H23年7月30日14時から院内勉強会を開催します。
今回は、今後普及していくべき、より普及させていかなければならない、「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」の解説をしたいと思っています。
ご存知の方はまだまだ少ないと思いますが、国は増え続けるアレルギーの子ども達のために、3年前に小、中、高校生を対象に「学校生活管理指導表」アレルギー疾患編を作りました。
食物アレルギーがあれば、給食時に除去や制限せざるを得ません。また、ぜんそくやアトピー性皮膚炎があり、親御さんや医師が学校側に対応や配慮を求める際にも必要です。どれもアレルギーを持つ子ども達が学校生活をよりエンジョイするために利用されるべきものです。
食物アレルギーの診断書は、地域によって書式も異なり、転校があれば、また書き直してもらうことが必要でした。「学校生活管理指導表」は全国共通なので、便利なアイテムになり得ると思っていました。
ところが、3年経ってもいまだに広く普及していません。アレルギーに関する理解が高いとはいえず、ともすると医師会や教育委員会の協力が得られないのが理由だと思います。新潟県内でも、上越市や新潟市など運用を始めた地域もありますが、まだまだです。
先月の学会でも医師側の理由としては「診療時間内に時間がかかる」、「難しくて書けない」などが挙げられていました。確かに内容は、専門的な知識が求められます。「アレルギー科」を標榜するなら、当然知っておかなければならないことですが、的確に書ける医師は、かなり少ないと思われます。
アレルギー専門医は、アレルギーの子ども達の生活の質(QOL)の向上を願っていますので、多少時間がかかっても書くべきと考えていると思います。そして、私も含めて「学校生活管理指導表」をキチンを書けるか、書いてもらえるかで、学校関係者の方々がその医師にアレルギーを任せられるかどうかを判別する機会にしてもらいという気持ちは持っていると思います。
今年の3月に、この「学校生活管理指導表」の幼稚園、保育園バージョンが出ました。「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」と言われるものです。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/hoiku.html
(※このURLの「New3月17日」と書かれたところのPDFファイルをご覧下さい)
見比べてみると、ぜんそく、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎の5つの病気を扱っており、内容はかなり近似しています。ただ、食物アレルギーのところは、ちょっと違っています。
食物アレルギーは小学生以降はかなり頻度は減ります。治る子はどんどん治っていくからです。一方、今回の対象となる乳幼児は、逆に一番頻度の高い年齢層であり、5~10%の頻度であると言われています。
更に、乳児も想定しているのですが、乳児はピーナッツやソバ、甲殻類などはまず食べないので、それを“除去”するかは判断の難しいところです。つまり、各アレルゲンにつき、除去や制限の根拠を書かないといけません。かなり細かく記入を求められるため、アレルギー専門医であっても、100%的確に書くのは難しいと思っています。
巷にはアレルギー専門医は少ないため、そんなことからも、この「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」の普及は相当遅れると思っています。書きたがらない小児科医、内科医も多いと思います。しかし、園児が給食や弁当を楽しく食べてもらうためには、不可欠なのです。
私は、まず地元の上越市に広めたいと思ってます。当院に来れば、書いてもらえることを認知して頂きたいと思っています。
ただし、当院が記入しても、それを園側がキチンと理解し、アレルギー児のために役立てられなければ意味がありません。繰り返し言っているように、医師にも難しいので、園関係者の方々にとっても難しいと言えるでしょう。
このガイドラインを広めるため、園関係者や親御さん達に理解を深めて頂くために、今後は1年間に3回ほど、院内勉強会で「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」の解説を行なっていこうと思っています。
園の先生方もお忙しいでしょうが、いずれは必要になるものです。アレルギーの子ども達のために、今のうちに是非とも理解しておいて頂きたいと思っています。また、各アレルギーの病気についても解説しますので、アレルギーの子を持つ親御さんにも勉強になると思っています。