当院には、アレルギーで本当に困っている患者さんが毎日訪れています。
食物アレルギーの相談もありますが、圧倒的に多いのは「咳が止まらない」、「湿疹が痒くてどうしようもない」という訴えです。いつも言っている通り、ぜんそくなのに“風邪”、アトピー性皮膚炎なのに“乳児湿疹”と「過小診断・過小治療」が行われているために改善しないのです。
先日、咳が止まらないとご両親がお子さんを連れて受診されました。市内の医療機関に繰り返し通院していました。何度も、何度もです。親御さんが「これは何かおかしい」と思って、当院に鞍替えされたのです。“素人”でもおかしいと思うのですから、「どうして小児科医が気付かないのだろう?」と不思議になります。
何故こんなことが起こるのか?。当院では症状が改善しない患者さんにこそ、時間をかけます。親御さんが必死になってお子さんの症状を「治したい」と思っているのです。その気持ちを裏切らないのが、我々小児科医の責務です。日頃から心掛けているのは、良くならなければ、そのまま放置しないことです。良くなっていないにもかかわらず、同じ薬を出し続けるようなことはしていないつもりです。
私が予想するに、患者さんが混んでいて、一人当たりに時間をかけられないため、ほぼ反射的に「咳」=「風邪」と診断しているのかなと思います。「点」で見ているから、そうなるのだと思います。例えば1週間毎に「咳が止まらない」と受診すると、「また風邪でも引いたんだろう」と思ってしまうと思うのです。
当院の場合は、ぜんそくの患者さんを見逃す訳にはいかないため、「点」が多ければ、「慢性に経過しているのではないか?」と考えなければなりません。そういう見方はとても大切だと思います。
親御さんにとって、やはりぜんそくと診断されることは重いことだと思います。しかし、充分こじれた状態で当院を受診されているので、仮に今回治療して症状が改善しても、また咳が長引く可能性が極めて高いのです。逆に、ぜんそくがあり、キチンと咳の出ないクセをつける必要があると理解して頂く最大のチャンスなのです。とどめは「風邪じゃないから、風邪薬が効かないんじゃないですか?」と言うと、「その通りですね」と理解して頂けます。
診察していて、肘や膝の痒そうな湿疹にも目が止まりました。「痒いんじゃないですか?」と聞くと「いつも掻いています」との答え。聴診しながら「これってアトピーじゃないか」と考え、皮膚に関してもこれまでの経過をお聞きすると、間違いなくアトピー性皮膚炎を診断されました。これも前医では、診断名を告げられずステロイド軟膏が処方されていました。
日頃診療していて、最も不愉快のなのが、「こっそりとステロイド軟膏が出されていること」です。ステロイド軟膏は、未だに一部の患者さんの中には「強い薬、副作用の強い薬」として捉えられています。代表戦に出ている国会議員さんもそうですが、同等なくらいに“説明責任”を果たしていないと言わざるを得ません。親御さんも医師にすべてを任せきるのではなく、お子さんに何が処方されているのか、もっと問題意識を持って頂きたいと思います。
ぜんそくとアトピー性皮膚炎の2冊のガイドラインを示しながら、時間をかけてぜんそくとアトピー性皮膚炎と診断されることを説明しました。親御さんにしてみれば、小児科に通いつづけても症状が改善されず、不安に感じて当院を受診された訳ですが、さすがに2つも病気、しかも治りづらい慢性疾患の診断を受けるとは思っていなかったことでしょう。
両方とも慢性の病気で、ある程度は通院して頂いて、症状を安定させる必要があることをご理解頂けたと思っています。ご両親は、二人とも熱心に私の話に耳を傾けて下さいました。そして最初に出てきた言葉が「ショックです」でした。それは偽らざる気持ちでしょう。全幅の信頼を置いて通院をしていたにもかかわらず、正しい診断されていなかったことを意味するようです。お気の毒としか言いようがありません。
親御さんは、専門かどうかで、診断に大きな差が出てしまうことを思い知らされただろうと思います。また、こういう場合、一番の問題点は前にかかっていた先生に「ぜんそく、アトピーと診断されたことが伝わらないこと」です。言いにくいことですが、“同じ診断”を繰り返している医師もいます。
医師が皆アレルギーが詳しければ、私のようなアレルギー専門医は要らなくなってしまいます。往々にして、症状が改善していなくても、同じ薬が出されるのみで、専門医に紹介がないのも大きな問題です。時々書いているように、「患者さんや親御さんが、ある程度は病気の知識を持たなければ、お子さんを守れない」というのも残念ながら事実と言わざるを得ません。
我々小児科医は、親御さんに“ショック”を受けさせないためにも、日頃から努力をし、改善がなければ「自分の診断が正しくないのではないか?」と不安に思う気持ちを持ち、丁寧な診療を心掛けることが大切なんだろうと思っています。


