昨日も食物アレルギーの講演でした。
昨日触れた誤食のあった市内の園の園長から電話を頂き、アナフィラキシー時の対応の勉強会をして欲しいと依頼がありましたので、空いていた日に予定を入れました。
4月、5月も忙しかったのですが、6月からの予定をみると
【6月】6日、20日、27日、30日
【7月】4日、11日、18日、21日、25日
【8月】1日、8日、25日
【9月】1日と、現在決まっているのはこんな感じです。地域も様々で地元上越5件、中越6件、下越2件となっており、毎週頑張っている割には半分も終わっていません。まだまだ啓発活動は続きます。
何故こんなにも集中するのかと言えば、食物アレルギーに関心のある人が増えており、園や学校でもアナフィラキシー時の対処を求められており、知識を持たざるを得ない状況といえます。
それだけのニーズがあるにもかかわらず、全く興味なしという医師が多いのが現状です。このギャップは、想像を絶するものがあります。
5年ほど前までは、私が新潟県内で「食物負荷試験」をやっているほぼ唯一の小児科医のだったのだろうと思います。ここ2~3年で負荷試験に手を出す医師が増えてきたようです。ただし、日本アレルギー学会の認定するアレルギー専門医が中心です。下越の先生が中心ですので、中越や上越地方の患者さんは、ほとんどその恩恵に預かれないということになります。
先日、某市で講演した際に、重い卵アレルギーの子を持つ親御さんから相談を受けました。ある医療機関で負荷試験を受けたそうです。卵焼きだったかゆで卵だったかを使った負荷試験でしたが、1口目で怪しい症状が出て、2口目でアナフィラキシーになったそうです。この時の状況を「あまり慣れていないようで、人体実験のようで嫌だった」とおっしゃっていました。
確かに「食物負荷試験」は卵アレルギーなら、加熱全卵を使い、Mサイズの卵1個を食べられたら除去の必要がないでしょうと判断できることになっています。ガイドラインの例をみると、まず1/16個食べて、15分待ち、また1/16個食べて、次に1/8を食べさせ、1/4と徐々に増やしていき、最終的に1個まで負荷すると書かれています。
ただ注意して欲しいのは、重症なお子さんは卵を1/16ですら食べられっこないのです。ですから専門病院では、最初から1個食べさせるようなことはせず、少ない量を設定し、それを食べられることを確認して、要は“外堀を埋めてから”、本丸に攻め込むという慎重な負荷試験を行なっています。
当院がこだわっているのは、ガイドラインにオプションとして設定されている、卵なら卵クッキーやカステラを使い、刻んで最終的に本丸である卵焼きへと攻め入っていますので、結局は同じようなことをやっている訳です。
アトピー性皮膚炎があり、0歳のうちから卵の値がクラス2とか3のお子さんもいます。0歳では負荷試験はしないことが多いので、除去して頂き、1歳の時点でどうするか考えることになるのですが、やはりいざ食べさせるとなると、親御さんも緊張します。
ある第一人者の先生の言葉を借りれば、そういう卵を食べたことのないお子さんで、卵白の値がクラス3以下であれば8割は加工品を食べられるそうです。
でも裏を返すと2割、つまり5人に1人はアレルギー症状を起こす訳です。親御さんも自分の子に何も起きないと確約があれば、家で少しずつ食べさせてみようと思うのでしょうが、「2割に入っていたらどうしよう!?」と心配になるのでしょう。実際、1歳前の赤ちゃんに茶碗蒸しを食べさせて強めのアレルギー症状が出ることがあり、もちろん卵アレルギーのせいなのですが、アレルギー検査の値は意外とクラス2とか3と高くないことも経験します。それを確認してあげる負荷試験も必要だろうと思っています。
9月に小児アレルギー学会で、開業医でもできる「食物負荷試験」という演題で発表させて頂きます。「食物負荷試験」の存在さえも患者さんに知らせようとしない、つまり“隠蔽している”小児科医が多いのも事実です。私の毎週行なっている啓発活動の足を引っ張るような行為です。しかし、日本も捨てたものではなく、より安全に食べさせる方法があれば負荷試験をやってみたいという良心的な小児科医もいるはずです。そういう真面目な先生方の参考になるような講演ができればと思っています。
上越にすこやかアレルギークリニックを立ち上げて、このやり方で1000件以上やっています。少しは自信もついてきましたし、自院でこれくらい食べさせているというデータも持っています。ただ、まだ予想外に強めの症状を起こすお子さんもいます。それでも、一般的な負荷試験よりは、症状の誘発される割合は相当低くなっています。負荷試験の事前にアナフィラキシーを起こすことが分かっていれば、負荷はやっていないので、致し方ない部分なのかもしれません。
講演の度に、全く同じ話をしたくはないので、食物アレルギーの本を眺め、何か使える図や説明はないかと探しています。「食物負荷試験」はやはりある程度は経験や勘が必要です。
ある専門病院の先生が「最低1人で100例以上の経験を積んでおくことが必須である」を書いていました。ですので、ほんの数件しかやっていない先生に、自分の患者さんを任せようとは思いません。先ほどの文章に、「専門施設で研修、見学、指導を受けた方が望ましい」とも書かれていました。本を読んだくらいでは、いきなりできないし、やっても人体実験的な無謀な負荷になる可能性があります。
当院では年間300件ほどやっていますし、専門病院で指導を受けているので、両方ともクリアはしています。この先生のおっしゃっていることは分かります。ただ、特に開業医がこの条件をクリアするのは、とても困難でしょう。本を読みつつ、慎重にやったとして、100件くらいやればそれなりに精度の高い負荷試験ができるような気はします。
食物アレルギーの診療に「食物負荷試験」は不可欠と言われています。食物アレルギーを持つ乳幼児は5~10%いると言われており、親御さんは小児科にかかった時に「先生は負荷試験をやっていますか?」と聞くことも必要でしょうが、お子さんを守るために、欲を言えば「100件以上やったことがありますか?」と確認した方がいいのかなと思っています。


