小児科 すこやかアレルギークリニック

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この程度
2013年09月19日 更新

先日、食物依存性運動誘発アナフィラキシーと診断されている患者さんから相談を受けました。

今は中学生なのですが、小学生の頃から運動後にアレルギー症状が出るようで、何度かエピソードを繰り返していました。

病気の知名度が上がってきたため、多くの医師が食後、運動して症状が見られるとなると、「食物依存性運動誘発アナフィラキシーではないか」とそれなりのことを言うようになってきています。このケースでも、かかりつけの小児科に相談すると、同様のことを言われたそうです。

これも食物アレルギーを疑うと多くの医師がアレルギー検査と称する特異的IgE抗体を調べます。ここまでは私も発想は似ていますので、結果的にも同じようなことをすると思います。ただし、その後がいけません。

その医師の説明はこうです。「食物依存性運動誘発アナフィラキシーは小麦が原因のことが多い」ということで、小麦の検査を行なったそうです。検査結果は小麦は陰性だったそうです。

ここで「やっぱり小麦が原因かもしれないから、小麦は除去するように」と言われ、それからずっと小麦を除去する生活が続いていました。私が親御さんから相談を受けてから、この方数年、学校では除去を続けています。弁当持参を強いられていました。

多分、この医師も小麦が陰性なので「おや、おかしいな」と思ったはずです。それでも強行突破で、「小麦の頻度が多いから、小麦に違いない」と思い、小麦の除去をず~っと指示していたのです。

今年になって、食後,運動した際に蕁麻疹のほか呼吸苦がみられ、別の病院で検査を受けます。前医よりはいろいろ検査してくれて、エビとカニがクラス4と高いことを指摘されます。過去に4回程繰り返していたアレルギー症状のエピソードの際の給食を見直してみると、エビが使われていました。

別の患者さんですが、11歳になったこの春、カニを食べてまぶたが腫れ、「たまたまかな」とまたカニを食べて更にまぶたが腫れ、カニアレルギーを疑い当院を受診したお子さんがいました。血液でも皮膚テストも陽性で、このタイミングでカニアレルギーを発症したと判断しました。このようにある程度大きくなってから、エビやカニのアレルギーを発症することもあります。

今回の患者さんも、エビを食べると唇が腫れるという症状が以前からみられており、運動するとより強めの症状を起こしてしまうのだろうと考えています。食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因として、エビやカニの甲殻類が2番目に多いことが言われており、小学校時代から食後に運動してアレルギー症状を起こしたり、今年になって起こしたアナフィラキシーもエビが原因しているだろうと私も思います。

エビとの因果関係もありそうで、検査の数値も高いので、さすがに「負荷試験」はやりづらいと思います。エビとカニは甲殻類で、抗原のソックリ度が結構高いため、エビとカニは除去し、もし食べてしまったら運動は2時間程度は避けるという指導をするだろうと思います。

ところが、“+α”の指導がありました。その前の小児科医から「小麦が原因だ」なんて、私から言わせれば根拠の薄いことを言われており、次の小児科医からもエビ、カニを除去し、更に小麦も除去して下さいと言われていたのです。ちなみにエビ、カニの検査をした時に小麦の検査も併せて行われ、小麦はクラス1でした。

そんなこともあり、この患者さんは小麦を除去する生活を続けていました。中学生ともなると運動欲求が強く、バスケットボール部に所属しており、運動は避けられない状況です。そんなこともあり、学校と親御さんとの相談で「弁当持参が望ましい」ということになっていました。

この話を聞いて、「エビとカニは分かるが、果たして小麦を除去する必要があるだろうか?」と思いました。小麦の除去が必要と言われているから、お母さんは毎日、毎日弁当を作らなければならないのです。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因は2位は甲殻類だと言いましたが、1位は小麦です。頻度で言えば、小麦が6割、甲殻類が3割です。私の経験が足りないのかもしれませんが、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの患者さんで、小麦もエビも両方とも原因であると確定したお子さんはいません。

母から当時医師から言われた言葉を聞いてみると、最初に対応した小児科医が、大した根拠もなく、ただの確率論で「小麦の除去をした方がよい」と言った可能性が高いのです。

敢えて言えば、“この程度”の根拠で、自分の中で診断を確定してしまっている医師は結構いるようです。違った場合、逆に多大な迷惑を掛けていることに気付かないのでしょう。

医師の言葉は“絶対”ですから、“絶対”だからこそ、なるべく根拠のあることを言わなければならないと思っています。医師は自分のお子さんが、“この程度”の根拠で病名をつけられ、不自由な生活を強いられていて、それが誤診だと分かったら、怒りだすと思います。

私は保育園の頃、「自分がして欲しくないことは、人にしてはいけない」と教わりました。残念ながら、そうしている医師はいるようです。

専門医であれば、「小麦は除去する必要がないかもしれない」と考え、運動負荷試験を行なうと思います。私もそうします。この辺は専門医しかできなことですが、この患者さんの住む地域では専門医はいません。“この程度”の診断をされている患者さんは、他にも大勢いるのではないかと危惧しています。

非専門医の中に、「アレルギー専門医に紹介して、無駄な除去をなくそう」という発想が欠如しているとしか思えないケースが多くみられます。

今回の患者さんは、私の目に留まったため、何とかしたいと思いますが、そうでない患者さんを何とかしなければという思いを強く持ちました。