小児科 すこやかアレルギークリニック

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急がば回れ
2011年12月13日 更新

もう10年も前のことになります。

福岡に勉強に行かせて頂いている時、今年の「すこやか健康フェア」の講師を務めて頂いた柴田瑠美子先生のやられていた「食物負荷試験」を目の当たりにして、度肝を抜かれました。当時、新潟では誰もアレルゲンは食べてはいけない、と指導していたからです。

「これは是非とも新潟県に広めたい」と思いました。それから10年経ってしまった訳です。「十年一日」と言いますが、まさにそんな感じです。

福岡から帰ってきて、県内の病院でアレルギー外来を始めました。最初はガラガラだった専門外来も、徐々に患者さんの予約で埋まるようになり、午後外来では枠は足りずに、午前中の一般外来にもアレルギーの患者さんが来られるようになりました。

患者さんは食物アレルギーばかりではなく、ぜんそくもアトピー性皮膚炎の患者さんの方が多かったです。当時は、私のもとを訪れるぜんそく患者さんは、ほぼ100%が過小治療でした。

ちなみに最近だと、昨日も受診がありましたが、さほど重症でもないのに、アドエアという吸入ステロイドが処方されており、過剰治療のようです。とは言え、一部はこんな患者さんがいるものの、まだ多くは過小治療です。医師の実力を疑わざるを得ないのですが、ぜんそくをマイコプラズマと診断され、点滴を繰り返されている気の毒な患者さんも少なくありません。

アトピー性皮膚炎は当院に来られる患者さんの90%以上が、診断が適切ではありません。先のぜんそくをマイコプラズマと言っている医院さんは1カ所ですが、アトピーは複数の小児科、皮膚科から受診されますが、そのほとんどが過小診断、過小治療です。

食物アレルギーの患者さんでは、「食物負荷試験」の存在すら伝えられていません。アレルギー検査の結果だけで、食べられる・食べられないの判断をされています。

福岡で専門医療を学び、自分なりに正しい医療を広めたいと思ってきましたが、このようなさんさんたる結果です。

「私が何もやっていないのか?」、いえ、自分ではそうは思っていません。小児科医として、地域で唯一のアレルギー専門医として、真面目に診療に取り組んでいるつもりだし、当院を受診して下さった患者さんも、他の医療機関との差も分かってくださっているように思います。「すこやか健康フェア」や講演会など黙々とこなし、地域の啓発にも力を入れています。

なぜ思ったほど変化がないのか?。

私自身、アレルギー以外の分野では自分が診るよりも専門の先生にお願いした方が、より良く治療できると考えれば、躊躇わず紹介状を書いています。お子さんの症状を取り去るために、ベストと思われる道に導くのが小児科医の役目だと思っていました。

ところが、当院に来られる患者さんは、ほぼ全例が同業者からの紹介ではなく、患者さん自らの判断で受診されています。多少は口コミか何かでアレルギーなら当院へとまっすぐ受診して下さる患者さんは確実に増えています。明らかに前医にとって手の余るような重症なケースであっても、専門医に紹介されていないのです。

自分で対応できると思っているのか、「アレルギーくらい自分でも診れる」とお思いなのか、紹介すると患者が減るという経営的な判断なのかよく分かりませんが、患者さんにとってベストの方法を選んでくれている医師が少ない気がします。

先週もこの場で触れたように食物アレルギーを当院ではなく、病院へ紹介し、病院の先生も困惑して当院への受診を促してくれたケースさえあります。ゼーゼー言う患者さんを、以前は“風邪”と診断していて、当院が開院した影響か、いきなり“ぜんそく性気管支炎”と診断し、真似た治療をされていたのですが、最近はまた“風邪”と診断している医院さんもあります。モラルの低下なのか?とさえ、思ってしまいます。

せめてアレルギーの重い患者さんくらいは紹介して頂いた方が患者さんのためなのですが、それすら期待できない状況です。各医師がもうちょっと患者さんにことを想い、真摯に向き合えば違った対応になるはずだと思うのです。

連携のなさが、適材適所というか、望ましい医療機関で治療を受けることを阻んでいるのもひとつの要因だと思っています。急に良心的に紹介してくれるとは思えないので、患者さんに啓発を進め、正しい知識を広めていくしかなさそうです。

現状を悲観しても仕方ないし、確実に正しい知識は広まっているという手応えはあるので、焦らず腐らず、マイペースでやっていくのが「急がば回れ」なのだろうと思います。ただ、「これからの10年はもっと変えてやる」、そう思っています。