インフルエンザの流行で一時休止していた「食物負荷試験」を再開しています。
ロタウィルスなどの胃腸炎や溶連菌、アデノウィルス感染症などがそれなりにみられ、外来も忙しいのですが、それに手間のかかる「食物負荷試験」が加わります。
負荷試験をやらない方が、気も楽だし、リスクを負う必要もありません。患者さんに「食べるな」と言っておけば、医師の言うことは“絶対”なので、患者さんから文句も出ることはないでしょう。人間、安易な道を選びたがりますが、その場合、私なら心が痛みます。
患者さんにウソをついていることになるからです。患者さんが食べられずに日々、食事に気を遣い、それでも子どものためと必死に対応する親御さんのご苦労を考えたら、食べられる可能性があるものを「食べるな」なんて到底言えません。「食物負荷試験」のことを知っていながら、実施しないのは“罪”だと思っています。もっと心を痛める小児科医が増えて欲しいのです。その点、新潟の食物アレルギー医療は、まだまだと言わざるを得ません。
本来は、医師達が食物アレルギーの診療を行う際に、「食物負荷試験」について言及すべきですが、なかなか期待できない状態です。ひた隠しにしている医院さんもあるようですが、当院が「食物負荷試験」の実施を繰り返すことで、負荷試験の存在を知って頂き、医療レベルの差を認識して頂くしかないと思っています。
それくらいエネルギーを注いでる訳ですが、再開して1週間が経ち、卵アレルギーやミルクアレルギーの子ども達の除去を解除できています。4月に県内の某市に転居予定の患者さんは、引っ越し先には「食物負荷試験」をやっている小児科医がないため、急いで負荷試験をやらざるを得ませんでした。卵アレルギーのお子さんでしたが、アレルギー検査が陽性にもかかわらず、卵焼きを無事に食べています。「間にあって良かったね」なんて言っていました。
時々書いているように、ウィルス感染で抗生剤を使う意味がないのに、抗生剤の点滴を繰り返されている患者さんもいらっしゃいます。例えば、RSウィルス感染で熱が続いているのに、マイコプラズマと“診断”して点滴を繰り返している医院さんもあるようです。医師と患者さんが同じ方向を向いていないのです。つまり、医師だけ経営の方向も見ている場合もあります。
その点、「食物負荷試験」は食物アレルギーを克服したい患者さんと、リスクを負っても食べさせたいと願う医師は全くブレもなく、同じ方向を向いています。負荷試験が無事に済んだ時の“一体感”は言葉には表しにくいものがあります。
卵アレルギーなら卵1個を使ったゆで卵、卵焼き、ミルクアレルギーなら牛乳200ml、小麦アレルギーならうどん50~100gと負荷する量が決まっています。先日、ヤマイモの負荷試験をやった時は、食べてもらう量の設定に困ってしまいました(汗)。頻度の少ない食品の場合、負荷量は医師が決めることになっています。
このお子さんは、数年前にヤマイモを食べて、強めのアレルギー症状を起こしたことがあります。アレルギー検査も陽性であり、ヤマイモアレルギーと考えていました。他の食品も同じですが、強いアレルギー症状を起こした場合は、「食物負荷試験」を行う必要はないのです。
しかし、時間が経つと、「除去し続ける必要があるのだろうか?」と悩まなければいけません。アレルギー検査の数値も低下してきています。それなら「やるしかない」のです。
「だいたいこれくらいかな」と思われる量を決め、ヤマイモを少量から食べてもらいます。もし症状が出てしまえば、申し開きができません。逃げも隠れもできないのです。
最終的に、想定した負荷量を難なく完食できました。ヤマイモアレルギーを克服したものと考えています。ヤマイモと言うと、地味な食品というイメージがあると思いますが、アナフィラキシーショックの報告もあります。負荷試験をやる方も、当然緊張を強いられます。何より、患者さんを危険な目に遭わせてはいけないので、本当にホッとしています。完了後、患者さんとの間に一体感が生まれたのは言うまでもありません。
「ヤマイモで強いアレルギー症状を起こしているんだし、ヤマイモくらい食べなくてもいいでしょ」と言ってしまえば、私自身も自分の身を危うくする必要もありませんでした。負荷試験を終わった時の一体感は、「食物負荷試験」をやっている医師にとって麻薬のようなものかもしれません。何にも代え難い感覚です。
しばらく毎日のように「食物負荷試験」が待っています。また、心地よい一体感が味わえたらいいなと思っています。


