今年の夏は、いつになく忙しくさせて頂いています。
毎週のように食物アレルギーの講演があり、当院では、夏休みなどに通院しているぜんそくの患者さんの治療を中止してよいかを判断する「気道過敏性試験」を行なっています。いつもは土曜の午後の診療後にやっていましたが、今年は土曜に講演の予定も入っており、フリーな土曜がほとんどないため、この土曜日は2人検査を行ないました。
こんな調子では、夏もあっという間に終わってしまいます。夏らしい遊びもやっておかねばならないと考えて、この週末も海に行ったり、釣り堀に行ったりしました。結構ハードスケジュールです(汗)。
今週も、中越地区の養護教諭の先生を対象としたアレルギーの講演が予定されています。その準備にも余念がありません。実は昨年の8月10日に、やはり中越地区の養護の先生にアレルギーの話をさせて頂いています。昨年は中越地区の南半分が対象で、今年は北半分の市町村となっています。やはり専門医の少ない地域なので、アレルギーの理解を深めて頂くチャンスを頂いたと考えています。
打ち合わせの段階では、「内容は、昨年と同じような話で充分」ということでしたが、同じ話はしたくないし、この1年で私自身も進化し、いろいろな経験もさせて頂いています。この1年の間に「この部分はこう説明すれば分かりやすいのではないか?」とひらめけば、それに見合ったスライドを採用しています。似たような話でも、変化はしているのです。
とりあえず、昨年話したスライドは食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、じんましん、(咳が長引くと言う意味でぜんそくとの区別のための)心因性咳嗽というものでしたが、昨年のものをベースとして、使えそうなスライドを加えていったら、180枚くらいになってしまいました(大汗)。
与えられた講演時間は90分なので、早口で話しても2時間くらいかかってしまいます。それでは困るので、せめて100枚近くに減らす必要があります。どれも考え抜いて作ったスライドなので、悩みながら取捨選択することになります。
普段、食物アレルギーの話を中心に書いていますが、もともと日本有数の専門病院が、どんなぜんそく治療をやっているのか知りたくて福岡行きを決めましたので、ぜんそくも相当こだわっています。いつも書いているガイドラインは、ぜんそく、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーとそれぞれありますが、一番小児科医の間で浸透度が高いのがぜんそくのガイドラインでしょう。
ところが、言いたいことは結構あります。オノンやキプレスといったロイコトリエン受容体拮抗薬やフルタイドといった吸入ステロイドを使う医師が増えているのですが、それさえ使っていればいいと考える医師もいるようです。なぜ治療を継続するかと言えば、症状を抑え、他の児を同じような日常生活を送ってもらうためです。
特に今回は小学校、中学校、高校の養護教諭が対象ですが、部活があったりと、体を激しく動かす年代です。「運動誘発ぜんそく」といって、運動することが発作を誘発することもあります。激しい運動も日常生活の一部なので、それさえも出ないように抑える必要があります。
また、「フルタイドを出せばいいのね」と低年齢の子にディスカスと呼ばれる、大人と同じ粉の吸うタイプの薬を出す医師もいます。当然、上手く吸えないので、治療効果はほとんどありません。
一方で、これも時々書いていますが、過剰治療も目立ちます。そこまで強い治療をする必要がないのに、またぜんそくの診断すらつけられない状況で、アドエアという最強の薬を処方する医師もいます。5歳以降に使う薬なのに、3歳の子に使われているケースもあります。また、ぜんそくとも診断されないレベルで、オノンやキプレスを延々と飲ませ続けられているお子さんもいます。
風邪の時は、のどが赤くなっていることが多く、目で見て判断できます。一方、気管支は、ぜんそく患者さんでは「慢性炎症」を起こしているとされます。しかし、のどの更に奥なので、気管支の状況は見ることはできません。しかし、「フローボリュームカーブ」を見れば、ある程度は分かります。簡単に調べられるのですが、県内で実施している小児科は相当限られます。残念ながら、数施設でしょう。
このフローボリュームカーブは軽症なら異常は見られないと思いますが、重症であれば下にへこんだ形になります。ぜんそくは重症であれば、大人に持ち越すことが多く、ごく一部の患者さんが致死的な発作を起こすこともあります。
毎年、春に学校検尿があります。これは慢性腎炎という放置すると腎不全になってしまうような病気を早期に見つけるためのものだと理解しています。より頻度の高いであろうぜんそくを、客観的に見つけられるフローボリュームカーブを多くの子ども達に実施するシステムはあってもいいと思っています。
もしフローボリュームカーブが異常で、気管支拡張薬を吸入した上で再度検査して、改善がみられるなら、ぜんそくがあることが分かるし、治療をキチンと行なう必要があることが分かります。
このフローボリュームカーブも多くの情報が得られるのですが、多くの医師が行なっていないため、食物アレルギーにおける「食物負荷試験」のように知らない患者さんが多く、もしかしたら適切な治療に結びつけられるのに、その機会を奪っているのかもしれません。
確かに、ぜんそく患者さんにフルタイドなどの吸入ステロイド薬が使われますが、それでぜんそくが治ってしまうかと言えば、話は別です。アレルギー専門医の間ではよく知られている、吸入ステロイドを使っているうちはいいが、中止してしまえば、また再悪化するというデータもあります。その辺の治療の限界も養護の先生には知っておいて頂く必要があると思っています。
まだまだいろいろ話したいことはあり、ぜんそくについてデータを交えて、解説したいと思っています。中にはぜんそくの症状を繰り返しているにもかかわらず、医師がぜんそくと診断していないがために、親御さんも把握していないことすらあります。最近目立つ過剰治療も何とかしたいと思っています。となると、こういう機会に養護の先生方にぜんそくという病気を理解して頂くことで、専門医に足を向かわせることができるかもしれません。
いろいろ悩んでいますが、減らせるスライドは少なく、何とか頑張って現時点で110枚ほどです。印刷の時間がないでしょうから、講演の資料を事前に送っておかないといけません。スライドを絞りきれずに、資料が多くなってしまい申し訳ないのですが、あとで見直す際には、内容が豊富な方が思い出しやすく、便利だと思っています。
養護の先生にとっては、多分初めて聞くような内容も多いと思われ、アレルギー専門医とそうでない場合、知識や技術の差が歴然であることを知って頂くことも私の任務であろうと思っています。


