小児科 すこやかアレルギークリニック

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「預かります」
2012年05月10日 更新

アナフィラキシーを起こした時の対処薬として「エピペン」という自己注射薬があります。

当院は食物アレルギーに力を入れていると言うか、周囲にそういった医療機関がないため、力を入れざるを得ないと言う言い方もできます。

ただ、エピペンは食物アレルギー専用の薬ではありません。元々はハチ毒によるアナフィラキシーショック対策として導入されました。アナフィラキシーで亡くなる場合は、30分以内に対処ができなかったケースが多いとされます。林業に携わる方が山奥でハチに刺された場合、30分以内に医療機関に辿り着けるかと言えば、逆にそうでないことが多いと思います。

日本に導入されて以来、ハチ毒でアナフィラキシーショックにより亡くなる患者さんは激減したと聞いています。その他にアナフィラキシーを起こしやすい病気と言えば、食物アレルギーや薬物アレルギーが挙げられると思います。エピペンは主にハチ毒、食物、薬物に対するアナフィラキシー対処薬として使用されるようになっています。

当院でも、食物アレルギーの患者さんで重症な方にはエピペンを処方しています。1人だけ、別の病気の方に処方しています。

少し前のことになりますが、ある親御さんからハチに関して相談を受けました。家に近くによくスズメバチが出るのだそうです。祖父がハチに刺され、アナフィラキシーショックを起こし、救急車で搬送されたこともあるのだそうです。アレルギー体質を持つお子さんもそうなったら心配だという話でした。

当院では、特異的IgE抗体を調べるアレルギー検査をよく行なっています。卵白、ミルク、小麦など多くの項目を調べることができます。よく行なわれる検査は、食物やダニ、ハウスダスト、スギなどの花粉だと思いますが、実はハチも調べることができます。念のためと思い、スズメバチの検査をさせて頂くことにしました。

結果をみてみると、意外にも高い値でした。スズメバチに刺されたことはないということでしたが、どう解釈すればいいのでしょう?。知らないうちに刺されたことがあるのか、もしくはアシナガバチなど他のハチに刺されたことがあり、交差反応性といってハチ同士でハチ毒に共通性があり、スズメバチにも反応してしまっているということなのかもしれません。

このお子さんもスズメバチに刺されれば、最悪の場合、アナフィラキシーショックを起こす可能性が示されたのだと考えています。祖父がアナフィラキシーショックの既往があれば、心配されるのは当然のことです。親御さんと相談の上、エピペンを処方することにしました。

この場でよくエピペンの話をしています。食物アレルギーで専門的な医療を受けたいという親御さんが当院にはよく受診されますが、驚いたことにどう考えてもエピペンを処方されるべき患者さんが処方されていないこともよくあります。つまり、医師の知識不足により、処方されていないこともよく見かけます。

また、エピペンは本人、家族、救急救命士が注射することができますが、園や学校でアナフィラキシーショックに陥った場合、園や学校の職員が救命のためにエピペンを使っても法には触れないということになっています。園や学校職員も打っていいと判断されているのです。

ただ、園や学校ではそれこそエピペンに対して“アレルギー”があり、「医療行為だから、そんなことはしなくていいし、すべきではない」と考える方が少なくないようです。

よく言っているように、上越市や妙高市、柏崎市では市をあげて取り組んでおり、新潟県内でもエピペンに対する意識は極めて高いと言えます。最近では、エピペンの預かりを拒否されたことはないし、私が出向いたり、園や学校の先生に当院に来て頂き、エピペンの説明を何度も行なってきました。より一層、理解が進むということになります。逆に、私の意図しない方向に進んでしまっているのでしょうが、そういう地道な活動が、他の地域との間に対応の格差を生んでいるとも言えます。

このハチの抗体の高い患者さんの場合、エピペンを処方していましたが、学校側に預かってもらうような働きかけはしていませんでした。

先日、お母さんを通して、学校が「エピペンを預かります」と言っているとの話を伺いました。

これにはちょっと驚きました。普通、エピペンなんて本音は預かりたくないと思っている園や学校が多いと思っているからです。最近は、リスクを避けたがる医師が多く、卵アレルギーの「た」の字を聞いただけで、インフルエンザワクチンを拒否する医師もいるくらいです。

折角、そう言って下さっているのだし、確かに学校活動の中でハチに刺されてしまうこともあるかもしれません。万が一アナフィラキシーを起こしてしまった際には適切に対処して頂ければと思っています。

一昨年、昨年と上越市内の養護教諭の先生方にアレルギーや感染症の話をさせて頂きましたが、子どもを守るために正しい知識を持ち、適切に対処したいと考える養護の先生が増えているのだろうと思っています。多分、県内ではトップレベルの意識の高さだろうと思っています。

また仕事が増えてしまいますが(笑)、来週にでも診療が終わった頃に、学校の養護の先生に当院に来て頂き、どんな時にどうやって打つのかエピペンについて話をすることにしました。

上越の園の先生方にもアレルギーについて講演依頼がありますし、もっともっと医療レベルを上げていかなければならないと思っています。