昨日、学校での食物アレルギー対応に関するニュースが流れていました。
調布市の死亡事故を受けて、各学校で対策をとるのが急務ということで、食物アレルギーに関する有識者会議が行なわれ、その様子が取材されていました。
まだ中間案なのですが「研究時対応など学校ごとにマニュアル」、「エピペン注射 医師・消防と連携し研修・訓練」という方向性が打ち出され、来年春までに具体的な対策をとりまとめるそうです。
その後、国に先んじて対策をとっているある学校の取り組みが取り上げられていました。学校職員が食物アレルギー児の情報を共有し、エピペンを打てるようにしているとのことでした。
私は自分でエピペンを処方した患者さんの通う園や学校のほとんどを回って、こういう指導はしており、学校に体制づくりをお願いしています。マニュアルも作られています。新潟県は食物アレルギーの専門医がとても少なく、いつ第二の死亡事故が起きるのかと案じていましたが、このニュースを観て、新潟も部分的には結構と先進的なことになったものだと思っています。
ニュースの中でも学校に消防隊員が訪れて、学校職員にエピペンの打ち方を指導する場面がありました。そこで職員から「症状が軽い場合にも打った方がいいんですか?」という質問が出て、それに対し消防隊の方が「そうですね」と答えていました。
その場面しか出ていなかったので、前後の話の流れはよく分からないのですが、私が同じ質問を投げかけられたら、「とても軽い場合は、打たなくてもいいです」と答えたと思います。
多分、同じようなことが全国各地で言われているのであろうと思います。確かに軽いと思っていても症状の進行がはやく、結果的に打った方が良かったというケースも想定されます。
専門医の間では有名な分類があるのですが、アメリカの食物アレルギーで有名なサンプソンという先生が、アナフィラキシーを軽いものから重いものまでグレード1から5まで分類しており、グレード3以上がエピペンの適応であると言っています。
明日も新発田市で講演がありますが、ここ最近いつも使っている画像があります。当院で食物負荷試験をやった時に、じんましんが出てしまい、抗ヒスタミン薬を飲ませます。それでもじんましんが広がったため、今度はステロイド薬を内服させ、その後じんましんが引いていったという経過を表した画像です。
身体の広範囲にボコボコとしたじんましんが広がったため、多くの学校の先生が焦るであろう状況だと思います。ここで、私はこの状況ではエピペンの適応ではないと言っています。
先程のアナフィラキシーのグレード分類では、エピペンの使用はグレード3からと言いましたが、このじんましんが広がっただけではグレード2にとどまっているからです。だから、エピペンの適応ではないと説明しています。
じんましんが広がり、息苦しそうという呼吸器症状とか、だるくて眠気があるというショックを思わせる症状があれば、グレード3や4という領域に踏み込んできます。エピペンの適応になってくるので、こうなれば、勇気を持ってエピペンを使用して頂きたいのです。
「症状が軽い場合に打つ」と言ってしまうと、じんましんが出ただけでエピペンを使用してしまうケースも出てくると思います。
学会が手遅れになるよりはマシとそれを認めてしまうのか、じんましんだけなら打つ準備をしつつ、冷静に経過を見てとなるのかは分かりません。
7月25日の記事にも書きましたが、小児アレルギー学会がどれか一つでも症状があれば打っても構わないとしたエピペンの適応では、じんましんのみでは打つことになっていません。現時点では、程度にもよるのでしょうが、“軽い場合”には打たないことになっていると私は捉えています。
医師や消防によって言うことが異なるのは、更なる混乱を生みます。ただ、じんましんだけでは死にはしないし、多くの専門医が軽過ぎるケースでは打つようには指導していないと思っています。
もちろん、じんましんが広がり、「これはマズい、何とかせねば」と学校職員がはやめのタイミングでエピペンを使用しても、それは責められるものではないと思います。患者さんも一時的にドキドキしますが、早期に薬が切れるので、じきに回復してしまい、大きな副作用は出ないと思っています。
もしかしたら、「症状が軽い場合」の取り扱いで、しばらく現場が混乱すると思います。はやく統一された見解が出るといいなと思っています。


