小児科 すこやかアレルギークリニック

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アレルギーの救急
2010年09月10日 更新

9月9日は「救急の日」でした。

当院では、地道に「食物負荷試験」をやっています。「食物負荷試験」を日頃からやっていると「アレルギー検査の数値って当てにならないな」と実感します。ほとんどの患者さんが“当てになる”と指導され、数値に基づく除去を必死に守っていることが多いのですが、申し訳ないですが「気の毒だな」としか言いようがありません。

「食物負荷試験」を広めようとしていますが、地元では一向に広まる様子もなく、周囲の協力もまず期待できない状況です。食物アレルギーでは「食物負荷試験」でしか“根拠のある医療”ができないにもかかわらずです。「正しいことを広めるのはこんなに大変なのか?」と思い知らされています。引き続き、根拠のある医療を訴えていきたいと思っています。

さて、アレルギー分野の救急と言えばぜんそくの重い発作と食物アレルギーのアナフィラキシーでしょうか?。

今はぜんそく自体、軽症化が進んでおり、極めて重い患者さんは少なくなっています。しかも、吸入ステロイド薬も普及しており、先日も触れましたが、アレルギー専門の開業医でも重症とされる患者さんの治療ができるようになってきています。予断を許さない程の重症発作を起こすお子さんは、極めて少なくなっていると思います。

「アナフィラキシーショック」とは、血圧が下がり、生命が危険な状態にさらされる状況です。「アナフィラキシー」とは、そこまで重くはありませんが、蕁麻疹が出て、ゼーゼーしたり、蕁麻疹が出て、呕吐を繰り返すなどの決して侮ってはいけない症状を指します。

食物アレルギーでアナフィラキシーを起こす方は時々見かけます。園や学校、もしくは自宅で誤食により起こることもあります。また、できれば避けたいのですが「食物負荷試験」でも起き得ます。当院でも「食物負荷試験」は何百件も行っていますから、アナフィラキシーに至るケースも少数ながらあります。当院では、口の周りが赤くなる程度なら、負荷試験を継続することが多いのです。更に赤みが広がれば中止しますが、続けても赤みは消えてしまい、何事もなく検査を終了できることも少なくないからです。

先日、卵がクラス3の子に卵焼き、牛乳がクラス3の子に乳をつなぎにつかったハムを使った「食物負荷試験」を行いました。卵に関しては、卵焼きを食べられさえすれば、卵アレルギーは卒業と言ってよく、牛乳に関しては、微量でも症状が誘発されるかどうかを確認する負荷試験でした。

結論から言うと、卵の子は特にアレルギー症状は出ずに検査を終了しましたが、ハムのお子さんはアナフィラキシーを起こしてしまいました。同じクラス3でも卵アレルギーを卒業できた子と、微量の乳成分でアナフィラキシーを起こす子に分かれてしまう訳です。

アナフィラキシーを起こしてしまった場合は、反省をしなければなりません。症状が出る時は「あまり食べたがらない」ことが多いのですが、このお子さんの場合は、わりとすんなり食べてくれました。慎重にやっていたつもりですが、アナフィラキシーに至ってしまいました。

最初は口の周りに蕁麻疹が出だし、やや咳も出てきたため、まずは内服薬で対応しようと思ったのですが、蕁麻疹が体に広がり、咳も増えてきたため、エピネフリンの注射に切り替えました。エピネフリンとは、アナフィラキシーの時に使う薬で、これを自己注射用に製品化したものが「エピペン」になります。

アナフィラキシー時に、エピネフリンを使い慣れている小児科医は少ないと思います。普通は、抗ヒスタミン薬かステロイドの点滴をして様子をみる医師がほとんどだと思います。エピネフリンの方が明らかに即効性を持って効果を発現しますから、「これ以上悪化させてはいけない」という判断のもと、エピネフリンを使わせて頂きました。プロ程、早めに使うと思います。

お母さんには、今後「エピペン」を持って頂く可能性もあったため、アナフィラキシー時にエピネフリンがどのように効くかを理解して頂こうと思いました。「効き方をよく見ていて下さい」と言い、筋肉注射を行わせて頂きました。

3分後には止まらなかった咳が止まり、蕁麻疹も引いてきました。発赤は残り、まだ機嫌は悪そうでしたが、即効性は確認して頂けたと思います。

私としては、アナフィラキシーは避けたかったけれど、「どこまで食べられるのか?」とギリギリの線を探ると、攻めの姿勢は必要であり、症状の出る境界線をはみ出してしまうこともあるのです。お子さんには申し訳なかったけれど、出てしまった場合は、その後の対処が大切です。

救急の日に、救急の状態になってしまいましたが、しばらく院内で経過をみさせて頂き、元気になって帰って行かれました。私もホッと胸を撫でおろしました。

先日も、園関係者の方からキウイを食べて、園でアレルギー症状を起こしてしまい、ビックリしたとの話を頂きましたが、いろいろな可能性を考え、なるべく冷静に判断できるようにしておく必要があると思います。一般的には抗ヒスタミン薬→ステロイド薬→エピネフリン(エピペン)という順番で対処しますが、最初の症状が強ければステロイド薬、エピネフリンから投与ということも有り得ます。

乳幼児の食物アレルギーの頻度は5~10%と言われており、園の先生方にはこれまで経験がなくとも、いつ何時遭遇してしまうか分からない訳です。アナフィラキシー時のシュミレーションをやっておくことをお勧めしたいと思います。