小児科 すこやかアレルギークリニック

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突破口
2011年09月15日 更新

新潟県は、食物アレルギーの専門医が極めて少ないため、食物アレルギーで困っている患者さんや園•学校関係者に正しい情報を知っておいて頂きたいがために、開院当初から情報発信を目的にこの場でいろいろと書いてきました。

ところが、地元で日々診療をしていると、ぜんそくやアトピー性皮膚炎も診断を間違い、治療も適切でない患者さんが多いことを知ることとなり、ぜんそくやアトピーのことも書くようになりました。

そして、感染症も地元の親御さんや園関係者の方々がウィルス感染に抗生剤が効くと思っている方があまりにも多く、それに愕然とし、感染症もある程度積極的に触れていかなければならないとも考えるようになりました。その結果、いろいろなことに触れざるを得なくなりました(汗)。

私の狙いはただひとつ。当初はアレルギーだけのつもりでしたが、今は広く、地元の小児医療のレベルアップが図られることです。もちろん真面目に取り組んでいる先生もいます。ただ、「あれれっ!?」と目を丸くせざるを得ないような医療をやっている医院さんもあるため、患者さん自身が「医師にすべてお任せ」という態度では子どもを守れないのです。

先日、咳が止まらないと年長のお子さんが受診されました。既にある小児科で治療を受けていました。確か、アドエアというぜんそくの薬が使われていました。

従来はぜんそくの“過小”治療が多く、発作をしょっちゅう起こし、入退院を繰り返すお子さんが多かったのですが、私のよく言うガイドラインが作られ、重症者は吸入ステロイドを用いるという方針が明確に打ち出されました。以前は、「ステロイドはなるべく最後まで使うべきではない」という風潮があったため、吸入ステロイドは必要な患者さんにもあまり処方されていなかったのです。

それが「ステロイドを使えばいい訳ね」という雰囲気になってきて、専門医でなくても吸入ステロイドが出されるようになりました。その結果、起きてきたのが“過剰”な治療です。

最近は、フルタイドやキュバールという吸入ステロイド単体に一度吸うと長時間作用する気管支拡張薬が配合されたアドエア、シムビコートといった発作を起こしやすい重症患者さんにとってはありがたい治療薬が開発され、使えるようになりました。

ところが、軽症患者さんにもアドエア、シムビコートという薬が処方されるようになってきました。専門医の間ではそれが問題視されています。確かに、過小治療で良くならないよりは、過剰の方が効果は出ます。治療を開始して、症状が治まってくれば「良い治療をしている」と思うのでしょうが、“過剰”なのは考えものです。もっと弱い治療で症状が充分抑えられるのなら、そちらの方が良いはずです。

アドエアやシムビコートは重症なぜんそく患者さんに出すべき薬なのですが、軽くても処方されるケースも目につき、「強い薬を使わなければいけない根拠はどこにあるのだろう?」といつも疑問に感じています。

今回の患者さんも、いろいろ話を聞いた結果、以前軽いぜんそくはあったようですが、今回の咳が長引くのは「果たしてぜんそくだろうか?」と考えました。しかもアドエアが使われています。軽いぜんそくなら、気管支がビックリして、症状が速やかに改善するはずです。しかし、そうはなっていませんでした。

ぜんそくの診療のポイントは、診察時に発作が起きているとは限らないので、“ぜんそくらしい”咳が出ているかを確認することです。ところが、そういう感じではないのです。

アドエアという重症ぜんそくに使う薬が効いていない、しかも咳がぜんそくのパターンとは異なる、という二つのことから、私はぜんそくの咳ではないと考えました。というか、咳の特徴を聞いて、何かストレスを抱えていて、心因反応として咳をしているのだろうと強く考えました。それなら、アドエアが効かないのも理解できます。

この患者さんは、ある部活動に所属しており、練習がハードなことが親御さんの口からも聞かれました。お母さんには「ストレスが原因である可能性が高い」とお伝えし、夫婦や学校の先生と話し合って、「ストレスがあるなら、それを取り除く努力をしてみて、2週間後に再診して下さい」と説明しました。

この年代は繊細なこともあり、しかも初対面の私にストレスに思っていることをあっさりと話してくれる可能性は低いので、日頃、この患者さんを見て、接している大人に手がかりを探して頂こうと思いました。

そして、その2週間が経ち、再診して下さいました。親御さんは「咳はあっさり止まりました」とおっしゃいます。ストレスから解放されたようです。

私も原因を知りたかったので、「何がどうだったの?」と聞いてみると、「実は…」と話して下さいました。

当院を初診した帰り道の車の中で、お母さんが「○○(部活の名前)が原因なんでしょ」と単刀直入に聞いてみたのだそうです。「えっ、そんなにあっさり聞く!?」と思って、続きを聞くと、本人もあっさりと認めました。

お子さんなりに辛かったのでしょう。一般的にはストレスを貯め過ぎてまで、部活動に取り組むことでもないでしょうから、取り組み方を変えたら気持ちも楽になり、咳も止まったそうです。それだけストレスを抱えていたことになり、症状を取り去ることができて良かったと思っています。

と同時に、診断が違い、治療も過剰というより、敢えて言えば的外れだったことが判明しました。ぜんそくではなかったので、ぜんそくの最強の治療は過剰のまた過剰だった訳です。

以前も同じ医院さんで、心因性の咳にステロイドの点滴や内服まで繰り返されていました。医師からの紹介ではなく、患者さんが「こりゃ、おかしい」と疑問を感じて、当院を頼って下さったのです。申し訳ないですが、自分の知識の限界を分かっていないと、不必要な濃い治療がいつまでも繰り返されてしまいます。

こういうこともあるのだと、地元の親御さんや園•学校関係者の方々に知って頂けば、「おかしいと思えば、専門医に頼るべき」という認識が広まると思います。

時々、症状が良くなっていないのに、同じ薬を出し続ける医師は、良心的な態度とは言えないと繰り返しています。その一方で、症状が良くなければ、治療を強化することは「あり」な訳ですが、際限なく強化すべきではないということです。

いずれにしても、良くならなければ、その道の専門医の門を叩くことが突破口を見つけることにつながるのだろうと思っています。