医療機関においては、世間はインフルエンザの予防接種真っ盛りだと思います。
当院の場合も例外ではなく、正直言って“稼ぎ時”なのですが、その前の週が小児アレルギー学会の発表があったため、休診でした。収益と学会、どちらを取るかと言えば、その医師により様々だと思います。少なくとも、当院は学会を選択した訳です。
前の週のしわ寄せということもあるのでしょうが、診療だけで100人に迫ろうかという受診があった上で、午後のインフルエンザの予防接種があり、疲労困憊でした。こういう日は平日の夜までの診療以上に疲れます。これからはこんなことが続くことが予想されます。
そんな中、26日(土)に新潟県の食物アレルギーの子をお持ちの親御さんや関係者にとって衝撃的なニュースが流れました。
K市の小学校で誤食によるアナフィラキシーショックが起こったのです。とは言え、起こったのは今年の8月末で、報道は約2か月遅れていました。
「誤食」というと食べさせるつもりはなく、アクシデントとして結果的に食べさせてしまったものを指すと思います。当たり前のことですが、「食物アレルギーのことを分かっていたけれど」というケースと「ほとんど理解していなかった」ケースもあり、今回は、残念ながら後者のようです。
その子は重い卵アレルギーがありました。学校ではアレルギーがあることは認識があったようで、低アレルゲンのケーキを頼むつもりが、“甘さ控えめ”のケーキが提供されたようです。あくまでカロリー控えめで、卵は控えていないことになります。
調布市の死亡事故では、重篤な牛乳アレルギーがあり、親御さんも自分の身は自分で守るようにという指導はされていたようです。それも小学校の高学年であれば可能となると思いますが、今回は小学校低学年の男の子でした。出されたものは、パクパク食べてしまったようです。
まもなくアレルギー症状が出るのですが、病気の勢いもあり、7月に小児アレルギー学会が提唱した「1つでも症状があればエピペンを使っていい」というレベルに達します。そう、このお子さんは私が主治医としてエピペンを処方していたのです。
ところが、連絡不行き届きでこの子がエピペンを持っていることすら、学校の部署に知らされていませんでした。調布市の死亡事故の教訓が、驚くほど活かされていないことに私も衝撃を覚えました。
当然の如く、エピペンは使われませんでした。いくら知識がなくとも救急車を呼んで救急搬送とというのは普通は思いつきます。ところが、電話で連絡を受けた親御さんが救急搬送をお願いしたにもかかわらず、渋り親御さんが迎えに来るのを待ったと言います。言語道断でしょう。
お母さんも慌てて病院に運び込みましたが、血圧も低下しており、医師から危険な状態だったと聞かされたと言います。間に合って良かったとしか、主治医として言うことがありません。
ここからはK市の教育委員会が対応するのですが、ご家族とは示談で話をしたようです。親御さんは主治医である私にこの件を伝えようとしましたが、市側は市の方から連絡し、研修会を進めていくことを約束したそうです。
ところがです、1か月半以上も私には何の連絡もありませんでした。定期通院で先日親御さんが当院を訪れて、その衝撃的な事実を伝えられ、K市のお粗末というか、誠意のない対応に驚いた訳です。
K市は当院からそんなに遠くないため、私が市の食物アレルギー研修会で講演もしていました。昨年も今年の5月にも行っていました。研修が活かされていないと言われても、反論できないはずです。
これも敢えて言いますが、市のトップである市長もこのことを認識していたようです。今のご時世でこれだけの失態をしておきながら、教育委員会がこの事実を公表せず、かえって隠蔽しようとしていたとすら感じてしまいます。何故そこまで言うかと言えば、私は教育委員会の方々とは面識があります。「こんなことがあったから、緊急で研修会を行いたい」と連絡があれば、診療を休んででも協力したはずです。
1か月半もの間、何もしなかったということは、また重症なお子さんが死なされかけてしまう可能性があったと言えると思います。市側は「対応が後手後手になって申し訳ない」とコメントしているようですが、この報道がなければ、第二のアナフィラキシーショックを起こしたのではないでしょうか?。
医療の世界でもなかなかオープンではなく、隠蔽体質があることは認めます。それは事実でしょう。教育の世界でもイジメや体罰で世論とは異なる見解を繰り返す教育委員会もありますよね?。
隠蔽しても何も良いことはなく、学校側はアレルギーやアナフィラキシーショックのプロではないため、起こったことは仕方ない部分もあると思うので、それは素直に認め、それを急いで改善していくことが子どものためになることに気付いて欲しいと思っています。


