先日、生後3ヶ月の赤ちゃんが発熱したため、当院を初めて受診されました。
一般的にこの時期の赤ちゃんは、ご存知のように、母のへその緒から免疫をもらっているため、生後半年くらいまでは感染症にかかりにくくなっています。小児科医の常識として、生後3ヶ月までの発熱は要注意と言われています。濃い免疫があるにもかかわらず、熱を出すのは、たちの悪い菌がついた可能性を考えるからです。
一気に秋が進行し、寒暖差のお陰で発熱のお子さんも増えてきました。しかし、今回は熱を出してはいけない年代なのです。その時点で「大丈夫かな」と心配できる訳です。
風邪症状もなく、診察してみると、のども大して赤くありません。尿路感染症かなと思いました。尿路感染症とは、腎臓や膀胱などの尿の通り道にばい菌がつく感染症です。よく女性がおしっこを我慢して膀胱炎になったと言いますが、膀胱炎では熱が出ないことが多いと思います。となると腎臓に菌が回って高熱の続く、より重い病気である腎盂腎炎を考えなければなりません。
本来なら検尿と尿の培養の検査が必要なのですが、尿が汚れていれば、尿路感染症の可能性は大なのです。ただし、生後3か月の赤ちゃんが「はい、分かりました」とおしっこを出してくれません。
かわいそうですが、採血をさせて頂きました。風邪なら炎症反応は悪くなりませんが、悪い予想が当たりました。体にばい菌が入って、大暴れしているという結果でした。本当なら、尿検査で尿路感染症かどうかを確認する必要があるのですが、私はこの時点で「入院して治療した方がいい」と判断しました。
そりゃ、入院しない方が親御さんにとっては有り難いはずです。いつも言う通り、開業医がすべてを治療できれば、病院の病棟は要らなくなります。まず、乳児で腎盂腎炎などの重症感染症になると、菌が血液に回って、頭に行き着いて髄膜炎を起こす可能性も充分あります。キチンを治療するためには、入院の上で1週間ほどの抗生剤の点滴治療が欠かせないと言われています。
また、腎盂腎炎の場合、普通は起こしません。なぜ腎臓に菌が回ったのかを考えなければなりません。一般的に3~4割に膀胱から腎臓への逆流が見つかると言われています。少なくとも腎臓のエコー検査が必要になるはずです。私はアレルギーの専門医ですが、腎臓の専門医は本当に逆流を起こしているかどうかをみる検査をすることもあります。こうなると、開業医には手に負えなくなってきます。
3ヶ月の赤ちゃんが発熱した場合、体が弱いのでキチンと治療をする必要があること、と同時になぜ病気になったのかを追求する必要があるのです。そうすることで、また病気になるのを予防できるかもしれません。
ここまで考えて、尿検査をみる前に、入院が必要であろうと判断して、病院に紹介状を書きました。上越では、なぜか乳児期に尿路感染症と診断されているにもかかわらず、入院の上で精査されていないお子さんを時々見かけます。私は腎臓の専門医でないため、尿路感染症のガイドラインがあるのかよく分かりませんが、標準的な考え方だと思っています。
数日前に、紹介したお子さんのお見舞いに行ってきました。予想通りというか、尿路感染症だったようです。低年齢であればある程、あっという間に髄膜炎まで病気が進行してしまうこともあり、髄膜炎の有無をみる検査までして頂いており、髄膜炎は否定されていました。とりあえず最悪のケースは避けられた訳ですが、治療としては、私の知識通り、1週間は点滴治療を行う方針のようです。
同様なケースでも、外来治療されているケースもあるようですが、やはり標準的な治療や精査を行い、キチンと対応すべきではないかと思うのです。先日も、咳が長引くと当院を受診されたお子さんがいました。何とかれこれ1~2ヶ月も咳が止まらずに長引いていたそうです。風邪と診断されていたようですが、常識的に考えると風邪が1~2ヶ月も治らないものでしょうか?。当院で診断して治療したら、あっという間に改善していました。
「なぜそうなるのか?」と冷静に考えると、対処法が見えてきます。長引く咳も、3ヶ月の赤ちゃんの発熱もそういう意味では同じで、筋道を立てて考えることが大切だと思っています。


