ここ最近の急激な気温の低下で、ぜんそく発作を起こすお子さんが増えています。
私が小児科医になってから20年経ちますが、当時は一人前になるために県内各地の病院を回り修行していました。勤務医なので、何らかの病気で日常生活に影響が出た場合は、入院して頂き治療することになります。
一番多いのが、感染症です。風邪をこじらせて肺炎になったり、胃腸炎も嘔吐や下痢を繰り返すと脱水も強く、短期間ですが入院になることもあります。
特にこういう秋の時期になると、夜間にぜんそく発作を起こし、呼吸苦のために入院が避けられないお子さんが多くなります。重症なお子さんほど、症状が軽快し、退院したと思ったら、また発作で入院してくることもありました。
「治っていなかった」というよりは、重症だと気管支の敏感さが強いので、病み上がりで風邪を引いたりすると、一気に逆戻りすることもあります。子どもは日中元気に遊び回りますので、夜はぐっすり眠り、疲れを取らないといけません。それが、呼吸苦のために眠れずに、親御さんも遠慮しながら深夜の救急外来を受診するのを繰り返し見ていると、「日本のプロフェッショナルは、どういう治療をしているのだろう?」と知りたくなりました。
もう10年も前の話になりますが、それが理由で福岡の病院へ勉強させて頂くことになったのです。今でこそ、この場でも食物アレルギーのことを中心に書いていますが、福岡ではどっぷりと重症ぜんそくの患者さんを診させて頂きました。
そういうことなので、ぜんそくも相当こだわっています。ただ、食物アレルギーの専門医が少なく、「すこやか健康フェア」に来て下さった柴田先生も参加して作成されたガイドラインが県内で一番守られていないのが食物アレルギーの分野なので、食物アレルギーに力を入れざるを得ないのです。
実は、ぜんそくのガイドラインも存在しますが、食物アレルギーほどではありませんが、守られていないケースもまだまだ目にします。
少し前ですが、市外から入退院を繰り返す重いぜんそくのお子さんが当院を受診されました。アレルギー専門ということで、入退院を繰り返すのを何とかできないかと当院に相談に来られたのです。
私の経験では、先に述べたぜんそくのガイドライン通りに治療して、症状が改善しなかったお子さんはほとんど経験していません。いない訳ではありません。しかし、ほとんどいないと言っても間違いではないでしょう。
ということは、先の患者さんは、それなりの治療はされていましたが、厳密にはガイドラインに沿っていないことになります。それに気付くかどうかが大切です。もちろん私を頼って下さっているし、「治療を強化すれば何とかなるだろう」と考えたのですが、いかんせん当院には入院施設もなく、夜間の対応もできません。入退院を繰り返す患者さんには、開業医は適していません。
その辺を理解して頂き、私の考えた治療(といっても、ガイドライン推奨の重症度に合った治療)を開始することにしました。
その治療を始めて、しばらく経ちますが、それこそ退院したと思ったら再入院なんてことも過去にはあったようですが、発作らしい発作も起こさない状態が続いています。
ぜんそく患者さんを診る上で、ひとつのポイントは「運動誘発ぜんそく」だと思います。読んで字の如く、運動することで発作が誘発されてしまうのですが、重症児ほど出易くなります。時期は“秋”、運動は“マラソン”など走るスポーツが「運動誘発ぜんそく」を起こしやすいのです。ですから、秋のマラソン大会は、ぜんそく児にとっては、言葉は悪いですが“拷問”のようなものと感じることさえあります。
先日、当院で治療させて頂いている、重症で入退院を繰り返していたお子さんが当院を定期受診されました。お母さんから聞いたのですが、マラソン大会を頑張ったそうです。昨年までは考えられないほどの力走だったそうで、順位も良かったとのことでした。
とりあえずは、親御さんの期待に応えられているのかなと思っています。重症と思っても、単なる治療が足りていなかったと言うこともあるのです。やはり、ぜんそくでもガイドラインが重要だと言えましょう。
他にも、病院にかかっていて入退院を繰り返していたが、ガイドラインに沿った治療を始めたら、入院しなくなったお子さんもいます。一部、本当に重症で、専門医が既に治療しても発作を止めづらいお子さんがいるのも確かですが、そうではなく、専門医が診ることで劇的に症状が軽快する場合もまだまだ多いと思います。
入退院を繰り返すお子さんは、一度はアレルギーの専門医に相談されてみることをお勧めしたいと思います。


