アレルギーは奥が深いです。
アレルギーという学問を志し10年以上になりますが、分からないことも結構あります(汗)。ただ、考え方、捉え方は分かってきた気がします。
ぜんそくもアトピー性皮膚炎も医学が進歩してきたとは言え、対症療法が基本です。
つまり、ぜんそく発作を起こさないようにする、皮膚を良い状態にキープする。そうすることで、言わば“気管支が発作の起こし方を忘れさせる”、“皮膚が悪化の仕方を忘れさせる”という格好です。上手くいけば、治癒に至らしめることができる、のだと思っています。
食物アレルギーは、ここ最近、“なるべく食べさせる”という方向性が示されてきましたが、食べて症状が出れば、食べないのが基本です。でも、食べられる範囲内で食べさせてあげるという大前提からぶれてはいけないと思います。
こういった根本的な捉え方の筋を通すことが、大切なのだと思っています。
最近は、ガイドラインが整備されてきて、治療はしやすくなりました。これも医学の進歩と言っていいでしょう。ただ、「ガイドラインは誰のため?」と思っています。
場合によっては、患者さんのためでしょう。患者さんは知る権利がありますから、ご自分もしくは、子どもの病気について、ガイドラインを理解すれば、自分の受けている治療の方向性が間違っているのか、いないのかが分かると思います。
ただ、如何せん医師でなければ、難しいと思います。では、医師もその道の専門医と非専門医がいますが、専門医はプロとして正しい医療を実践したいと思っていますので、自然とガイドラインに沿った医療になっていると思います。
となると、専門でない先生のためでしょうか?。本来はそうだと思います。アレルギーにさほど詳しくないから、ガイドラインというマニュアルに沿って治療すれば、患者さんをプロ並みに治療できると思うのです。
ただ、日頃当院に来られる患者さんをみていると、ほぼ100%が非専門の先生のところにかかっていて、診断や治療がガイドラインに沿っておらず、それが故に症状が改善しないという状況です。
どうなんでしょう、言い方は悪いですが、アレルギーを「分かった気になっている」のかもしれません。アレルギーは患者数も多く、小児科では診る頻度の高い病気でもあります。多くの医師がガイドラインに沿った診療をしてくれれば、私の仕事がなくなってしまうかもしれません(汗)。それにより当院が潰れてしまっても、それはそれで仕方ないのですが、この場でガイドラインのことを強調しても、多くの医師がガイドラインを無視したかのような医療をやっているのは、理解に苦しみます。
「好きこそ物の上手なれ」なのだと思います。つまり、専門医は、アレルギーという学問に興味があるから、勉強するのだし、プロとしてのプライドがあるから、当院だけではないでしょうが、1人に30分以上かけて説明したりすることもあるのだと思います。今の保険診療では、その30分の間に風邪などを10人診れば、利益の上がる仕組みになっています。私なら迷わず、利益でなく、アレルギーの患者さんの方を取ります。
アレルギーを専門としていない医師が、どれだけガイドラインに沿って診療しているかについて興味のあるところですが、あまり興味がないからガイドラインの内容を充分理解しようとは思っていないように思えます。
先日、新患の患者さんが受診されました。いつも住所のところに目がいきます。やはり市外から受診される場合は、大きな決意をもって受診されるのだろうと思います。その患者さんの住所は、関東の某県庁所在地になっていました。もちろん、そんな遠くから受診されたのではなく、実家がこちらで、こちらにいる間に当院を受診されたという格好でした。
慢性疾患は、急激に悪化しなければ、普通は実家のある小児科を受診することはないと思います。当院を受診した経緯は聞いていませんが、よくあるパターンは、当院の評判を聞いた祖父母が受診を勧めてくれるというものです。
相談内容は、口の周りの湿疹が治りづらいことと、食物アレルギーについてでした。某県庁所在地のアレルギーが得意とされる小児科にかかっていたそうですが、聞いて驚いたのが、アトピー性皮膚炎が見逃されていたこと、食物アレルギーも卵、牛乳、小麦が完全除去されており、「食物負荷試験」のことが説明されていなかったことです。
明らかにガイドラインとは異なる対応がなされていました。診察室の脇の本棚に置いてあるアトピー性皮膚炎のガイドラインを片手に、アトピーと診断した根拠を説明しましたが、お母さんがおっしゃるには、某県庁所在地のいくつかの医療機関を受診したのに、アトピーとは言われたなかったとのこと。残念ながら医師側に問題があります。
食物アレルギーに関しても、卵や乳、小麦を口にしていずれもアナフィラキシーを起こしたことがあれば、完全除去も致し方ないのですが、そんなこともなく、ただ漠然と除去されていました。私なら負荷試験でどこまで食べられるか挑戦しているような状況です。
アトピー性皮膚炎は、医師が診断できない時点で治療は任せられないと思っています。この患者さんは、アトピーにしろ、食物アレルギーにしろ、医師を代えてもらう必要があると判断しました。親御さんも同意して下さっています。
幸い、その街の大学病院に私の知り合いの有名な専門医の先生がいるので、紹介状を書きましょうということになりました。これで一安心です。
大学病院や大きな病院だと、医師が何人も同時に診療しているので、結構時間をかけて説明してもらえると思います。そういう意味では、ひとりで多くの患者さんを診なければならない開業医は、アレルギーの診療に向いていないのかもしれません。
私の立場からすると、開業医の方が間口が広い分、症状の軽いうちから多くのアトピー性皮膚炎やぜんそく、食物アレルギーの患者さんを診ることができます。
経営効率を考えると向いていないのでしょうが、アレルギー専門の資格を持った小児科医は必要なのだと思っています。


