昨日のN市の患者さんの問題点は、卵白がクラス3であろうと、茶碗蒸しを少し食べている訳ですから、完全除去を指示するのはおかしいということでした。逆に、どこまで食べられるのかを調べる必要があり、「食物負荷試験」の適応だったのです。
残念ながら、専門でない医師は、「食物負荷試験」をやったことがないので、今回のようにひたすら除去、除去と言い続けることが多いと言えます。専門でなければ、負荷試験の適応くらいは知っておいて欲しいものです。日頃何を食べているかを確認し、完全除去をすべきか、しなくてもいいのかを冷静に考える必要があります。
医師は、患者さんに「除去しなさい」と言えばひと言で済みます。茶碗蒸しを少量ですが食べているのだから、「除去」という指示すら、医学的根拠がなく、全く理にかなっていないということを患者さんは知っておく必要があります。
今は、食物アレルギーの対応は「必要最小限の除去」と言われています。食べているレベルを基準にし、食べられるものは食べていいとされます。アレルギー検査の数値だけで、「食べるな」と言われている患者さんがいるとすれば、その指導は適切でないと考えて構わないと思います。
先日、別の“N市”である長岡市から患者さんが、当院を初めて受診されました。卵、牛乳、小麦、大豆など何種類もの食品でアレルギー検査は陽性でした。
私は最近、長岡市で食物アレルギーの講演をすることが多く、この患者さんも間もなく通う予定の園で、当院の存在を教えてもらい、初めて知ったそうです。通常70キロも離れた市外の小児科開業医を教えることはないでしょうから、こういうアドバイスは有り難いものです。
ちなみに、この患者さんはインタールと言う抗アレルギー薬をずっと飲まされていました。少し前にもここで触れましたが、とにかく誤った使い方をする非専門医が多いのも事実です。その記事を読まれたそうで、今受けている医療がおかしいのではないかと考えるに至り、それが当院を受診させるきっかけになったようです。
更に親御さんは、それまでのかかりつけ医に「負荷試験をしたい」という旨を伝えたそうです。そうしたら、「数値が高いから負荷試験はできない」と言われたそうです。残念ながら、負荷試験をしていない医師は口を揃えてそういいます。検査が高くても食べられるケースがあるから、逆に専門医のもとで負荷試験をやる必要があるのです。
そもそも、何種類もアレルギー検査が陽性の食品があれば、専門医に紹介しなければならないとガイドラインに書かれています。このルールを知っているアレルギーが専門でない医師はほとんどいないようです。
近隣のアレルギーに詳しいとされる小児科も受診したそうですが、「大してやれることはない」と言われたそうです。専門医から言わせれば、残念ながら「負荷試験はできない」、「大してやれることはない」というのは間違いでしょう。やるべきことは沢山あります。
この患者さんは、アレルギー検査は数項目しか実施されていませんでした。魚も重要なタンパク源ですが、魚類は何も検査されていなかったのです。確かに卵や乳の値はかなり高いので、食べられそうなものを探してあげる必要があります。また、他にも数値が高く、アレルギー症状が誘発されそうな、気をつけなければいけない食品を探す努力をすることも大切でしょう。
当院では、卵白がクラス6であっても負荷試験をして加工品を食べてもらう努力をしています。当院のデータですが、クラス6でも8割近くのケースで食べられているのです。「やれることがない」という言葉も根拠がないのは明らかです。
敢えて言えば、専門でない小児科医がガイドラインに沿うこともせず、根拠のない指導をしているケースはかなり多く、その言葉を信用せざるを得ない患者さんはとても多いと思われます。この場で情報発信をすることで、患者さんがおかしな情報に振り回されることなく、お子さんのために根拠のある医療をする医師の元で指導を受けて頂きたいと思っています。
もともと、当院の地元である上越市では、当院に紹介されてくる患者さんはほとんどなく、当院のみが「食物負荷試験」をしていることを知っていて、紹介しない医師が多く、タイトルに沿った言い方をすると「上越市は、大丈夫ではない」と言えます。昨日、今日と触れたように新潟市も、長岡市も大丈夫とは言えず、人口が多いこれらの街がこんな現状なので、新潟県内の多くの患者さんが似たような、根拠があるとは言えない医療を受けているものと思われます。
不憫としか言いようのない、指導を強いられている患者さんはとても目につきます。患者さんを守るために、「負荷試験できない」、「やれることがない」と専門でない医師が、自分の知識の範囲内でそう言っている“現実”を知って頂かなければならないと思っています。


