先日、新潟県内のある街から引っ越してきた患者さんが当院を初診されました。
食物アレルギーがあり、牛乳はかなり重いアレルギーがあり、誤食によりアナフィラキシーを起こしたことのある患者さんでした。前医からエピペンを処方されており、それをみても専門医が適確にフォローしていく必要があります。
そんな状況で、上越市に引っ越しが決まったそうです。親御さんは、これまでの主治医に転居先へ紹介状を書いてもらおうと思ったそうです。
親御さんはある患者会に所属しており、当院が食物アレルギーの啓発に力を入れていることもご存知だったため、当院に紹介状を書いてもらえるものと思っていたそうです。その先生もアレルギー科を標榜しており、私とも面識があります。
ところが、アレルギーが専門でないけれど、上越市には後輩の小児科医がいるので、そこで薬をもらい、時々自分の元に通うように言い、紹介状は書いてもらえなかったそうです。
その先生も当院のことは知っているだろうし、なぜ紹介状を書いてもらえないんだろうと不思議に思ったそうです。
正直、私もその話を聞いて驚きました。面識もあり、私が食物アレルギーに力を入れているのはご存知のはずなのです。
その患者さんは卵と乳製品を完全除去するよう指示されていました。私は卵や乳を少量含む加工品を使って負荷試験を行なっており、少量でも何かを食べさせたいと思っています。
ちなみに、前の主治医に負荷試験の話をすると「県外の専門医に紹介する」と言われたいたそうです。新潟県内では、新潟市民病院の先生と当院が食物負荷試験に力を入れています。それもご存知なのに、なぜ患者さんは県外まで行かなければならないのでしょうか?。
ハッキリ言って、こういう連携のなさが新潟県のアレルギー医療をダメにしていると思っています。
本格的な免疫療法ならまだしも、負荷試験なら新潟県内でもできる同業者がいるにもかかわらずです。開業医という立場の私であっても、何らかの食材を用いて負荷試験はやれると思っています。アレルギーが専門でない小児科医でも、関東の有名病院に紹介状を書くということは耳にしており、なぜ県内の知り合いの小児科医にお願いしようとしないのか不思議でなりません。
患者さんにしても、県外まで行き、場合によっては入院した上で負荷試験を受けるのは、相当な負担が強いられます。当院では、外来で負荷試験をやっていますので、入院する必要はないのです。
私が県内の同業者に紹介しない理由を敢えて考えるとすると、「後輩には紹介したくない」というプライドくらいしか思いつきません。私が診ている患者さんが遠くに転居される時に、困るのは転居先に専門医がいない場合です。医療レベルが相当下がると、患者さんが気の毒だと思っています。
それでも日本アレルギー学会のホームページから小児科医で、アレルギー専門医の資格を持った医師を調べることができるので、そうやって専門的な医療を引き続き受けられるようサポートしているつもりです。
逆の立場で、重症な食物アレルギーの患者さんが上越市に転居される場合は、この辺にはアレルギーを専門とする小児科医は私しかいませんので、選択の余地はないと思うのです。
以前も、新潟の方から柏崎市へ患者さんが転居された時に、自分のところに通うよう指示した上で、それができないのなら「自分でかかる医者を調べなさい」と言った小児科医がいました。この先生はアレルギーが専門ではないので、新潟まで患者さんが通うメリットが医師側にはあっても、患者さんには全くないのです。
冒頭の患者さんもこの患者さんも、結局は当院に来て下さっています。この分野ではこだわって少しは勉強しているつもりですので、前医の言っていることが専門医の考え方と異なる場合は、修正させて頂いております。
延々と「インタール」という抗アレルギー薬を飲むよう指導されていましたが、これは食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎にしか適応がなく、誤使用のようです。また、この薬を飲んでいたからと言って、誤食時のアナフィラキシーショックも防ぐことはできないと思います。
牛乳アレルギーについては微量でアナフィラキシーを起こしていますので、負荷試験はすぐには難しいように思いますが、卵は食物負荷試験の適応で、どれくらい食べられるか評価すべき状態でした。そして新潟県外の病院を受診しなくてもいいくらいの状況でした。
親御さんは、当院を自ら選んで受診して下さった訳ですから、かなり時間を掛けて、誤った認識は修正するように話をしたつもりです。もちろん、正しいところは修正する必要はありません。
医者の世界は、様々な問題があり、それは場合によってはくだらない理由のこともあるのですが、スムーズに専門医に紹介されないことがあります。一番大切なのは、患者さんの健康であるはずで、別の理由でそこがブレては患者さんへのデメリットが大きくなってしまいます。
なお、この患者さんは上越市内の小学校に最近転校しています。学校で誤食によるアナフィラキシーを起こしており、学校の先生に注意喚起するためにも、この子の通う学校にエピペンの説明に行かなければと思っています。


