昨日、県外から小児科の先生が当院の負荷試験の様子を見学に来て下さいました。
9月に大阪で開催された日本小児アレルギー学会で、「開業医でもできる食物負荷試験」というタイトルで講演させて頂きました。発表後に、「見学に行ってもいいか」と打診を受けていて、それが実現した格好です。
こんな雪の中を、県外から来られるので、もちろん食物アレルギーに力を入れている先生です。話を伺うと、専門病院の負荷試験の様子は既に見学されているそうです。しかも、ご自分の職場で負荷試験を既に始められているとのこと。すごいと思いますし、その先生のいる地域は中核病院ですら負荷試験をやっておらず、頭が下がります。
食物負荷試験が強調されだしたのは、比較的最近のことです。ザックリ言うと、特に私より年上の世代の小児科医は、新しいこと(負荷試験)に取り組むのは少ないようです。ベテランの域に達した年代は、「これまでも負荷試験をせずにやってきて、困らなかった」と考えるのかもしれません。
多くの医師が、リスクを嫌います。負荷試験は、アナフィラキシーショックを起こす可能性もあるため、二の足を踏んでいる小児科医は多いと思います。
特に開業医という、入院施設を持たないところで負荷試験をやるのは、後ろ盾がない訳ですし、そもそも医師が一人しかいないため、症状が重く出た場合は、対処に掛かりっきりになってしまいます。つまり、診療が完全にストップしてしまいます。
いろんな意味で、“医院にとって不都合がある”ため、「負荷試験なんてやってられない」と結論づける小児科医がほとんどなのだと思います。
当院の場合も、医師が一人しかいませんし、積極的にリスクを好んでいる訳ではありません。一見すると矛盾しているようですが、「どうしたら、より安全に食べさせることができるのか」を考えています。
一般的に牛乳アレルギーの負荷試験は、牛乳を200ml飲ませる訳ですが、例えば、重症な牛乳アレルギーがある場合、200mlなんて摂れるはずはないのです。当院も、負けるケンカはしたくないと思っています。
当院の力を入れている、加工品を使った負荷試験なら、乳成分を含むビスケットを少しずつ食べさせます。昨日は、4人負荷試験をやりましたが、1人はまさにそのケースでした。多くの小児科医が、乳製品は完全除去を指示するケースです。
アレルギー検査で言えば、ミルク6、小麦5というお子さんです。昨日負荷したのは、ミルククッキーですから、乳も小麦も含みます。負荷試験をやって症状が出てても乳のせいか、小麦のせいか、どちらが原因か分からなくなります。それが加工品を使った負荷試験のデメリットと言えるのかもしれません。
ちなみに、卵白もクラスが6なので、あれもこれも食べられないというケースであり、言い方は悪いですが「八方ふさがり」という感じです。こういうケースこそ、「是が非でも何か食べさせられないか」と燃えてしまうのです。
実は、先日、そうめんを100g完食しています。正直、おっかなびっくり(?)負荷してみましたが、食べられました。小麦はクラス5と高いですが、小麦アレルギーは卒業したと言える状況でしたので、ミルククッキーを食べさせても、乳成分の負荷試験ができると考えました。
結論から言うと、途中、蕁麻疹がわずかに出ましたが、所定の量を完食しています。ミルクがクラス6だと、食物アレルギーの専門病院でも負荷をためらうケースだと思いますが、工夫することでわずかな量ですが、乳製品を摂れることが分かりました。
わずかな量を摂っても仕方ないと考える医師は、食物アレルギーに理解のない医師と言えると思います。親御さんにとって「完全除去」と「わずかに摂れる」のは隣り合わせではなく、雲泥の差があると思っています。
既に負荷試験をやられている先生なので、昨日の当院の見学がどれだけお役に立てたのかはよく分かりません。ただ、いま述べたように、ミルクが6の場合の負荷試験は、そう見られるものではないでしょう。見学の日程が既に12月13日と決まっていたので、どういう患者さんが負荷試験を受けるかは分かっていなかったのです。当院でも、クラス6の子に負荷をするのは多くはないので、そういう意味では見学には良いタイミングだったのかもしれません。
以前も書きましたが、店で「小麦不使用」の米粉パンを食べて、アナフィラキシーを起こし入院治療したことのあるお子さんがいました。パンの中に、グルテンという小麦成分が含まれていたのです。業者がグルテンを小麦成分だと理解していなかった、恐るべきケースでした。
ちょうど昨日ことですが、その重症な小麦アレルギーのお子さんに、小麦の加工品を用いて負荷試験をやりました。その子も、わずかに蕁麻疹がみられたものの、何とか食べられました。
負荷試験をやる場合、これまで数多くやってきた経験により「今日は大丈夫だろう」と思う場合と、「今日は厳しいかも」とある程度覚悟して取り組む場合があります。診療がストップすることも想定します。昨日の4件中、2件が後者でした。
外来が混雑して、その先生とあまり話をする余裕がないと困ると思っていましたが、特に午前中はそれ程混雑していなかったので、ちょうどよかったと思っています。
その先生も、近くに食物負荷試験をやっている医療機関がないため、ある意味、逃げ道はありません。場合によっては、相当重症でも診ざるを得ないこともあるでしょう。ある程度は対処できるような、当院のテクニックが披露できたのではと思っています。
「是が非でも何か食べさせたい」という負荷試験に不可欠な気持ちは伝わったと感じており、そういう意味では少しはお力になれたのではと思っています。


