先日、発熱の患者さんが初診されました。
当院の場合、熱が出れば病名は何だろうと考えます。いつも言っているように、診断をつけなければ、敵が分からないので治療を間違えることにつながります。
当院に来られる患者さんは、これまで受けてきた医療に不満を持っているからこそ、受診されます。「診断はなんて言われました?」と聞くと、「診断名も告げられず、「これを飲んでください」と言われただけです」と答える親御さんが多いのです。
複数の小児科でこんな対応がなされているようです。やっていることは、いわゆる「対症療法」ってやつです。咳が出れば「咳止め」、鼻が出れば「鼻水止め」という症状を抑える対処法です。
よくあるのが、熱と咳で受診し、抗生剤と咳止めが処方されるのだけれど、病気の原因がウィルスなら、ウィルスに抗生剤は効かないため、熱が下がらないということになります。熱の原因がマイコプラズマなら、多くの小児科医が抗生剤はセフェム系の薬を出すため、マクロライド系でなければ効果が期待できないため、熱も咳も一向に改善しないということになります。
しつこい咳や続く熱は、最近の流行状況を考えると、マイコプラズマを疑う必要があります。何が原因かも考えずに、「とりあえず抗生剤を出しておこう」なんて考え、別の抗生剤を出せば、全く効果がなく、親御さんは抗生剤を飲めば熱は下がるものと思っている方が多いでしょうから、「抗生剤を飲んでいるのに効果がない」と不安に陥ります。
昨日も休日診療所で診療がありましたが、親御さんが連れてきたお子さんを「マイコプラズマではないか」とおっしゃいます。その根拠は、少し前に弟さんがマイコプラズマだったからということでした。そういうことであれば、話をじっくり聞く必要があります。時々書いていますが、採血をしてその場で「マイコプラズマです」と診断された場合は、検査法があやしいため、誤診である可能性があるのです。
話によると、弟さんは8月上旬に咳が出て、熱も4~5日続き、一旦下がっていたそうです。私ならマイコプラズマを疑いレントゲンを撮っていたと思いますが、そうはされませんでした。その後咳は悪くなる一方で、2週間以上経って「もしやマイコプラズマ?」なんてことになって、調べたら抗体の上昇があり、マイコプラズマと診断されたそうです。
その話を聞いたら、多分マイコプラズマで間違いないだろうと感じました。2週間後に今度は母が咳が出始め、それから2週間くらいして今回のお子さんが熱と咳で発症したようです。
当地では例年になくマイコプラズマが流行しており、弟さんを診た時にもっと早くマイコプラズマを疑って、診断をつけ治療していれば、母と姉の発症を防げたかもしれず、対症療法ではなく、原因追及をする努力が必要だったと思っています。
最初の話に戻りますが、熱で初診の患者さんがあり、「何だろう」と考えました。咳もなければ、夏風邪の可能性が高く、咳もあれば、それこそマイコプラズマも考慮にいれます。
熱が出て間もないのですが、痰がらみの咳をしていました。鼻水も出ています。問診票には、「里帰り中」と書かれています。その隣に「家に新生児」と書かれています。つまり、里帰り出産で赤ちゃんが生まれたばかりで、そんな状況で上の子が熱と咳、鼻水という症状が出たのです。
そこで「RSウィルスだとまずいな」と思いました。上の子は症状的には呼吸器感染です。マイコプラズマもありますが、あっという間に痰がらみの咳になっており、RSウィルスも十分考えられます。ご存知の方もいるでしょうが、RSウィルスは生後間もない赤ちゃんでもいとも簡単にかかってしまい、呼吸困難などの症状を起こします。入院する確率も結構高いのです。
RSウィルスを調べて、もしそうなら赤ちゃんへのアドバイスも送ることができます。
多分、損得を考える医師なら調べないと思います。なぜなら、RSウィルスは1歳以上で調べると、検査代が医院の損になります。また、里帰りなので落ち着いたら自宅に帰ります。2度とかからないかもしれない患者に「そこまでする必要がない」と考えると思うのです。
赤ちゃんがRSウィルスにかかると、気管支に傷が付き、その後もゼーゼーしやすくなります。当院がRSウィルスを自腹を切ってでも調べるのは、呼吸器疾患にこだわっているからでもあります。急に実家にいるであろう赤ちゃんが、上の子からRSウィルスをもらってしまったら、呼吸困難に陥り、入院してしまうかもしれないと考えたら、居てもたってもいられなくなりました。
上のお子さんはそんなにひどい痰絡みでもなく、多分このケースでは、ほとんどの小児科医がRSウィルスを調べない状況だったと思います。赤ちゃんの顔、と言っても見たこともありませんが、それを思い浮かべ「ここで調べなければ、小児科医として良心がすたる」と思ったため、損を覚悟で調べてみました。
結果は、RSウィルスが陽性でした。
RSウィルスが出たところで、特効薬がないため、上の子の治療には結びつきません。ただ、場合によっては4、5日解熱しないこともあり、とにかく痰絡みの強い咳が出ます。親御さんもRSウィルスだと原因が分かることで安心できます。原因不明な症状が続くこと程、親として不安なものはないと思っています。
それよりも何よりも、乳児がかかると重症化しやすいため、上の子を近づけない、可能なら隔離しなければなりません。ということでご家族に、RSウィルスが出たため、下の子にうつす可能性が極めて高く、呼吸困難に至るかもしれず、隔離が望ましいとアドバイスすることができました。
自分で言うのも何ですが、呼吸器にこだわっている小児科医として、適切なアドバイスができたと思っています。
自己満足の世界なのかもしれませんが、自分なりに考えて、赤ちゃんへのリスクを回避できたことは、ちょっとだけ自信につながりました。


