小児科 すこやかアレルギークリニック

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義の心
2013年05月29日 更新

当院は、新潟県の上越市というところにあります。

上越出身の最も有名な人と言えば、上杉謙信が挙げられます。

先日、ピーナッツアレルギーと言われている患者さんが当院を受診されました。夕食を食べて、翌朝にじんましんが出ていたとのこと。夕食はピーナッツバターを食べていたということでした。

かかりつけの開業小児科を受診し、食物アレルギーを疑われ、病院を受診されたそうです。この開業の先生は、当院が食物アレルギーに力を入れていることを知っていて、当院には紹介してきません。まずここが問題でしょう。

病院の方でもピーナッツアレルギーを疑って血液検査をやったそうなのですが、結局、納得いかずに当院を受診することになります。その初診時に、アレルギー検査の結果を持ってきて欲しかったのですが、持参されませんでした。

親御さんの話を聞いても、申し訳ないですが、よく分かりませんでした。政治家だけでなく、医師にも当然のことながら「説明責任」があります。アレルギーではよくあるのですが、医師がよく分かっていないと、説明もシドロモドロとなり、患者さんによく伝わりません。多分、あやふやなことを言われたのだろうと思います。

アトピー性皮膚炎がよく“乳児湿疹”と誤診されることに触れていますが、診断名すら告げていない医師も多くいます。「診断は何と言われていましたか?」と親御さんに聞くと「ハッキリと言われていません」と言われることも多々あります。医師の「説明責任」って何だろうとって思わざるを得ません。

いずれにしても、小児科を2件まわって、当院に救いを求めてこられました。ピーナッツについてアレルギー検査をやったそうなのですが、他の項目も調べる必要があり、またRASTと言われるアレルギー検査をさせて頂きました。

いつもアレルギー検査は、それだけでは食べられる・食べられないの判断はできないと言っています。ただし、参考にはなります。結果をみてみると、ピーナッツはクラス0でした。

「ピーナッツはアレルギーを起こしやすい」→「ピーナッツバターを食べた」→「ピーナッツアレルギーに違いない」、このように連想する気持ちも分からないではありませんが、やはりこれを科学的に証明する努力は必要です。

アレルギー検査だけでは何とも言えませんが、ピーナッツが陰性だと、原因ではない可能性が出てきました。専門医は、いくらピーナッツとは言え、無駄に除去はしないように努力します。

ここであるテクニックを駆使します。プリックテストと呼ばれる皮膚テストをやってみたいと考えました。早速やってみると、このプリックテストも陰性でした。

となると、尚更ピーナッツが犯人ではない可能性が高まりました。まだ2歳前のお子さんにピーナッツの負荷試験はあまりやったことはないのですが、「食物負荷試験」でシロクロ付ける必要があると考えました。

確かにピーナッツは小さいお子さんは、粒のまま食べると気管に詰まる恐れがあり、あまり推奨されるものではありません。ただ、この子がそうであったようにピーナッツバターという形で口にすることはあると思います。

専門医でなければ、この場面でピーナッツの負荷試験はやらないだろと思います。しかし、小児科を2件まわって「ピーナッツを食べていいかどうかよく分からない」ということで当院に救いを求めて受診された訳です。当院で、何とかする必要があります。

患者さんはまだ小さく、ピーナッツの粒を食べるのはまだ先のことでしょうし、ピーナッツバターを食べた後の症状だったので、同じくピーナッツバターを使いました。

血液と皮膚による検査で陰性が確認されているとは言え、負荷試験は慎重に行ないました。結果、何も起きませんでした。じんましんが広がっていたのは翌朝のことで、夕飯を食べてじきに症状が出ている訳ではなかったので、ピーナッツアレルギーではない可能性も考えていましたが、その線は更に薄くなったと考えています。

では何かと言われても、確定はできませんが、体調の悪さによりじんましんが出ることもあり、そういうことだったのかもしれません。積極的にピーナッツ(バター)を除去する必要はなさそうだと判断しています。

さすがにここまで検査をして、説明すれば親御さんはピーナッツアレルギーではなさそうだということを理解してくださることでしょう。それなりに、親御さんのご希望に沿った診療ができたのではないかと思っています。

となると、当院に来るまでのルートが問題かもしれません。当院が「食物負荷試験」をやっていることをご存知で、まっすぐに紹介してこないのは不思議でなりません。結局、開業医同士はいわばライバルに当たるので、それこそ上杉謙信じゃないですが「敵に塩を送る」ということはしたくないのかもしれません。

ただ、どうして医者になったのかとよく思い出して欲しいと思っています。当たり前のことですが、患者さんの健康を守ることです。ピーナッツを除去する必要がなければ、それを明らかとし、無駄な除去をさせないことも大切ですし、じんましんの原因追及は難しいこともありますが、なるべく明らかにする努力が必要です。

負荷試験や精査ができなければ専門医にまわってもらうのは、私は当然のことだと思っていますが、そうしていない医師はとても多いように感じています。「ちゃんと病院に紹介しました」と反論するかもしれませんが、よく分かった専門医に紹介しなければ意味がありません。確認する術はありませんが、なぜ当院へ紹介しなかったのか聞いてみたい気もします。

明らかに専門医に紹介しなければならないケースでも紹介されておらず、患者さんの方で当院に逃げてくる場合が後を絶ちません。うがった見方をすれば、患者が減れば収入も減ってしまうと考えているのかもしれません。

それこそ上杉謙信じゃないですが、「義の心」を持った診療がいま求められているのだろうと思っています。