小児科 すこやかアレルギークリニック

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大人のアナフィラキシー
2012年10月22日 更新

来月、講演が二つ予定されています。

そのうちの一つが、某市の救急隊員の方へのアナフィラキシーに関する講演です。アナフィラキシーとエピペンについて話を聞きたいのだそうです。

確かに、エピペンは食物アレルギーの患者さんの増加や、認知が広がることでエピペンを処方される患者さんも増えています。当院でも、今月だけで2人処方しています。

エピペンは、本人と家族が打つことができるのですが、往々にしてアナフィラキシー時はグッタリすることが多いので、例えば中学生くらいであったとしても、自分自身で打てるかと言うと疑問が残ります。学校や園でアナフィラキシーが起きた場合、当然保護者にも連絡が入るでしょうが、急いで学校や園に向かっても、救急車を要請した場合、救急隊員の方が早く到着することもあるでしょう。

救急隊員の中で、救急救命士もエピペンを使用することが許されています。状況からアナフィラキシーと判断され、重症であると判断されたら、その患者さんに処方されているエピペンを使用できるのです。

ただ、新潟県は小児科領域で当院がトップクラスに多く処方しています。多分、処方されるべき患者さんに対し、処方されていないのだと思います。私の患者さんの中で、救急救命士がエピペンを注射したケースは一人だけですから、県内の多くの救急救命士の方が必要時に打たなければいけない状況にあるものの、小児に打った経験者はほとんどいないのだろうと思っています。

日本も高齢化社会となり、小児科医がまかなう年代は狭く、多くが内科医の対応する領域となっています。新潟県内の大人のアナフィラキシーの対応がどうなっているかはよく分かりません。ただし、内科医で食物アレルギーやアナフィラキシーに詳しい医師は少ないと思われ、小児科同様にエピペンを処方すべき患者さんに処方されていないものと予想しています。

茶のしずく石けんで有名になった「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」も、エピペンが処方される可能性もある病気ですが、いきなり発症するため、それを予知することは不可能と言われています。大人だと、内服薬や造影剤などでもアナフィラキシーを起こし得ます。先日始まった米倉涼子さんが外科医役で主演されるドラマでも、手術中に患者さんが原因不明の低血圧に陥りましたが、ラテックスアレルギー(手術に使うゴム手袋)が原因でした。

こういった薬剤やラテックスによるアナフィラキシーは、小児科医の私には経験がないのですが、こういうことでもアナフィラキシーを起こし得るということは、来月の講演の中で触れなければなりません。

ということで、講演に向け、現在大人を中心としたアナフィラキシーの勉強をしているところです。

勉強し始めてみての正直な感想としては、「怖いな」というものです。

エピペンを含めたアナフィラキシーの対応は、食物アレルギーの診療を真面目にやっていると避けられません。実際に、「食物負荷試験」の最中にエピペンと同じ成分のアドレナリンを注射することはたまにあります。

既に、食事後にアナフィラキシーを起こし、原因を特定するために当院を受診されるケースはありますので、精査しエピペンを処方することはあります。アナフィラキシーを起こしやすい食品は、小さければ卵や牛乳で起こし、大きくなってくるとソバやピーナッツが悪さすることがあります。ある意味、結構分かりやすかったりします。

救急診療部門で働いている先生方が書かれているアナフィラキシーに関する本を読むと、大人の場合は“食べ物”が原因とは限らず、本人もほとんど意識のない状態で救急外来を受診し、医師が少ない情報の中でアナフィラキシーと診断し、対処している現状が書かれており、「自分なら、ちゃんと対処できるだろうか」と不安を感じてしまうのです。疑ったら、待ったなしで治療する必要があると書かれているのです。

例えば、高齢者だと高血圧や狭心症などで薬を連用していることがあります。実はアナフィラキシー時に、エピペンもしくは、エピペンの元の薬であるアドレナリンを使っても、薬同士がケンカをして効果を邪魔されることがあるというのです。小児でこういった薬を飲んでいるケースはほぼ皆無でしょうから、こんなことは考えたこともないのです。

実際、私がエピペンの話をする時に、アナフィラキシーに陥った際には「ショック体位」といって下肢を挙げる体勢を推奨しています。その方が脳への血流を保てるからです。それは患者さんが大人であっても同様なのですが、強い呼吸苦や嘔気のために、患者さん自身が上体を起こすことを希望することもあるのだそうです。重症な状態ではかなり脱水も進行しており、そういった状況で上体を起こすと、心停止や急変の原因となり、エピペンやアドレナリン無効の原因になるのだそうです。

大人のアナフィラキシーの勉強することで、自分の経験したことのない“世界”が見えてきて、そういう意味で怖くなってしまうのです。

来月の講演では、アナフィラキシーとエピペンに関する話を求められており、救急隊員の方が対象となると、大人のアナフィラキシーについても時間を割かねばなりません。講演日まであと1か月しかなく、スライド作りに励む日が続きそうです。

普段、私がしている食物アレルギーの話をするだけなら、ピントのずれた講演になってしまいます。ポリオやインフルエンザのワクチンの接種希望者も増えており、かと言って休みの日は家族サービスもしなければならず、時間を作るのが大変ではあります。消防隊員の方に正しい知識を持って頂くことは、地域のレベルアップにつながりますので、頑張らなければならないと思っています。