当院は、感染症など一般診療も真面目に取り組んでいるつもりですが、アレルギーの啓発もやらなければならないテーマだと思っています。
自分の医院で受診した患者さんを診ているだけでは、啓発はできないと考えています。もっと広く知って欲しいと願っているからです。
当院の取り組みとして、目玉は「すこやか健康フェア」が挙げられますが、その他が院内勉強会だったり、メール相談だったりします。ホームページで取り上げている内容も啓発の一環のつもりです。
普段、新潟県の食物アレルギーの医療レベルが低いので、食物アレルギーのことを書いていますが、ぜんそくやアトピー性皮膚炎も書きたいことは沢山あります。ただ、ぜんそくのガイドラインが作成されて10年以上が経ち、アレルギーが専門でない一般小児科の先生の間でもゆっくり浸透してきているのが、ぜんそくだと思います。ただ、見ていると、まだまだ医師の間に温度差があるように感じます。
先日、ぜんそく症状で困っている親御さんからメールで相談を受けました。入院が20回を越えており、現在、アドエアという吸入薬が出されているようです。重症な患者さんですが、いろいろと注意点もあるように思いました。
最重症だと、アドエアという“最強”の薬を使えば症状は、かなり軽快するはずです。“最強”と書いたのは、気管支の炎症を抑える「フルタイド」という吸入ステロイドと、気管支をジワーと広げる「セレベント」という気管支拡張薬の両方が入った薬だからです。
逆に、それでも入退院を繰り返すようなら、「効いていないのではないか?」と考えなければなりません。
よくあるのは、「うまく吸えていない」ということ。「ディスカス」タイプだと、大人が使うような粉の薬を一気に吸わなければならず、子どもの場合はうまく吸えないこともあります。この場合は、「エアー」タイプを使うことになります。
先日も、小学校の低学年のお子さんにフルタイドの「ディスカス」が出されており、「いい薬だと言われて吸っているが、良くならない」と相談を受けました。実は、吸い方に問題があり、吸っているように見えているだけで、ほとんど気管には届いていなかったようです。であれば、いい薬でも効果は出るはずはありません。
「エアー」タイプに切り替え、少しして受診して頂きましたが、「明らかに効いている」という親御さんのお返事に安心しました。ただし、「エアー」タイプにも落とし穴があります。霧の吹き出し口をくわえて、ボタンを押すとシュッと薬が出るのですが、それとピッタリ同期して息を吸わなければならず、大人でもかなり難しいはずです。
最近は吸入補助具である「スペーサー」を使いますが、「これくらいの年齢ならできるはず」とスペーサーを出されないこともあります。これもせっかくいい薬を出されても、宝の持ち腐れになりかねません。
この患者さんは、運動前にメプチンエアーを吸うように指導されているようですが、運動してぜんそく発作が誘発される「運動誘発ぜんそく」対策と思います。ただ、もともとアドエアには「セレベント」という気管支拡張薬が含まれていますので、運動誘発ぜんそくに予防効果があるのです。メプチンエアーを運動前に使用せざるを得ないのだとしたら、もしかしたら、アドエアがうまく吸えていないのかもしれません。
その前にパルミコートという吸入器を使うタイプの吸入ステロイドを使用していたようですが、少し前まではパルミコートは年齢制限がありました。それでアドエアに切り替えられたのかもしれませんが、今は年齢制限は解除されています。パルミコートに戻すにも手だと思います。
メールにも書いてありましたが、総合病院にかかっているそうで、主治医が決まっていないそうです。それってとても違和感を感じます。なぜなら、慢性疾患は一人の医師が同じ目線で、病気の流れを見る必要があるからです。つまり、「最近入院が多いから、治療が足りないのかも?」とか、逆に「最近調子がいいから、薬を減らしてみよう」とか、主治医が責任を持って見守る姿勢が大事です。主治医が決まっていないと、治療が見直されずにダラダラしてしまう可能性があります。
以前も書いたかもしれませんが、実は市外の重症ぜんそく患者さんも複数当院では診ています。過去に入退院を繰り返していますが、「このままでいいのか?」と相談を受けたのです。過小治療でしたので、治療を強化したら入院しなくなり、当院に外来通院だけで今のところ、調子はいいようです。
別のお子さんは、入院歴が多く、かなり発作を起こしやすい状況で、私が診てからも地元の病院に入院することがありましたが、入院頻度は減り、仮に悪くなっても症状の悪化の仕方も緩やかになっているそうです。
ぜんそく治療は、ベストは私の学んだ福岡病院のように専門医がいて、入院施設を持っていることでしょう。ぜんそくは夜間に発作を起こすことが多く、重症だと重い発作を起こした時は外来治療が困難だからです。ただ、本当の意味で、アレルギーの専門医がいて、入院できる施設は県内には数少ないのが現状です。
ぜんそくの世界は、治療法の進歩により重症患者さんが減り、入退院を繰り返していた患者さんが、入院しなくてもよくなってきました。それでも入院を繰り返す場合は、なかなかコントロールが困難な一人握りの最重症な患者さんかもしれません。その前に、今日述べたようなことを確認する必要があるのだろうと思います。
この辺の判断は専門医でないと難しい思われ、食物アレルギーだけでなく、重症ぜんそくも頼るべきは専門医なのだろうと思っています。


