小児科 すこやかアレルギークリニック

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宝の持ち腐れ
2013年04月01日 更新

先日、新患の患者さんが受診されました。

新潟の方から受診されましたが、長引く咳を何とかして欲しいという目的がありました。咳が長引くとしたら、マイコプラズマや結核などの感染症もありますし、ぜんそく,蓄膿症による咳なども考えないといけません。

要は呼吸器疾患をいろいろ区別して、診断をつけなければいけないのですが、新潟県はアレルギーと呼吸器に詳しい小児科医が少ないように思います。

実際にこの患者さんも、あやふやな対応がされており、患者さんはもとより、親御さんも気の毒でした。明らかにぜんそくと診断できる状況で、そうは診断されていませんでした。当院に来られる患者さんは、ほとんどがこんな感じです。

自分の子なら、治療しても症状が良くならなければ、「何故良くならないのか?」を知りたいと思います。医師に信頼を寄せているのですが、それは往々にして裏切られています。病気が悪い訳ではなく、医師の診断や治療に問題があることが少なくないのです。

この患者さんのように明らかにぜんそくがあれば、「ぜんそくと診断されます」とハッキリ言っています。前にかかっていた小児科医が先輩であろうと、誰であろうとです。

よくガイドラインに沿って治療すれば、レベルの高い医療を受けることができると言っています。ただ、その医師がガイドラインを知っていて、ぜんそくならぜんそくと診断できる能力を持っていることを前提にしています。ぜんそくをぜんそくと診断できないのなら、ガイドラインは使われることなく、宝の持ち腐れになってしまいます。

この患者さんの場合、時々「キプレス」という薬が出されていました。これはぜんそくの治療薬です。にもかかわらず、ぜんそくの「ぜ」の字も説明されていませんでした。

私ならば、ぜんそくと診断できない状況であれば、「ぜんそくの診断基準は満たさないけれど、ぜんそく予備軍と診断されます」と言っています。いずれにしても、うやむやにして、「とりあえずこれを飲んでおいて」なんてことはしていません。

ただ、よく分からない湿疹の際に、こういう手を使うことはあります。薬を塗ってあっという間に良くなってしまえば、それはそれで「あり」だと思います。じきにぶり返してきたり、長引けば、こう言うのは患者さんに失礼に当たると思っています。

医院に通っても、症状が長引いたり、繰り返したりすれば、患者さんは不安になりますし、その場合は、病名をしっかり診断してあげる必要があると考えています。これまでも、自分で診断できない場合は、皮膚科に紹介していました。

ただ、患者さんがあとで来た時に「何て診断されましたか?」と聞くと「湿疹と診断されました」と言われるケースもあります。“湿疹”の病名が判断できないから紹介したのに、湿疹と言われるのは納得いきません。「皮膚科が分からないんだから、私に診断できなくても仕方ないんだ」と思うこともあります。これに関しては、私の手を離れたので、皮膚科の先生にお任せするしかありません。

話は戻りますが、この患者さんのお薬手帳を見てみました。そうしたら、「メプチン」、「インタール」というぜんそく発作を起こした時の吸入薬が出されていました。医院から吸入器を貸し出して、ぜんそく発作を凌ぐようにこれらの薬が出されたのだと思います。

ただ、ここまでぜんそくの治療をしておいて、相変わらずぜんそくの「ぜ」の字も説明されていないのは問題でしょう。ぜんそくと診断できなかったのだと思います。実はこういうケースはよく目にします。この小児科さんだけの問題ではないと言えます。

こんな状況で上越に引っ越してこられました。今後は当院で診ていくとなると、これまでのあやふやな“診断”や“治療”では、親御さんも何をやっているのか分からなくなります。そもそも「敵」が分からなければ、どう戦っていいかが分かりません。

「これまでの長引く咳の原因はぜんそくであり、それを治療していく必要がある」と、ガイドラインを片手に説明しました。特に母親は子どもを守ろうという責任感が強いため、目に涙を浮かべながら私の話に耳を傾けて下さいました。

この世にガイドラインというものがあるのに、適切に診断されず、治療も何となくやられているケースを見るにつけ、「親御さんは信用してかかっているんだから、もっと真面目に診療して欲しい」と悲しくなります。そういえば、この先生はネットで以前、ぜんそくの解説をしていたなと思い出しました。

分からないケースは、専門医に紹介すれば「これって、こう診断すればいいんだ」と学ぶことができます。皮膚科でキチンと「〇〇という病名です」と診断されている場合は、「今度診た時は、自分でも診断できる」と思います。

「紹介しない」→「診断できない」→「同じミスを繰り返す」、こういう悪循環は正直、見飽きるくらい経験しています。ぜんそくもアトピー性皮膚炎もガイドラインがあるにもかかわらず、本当に宝の持ち腐れ状態なのです。

アレルギーはかなり頻度の高い病気なので、もっとガイドラインを理解し、患者さんのために努力する医師が増えて欲しいと思っています。