、小児科医の言うことは重みがあります。安易に「負荷試験のせいだ」なんて言って欲しくないし、問診に時間をかけて因果関係を明らかにした上で、充分な根拠を元に診断をして頂きたかったと思っています。もしかしたら、私が情熱を持ってやっていることを快く思っていないのかもしれないと、考えてしまいます。各々の得意分野を活かし、医師達が協力しあって初めて地域医療ができると思っていますので、そんな時代が来ると良いなと思っています。

いずれ「食物負荷試験」を新潟県下に広めたいと思っていますが、私は上越で診療しているため、まず地元からと思っています。めげずに更に技術を積んで、患者さんのためにより安全な「食物負荷試験」を行えるよう努力していきたいと思っています。