新年早々、食物アレルギーの現状を浮き彫りにするようなこととなりました。
当院の電子カルテは、県外の患者さんが受診されると、受診待ちの患者さんの名前の脇に県外という表示が出るシステムになっているようです。
ある患者さんの名前の脇に県外の表示があります。ご実家が上越にあり、過去に風邪症状などで2、3度当院を受診されたことがありました。予診表に「食物アレルギーの相談をしたい」と書いてありましたが、当院の過去の受診では、アレルギーについての相談は受けたことがありませんでした。このお子さんがアレルギーだとも認識していないくらいでした。
「どこの方だっけ」と現住所をチェックしてみると、I県と書いてあります。ちょうど正月休みで、ご実家に帰ってこられているそうです。
1年ほど前、自宅にいる際、そうめんを食べて、30分以内に顔が赤くなり、身体にも蕁麻疹が少し出たそうです。県外のかかりつけで相談したところ、卵白、牛乳、小麦アレルギーがあると診断され、その3種類をずっと除去し続けているとのことです。
対応について、別の機会にかかりつけ医に相談したことも合ったようですが、まともな回答が帰ってこず、相談しても無駄だと思われたそうです。
いつも言っているように、食物アレルギーに詳しい小児科医は、全国的にも多くないと思います。だいたい今回のように、患者さんにつっこまれると、すぐシドロモドロになることが多いと思います。「食物アレルギーは専門的な知識が必要で、場合によっては食物負荷試験が必要になるので、専門医に紹介状を書きましょう」と言ってくれれば、患者さんはどれだけ救われるのだろうとかと思っています。
言い方が悪いですが、多くの患者さんがかかりつけ医から“適当にあしらわれる”ことが多く、もしかしたらそれを真に受けて、必死に除去を続ける患者さんが多いのだろうと思います。今回のように、「こりゃ、ダメだ。自分で専門医を見つけよう。」という親御さんの方が少ないと思います。
心雑音など心臓に異常が見つかった時などアレルギー以外では「専門医に紹介しよう」となりますが、アレルギーに関しては多くの小児科医が「自分でも診れる」と思っているせいか、専門医に紹介しようとしないことが混乱を招く原因になっていると思っています。シドロモドロになるくらい専門的知識が不足していても、紹介しようともしないのは、専門医からするととても歯がゆいものです。
私の地元でやっていることは、園や学校の先生方に専門医に紹介しない対応は悪質であるということを周囲に知らしめるように努力しています。それくらいやらないと、地元の患者さんは守れないのです。紹介しない医師は、いまだに「家で食べさせてみて」と繰り返しており、アナフィラキシーでも起こしたら誰が責任を取るのだろうと心配しています。
冒頭の患者さんの場合、非専門医によくあるパターンですが、卵と乳、小麦を調べて、いずれも検査が陽性だったため、これらを除去を指示しているのであって、例えばピーナッツやソバ、魚卵、甲殻類などは一切検査されていません。要は、調べたもののうち、陽性だったものだけ除去と言っているのであって、他にアレルギーを起こしやすい食品は検査さえされておらず、他にも陽性の項目のものがあるかもしれません。このように“不思議”な指示をされていることが多いのです。
卵や乳の検査をしてから1年近く経っており、今はどうなっているか分かりません。再検査も必要でしょうし、一緒にピーナッツや魚卵も検査させて頂くことにしました。特に小麦は以前食べて症状が出ていますが、今はどうなっているか分かりません。もちろん、食物負荷試験でシロクロをつけてあげる必要があります。
その患者さんの地元も、食物負荷試験をやっている医療機関は極めて少なく、親御さんに負荷試験の存在を教えてくれる良心的な医師はいなかったようです。いつもながら、「負荷試験という検査自体が存在しているんですよ」という話をしました。
あと問題になるのが、どこで負荷試験をやるかです。I県で検査してくれるところを探すか、実家に帰ってきたタイミングに合わせて当院でやるかということになるでしょう。
ラッキーなことに、春から里帰り出産で3か月ほど上越に戻ってくるとのこと。3か月もあれば、卵と乳、小麦がどこまで食べられるか調べることは可能です。こういう状況の方は限られるでしょう。
当院で負荷試験をしようと言っていた赤ちゃんが、急遽、某都道府県に転居が決まり、悪いことに更にそこは専門医にいない地域なのです。当院へは飛行機を使わないと来れる距離ではなく、「どうしよう?」と途方に暮れている患者さんもいるくらいです。
負荷試験を受けられる状況にある患者さんは、かかりつけ医の言いなりにはならず、是非とも受けて頂きたいと思っています。今回の患者さんも、卵、乳、小麦を完全に除去し続けなければならないとは思っておらず、負荷試験を受けることで食べられる食材は確実に増えるだろうと思っています。
食物アレルギーは多くの患者さん、親御さんが困っていますが、かかりつけ医が専門かどうか、負荷試験を受けるかどうかで大幅に対応が変わってしまうことが多く、その辺を知らないと、無駄な努力を続けてしまうことに気付いて欲しいと思っています。


