昨日は、市内の中学校にエピペンの話をしに行ってきました。
この患者さんは中学校に通っていますから10代前半ですが、2年ほど前から診ています。
カルテをさかのぼってみると、赤ちゃんの頃に離乳食に卵を食べて皮膚症状がでたそうです。アレルギー検査で卵のほか、ミルクも陽性だったようで、それ以来卵と乳製品を除去していたそうです。
数年前に親御さんが自ら勉強して「食物負荷試験」の存在を知り、当時の主治医に相談したら、関東の有名なアレルギー専門病院を紹介されたそうです。ちょっと悔しいと思うのが、その時点で当院は上越市に開業しています。どうして当院に紹介してくれないのか不思議です。
もちろん当院で手に負えないような重症なら、私の方でしかるべきところに紹介します。上越の患者さんがいきなり関東の病院では、いろいろな面で負担が大きいと思っています。こういう地域での連携のなさが問題なのだろうと思っています。
当時は親御さんは当院の存在を知らないので、関東まで出向き、負荷試験を受けてきたそうです。卵は「判定保留」、牛乳は「除去継続」という判断でした。
その後、関東の病院まで行くのも負担があるし、当院の存在を知り、当院を受診して下さりました。
実際にいろいろ問診してみて、本人も親御さんも卵や乳製品を摂ることに罪悪感があると言ったら言い過ぎかもしれませんが、ものすごく抵抗があるようでした。幼児ならまだしも、こういう年代ではよくあることです。
今は完全除去が、より食物アレルギーを重症化させてしまう可能性が示されています。何とか少しずつ食べさせていきたいと考えました。本人の抵抗感もあったのですが、加工品を使い、励ましながら負荷試験をやることになります。
卵は卵焼きを何とか食べることができました。乳は食パン止まりです。ただ、以前は口にすると口の違和感を訴えていましたが、最近は訴えなくなってきました。
乳製品は牛乳やヨーグルトなど“濃いもの”は一切食べていないため、食べることでアナフィラキシーを起こす可能性もあります。当院にかかった頃は、本人が卵と乳を含む食品は一切口にしないため、エピペンを処方しようとは思っていませんでした。
そんな中、調布の死亡事故が起こります。同世代の女の子の死は患者さんにとってとても大きかったと推測します。お母さんも同じ気持ちだったようで、誤食時のお守りとして、エピペンを処方することにしました。
昨日の説明で、この辺の経緯も説明しています。学校側も誤食があった訳でもないのに急にエピペンを処方されて、驚いたと思います。その辺の説明もできて、よかったと思っています。
いつも話すような食物アレルギーの基礎知識のほか、誤食時の対応についても話してきましたが、「分かりやすかった」という声も聞かれ、ホッとしているところです。
学校側の立場からすれば「急にエピペンを預かってくれ」と言われ、狼狽しないはずはありません。いろんな意味で不安を抱えていたと思うので、少しは学校側のお役に立てたのかなと思っています。
私も曖昧だったのですが、実はこの学校の養護の先生は、既にエピペンを打ったことのある数少ない養護教諭のひとりでした。実は、小麦を食べて食物依存性運動誘発アナフィラキシーを起こした患者さんの通っていた中学校でした。
アナフィラキシーショックを起こし、運び込まれた学校医の診察室で意識消失まで起こしています。確か、学校医の対応に不安があり、養護の先生の勧めで当院を受診され、エピペンを処方していました。
ちなみに、エピペンを処方後に、学校で小麦は除去していたはずなのですが、アナフィラキシー症状を起こしたため、養護の先生がエピペンを打って下さり、大事には至りませんでした。
当時は、私も学校に出向き、職員の誰もがエピペンを打てるようにという啓発活動は行っておりませんでした。今回、ようやくその「リベンジ」が果たせたのかなと思っています。
学校の先生方は初めて聞く内容も多かったと思いますが、養護の先生にとっては知識の再確認になったのではないかと思っています。


