小児科 すこやかアレルギークリニック

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アレルギーの問題点
2010年09月13日 更新

先日、一見してアトピー性皮膚炎の患者さんが受診されました。と言うのは、顔に皮疹が顕著だったからです。

でも、相談は「アナフィラキシー」でした。ある日に給食を食べて、昼休みに遊んでいたら、顔や体に蕁麻疹が出て、ゼーゼーいったそうです。

実は、この症状が出た時は小児科に行きましたが、ぜんそくも普段から小児科で診てもらっており、アトピーは皮膚科、鼻炎は耳鼻科で長年通院されていたようです。

今日は、知識や技術に差があれば、治療にも大きな差が出るという話をせざるを得ません。医療関係者も自分がどこまで対応でき、どこからが難しいのかを理解していないと、患者さんに迷惑がかかってしまうと思います。

さて、患者さんの皮膚に蕁麻疹が出て、さらにゼーゼーも言えばそれは「アナフィラキシー」と診断しなければなりません。小•中学生が給食を食べて運動してアナフィラキシー症状が出れば、時々触れている「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」を強く疑います。にもかかわらず、前医では「ゼーゼー言ったのは、運動したせい」と説明受けたようです。これは「運動誘発ぜんそく」といって、ぜんそくのお子さんは激しい運動をするとゼーゼーいうことがあります。このことを指しているのでしょう。

ただ、最近は運動してもゼーゼー言っていませんでしたし、そもそも運動誘発ぜんそくでは皮膚に蕁麻疹なんて出ません。給食に出た食品のアレルギー検査をしていたところを見ると食物アレルギーの合併も考えたようですが、一度に都合よく食物アレルギーも運動誘発ぜんそくも出るものでしょうか?。

確かにその可能性もあります。しかし、普段から食べて何ともないものを食べており、運動誘発ぜんそくも最近では起こしにくかったのです。一度に二つのことがたまたま同時に起きたと言うよりは、アレルギーの体質の強いお子さんが成長期にこういった症状が出た場合は、「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」を考えるのが普通だと思います。また、最悪のケースを想定しておくのもプロとして大切な対応でしょう。

この患者さんの場合、実際にアナフィラキシーを起こしている訳ですから、原因の特定は難しいこともあるのですが、分かる努力はすべきでしょう。言い方は悪いですが、“爆弾”を抱えているようなものですから。いつ起きるか分かりません。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、特定のものを食べてから運動すると症状が誘発されるのです。防ぐ方法は「食べたら運動しない」「食べずに運動する」ことになります。食物依存性運動誘発アナフィラキシーは特効薬もなく、食べて、運動するのどちらかを重ならないようにする必要があります。原因が分からなくては、患者さんや親御さん、また学校の先生も対処のしようがないのです。

先月も、小麦が原因の食物依存性運動誘発アナフィラキシーのお子さんが、柔道大会で入賞した話をしました。原因が分かっているのと、分かっていないのでは雲泥の差があります。

実はこの病気、原因は小麦が最多で、次が甲殻類が多いと言われています。小麦が原因のお子さんは、そういう意味では分かりやすかったのですが、今回は小麦は摂っていないようです。最近の報告では、果物や野菜でも起こることがあり、私自身も経験があります。何とか原因を特定したいと思っています。

アレルギーの専門医は、中途半端な対応をしません。専門医のプライドにかけて、原因を特定しようとします。“負荷試験”を行うこともあります。原因と思われる食品を摂らせて運動させるのです。この負荷試験の際に、アナフィラキシーが誘発されてしまうこともあります。それでもなおかつ、原因を追及しようとする責任感を持っています。専門でない先生なら、「そんな危険なことをやることはない」と言うでしょうが、原因を追及できれば、その後の対応に大きな差が出てくると思います。患者さんのことを考えれば、リスクを負ってでも適確に診断しようとするのです。

アレルギーのプロとアマチュアでは、それくらい取り組みに差が出ます。当院は開業医であり、入院しての精査はできないため、親御さんには、私が診ても原因が特定できなさそうなら、運動負荷試験をやっている専門施設に紹介することもあり得ると説明しています。

これから精査を行っていきますが、現時点ではアナフィラキシーの原因が分かりません。また明日アナフィラキシーを起こしてしまう可能性もあります。一般的にアナフィラキシーよりも更に重症な状況を「アナフィラキシーショック」と言いますが、この場合は30分以内の対処が生死を分けると言われています。今度はもっと重い症状が出てしまうかもしれません。

親御さんには、アナフィラキシー改善薬の「エピペン」の話もしました。また起きてしまった場合、早く対応する必要があり、「エピペン」の適応だと考えました。当院の場合は、使い方を提示したDVDを貸し出しており、どんなものかを理解して頂こうと思っています。

今回は、敢えて言わせて頂きますが、これだけ重症な病気である可能性が高いにもかかわらず、原因が精査されずに、「運動誘発ぜんそく」で済まされそうになったことも問題として挙げられるでしょう。

分からなければ、分かりそうな医師に託すのは当たり前だと思うのです。当院では、数人ですが食物依存性運動誘発アナフィラキシーのお子さんを診ていますが、残念ながらいずれも紹介ではなく、患者さん自らが専門的医療を求めて受診されています。原因が明らかにされずに、アナフィラキシー症状を繰り替えしていたケースもあります。もう少し早く受診していれば、危機的な状況を減らすことができたと思っています。

同業者でありながら、なかなかこういう協力体制が取れないのは悲しい現実としか言いようがありません。重症で困ってるアレルギーのお子さんは少なくないのに、甘く見られている気がしてなりません。(明日は、合併している重症なアトピー性皮膚炎の話をしようと思っていますが、これも良心的な対応で変わってくると考えています。)