昨年は、新発田市や三条市といった県内でも大きな街で食物アレルギーの話をする機会を得ました。
当院から100キロ以上離れていますが、声を掛けて頂いて有り難く思っています。私自身は、別に遠かろうが、近がろうが関係ないのですが、近いところは既に話しているところが多いようです。
私の話を聞いて「食物負荷試験」の存在を知ったという方も多いようです。これだけの情報化社会において、負荷試験の存在が広まらない現状は不思議でなりません。
食物アレルギーのことをよく理解していない医師が少ないことも大きいと思わざるを得ません。数値で高いものを「除去しておきなさい」と言えば、それで済むからでしょう。あと、患者さんの方も、医師の言うことは間違いないと必要以上に信用していることもあると思っています。
これまで私の診てきた患者さんから前医の話を聞くのですが、ガイドラインを無視したかのような発言が多く、ガイドラインが全く尊重されておらず、各医師が独自の“ガイドライン”で診療しているように感じます。これでは新潟の医療レベルも上がってこない訳です。
先日、三条市から10代の患者さんが来られました。甲殻類、軟体類、貝類をずっと除去しており、私の講演を聞いて、除去が正しいのか疑問に感じて相談に来られました。
以前の検査では、これらの魚介類はいずれも数値が高かったのですが、今回新たに検査を行なってみています。エビ、カニがクラス5と高く、イカ、タコもクラス4程です。
専門でない医師がみれば、負荷試験なぞ“自殺行為”なのかもしれません。しかし、調布の死亡事故以来、親御さんの方も微量でアナフィラキシーを起こすのか、そうでもないのかを親として知っておきたいと考える方も少なくないように感じています。
ですから、負荷試験をして症状が誘発されても、学ぶことは多いのです。そして必要ならエピペンを持ち、いざという時に備える姿勢も大切です。逆に、そこまでやって初めて「子どもを守る」と言えるのかもしれません。
実は、皮膚テストもやっており、アレルギー検査といずれも陽性なので、正直言って負ける確率も高いと思っていました。私は「負けるケンカはしない」のがモットーなのですが、先ほど述べたようなある程度踏み込んだ負荷試験も避けられないこともあるのです。
当初は血液、皮膚ともに数値の低いアサリで負荷試験をしようと思っていたのですが、より口に入る可能性の高いタコでやろうということになりました。口がイガイガする、口腔アレルギー症候群のような症状が出ることもあるようです。
少量から始めて、「口がイガイガ」なんて訴えもなくはありませんでしたが、食べ進めると何と所定の量を完食してしまいました。
本人が負荷試験に際し、一番緊張しており、最初は言葉少なでした。もちろん、親御さんも同様だったと思います。負荷試験が終わり、診察室に入ってもらった時に「意外にも食べられたね~」と言うと「そうですね、ビックリです」と親御さんもそう返します。そこで本人、親御さんとがっちり握手をしました。
当院の場合、低年齢の卵、乳、小麦は「絶対何か食べさせてやる」という思いでやっていますが、年齢が上がり、しかも甲殻類、ソバ、ピーナッツだとリスクも高いでしょうから、あまり積極的でなかったのですが、白黒を付けたい患者さんがいれば、それに応えるのがプロだろうと思い、取り組むようにしています。
そしてこんな結果になると、より同様なケースでも負荷試験に挑戦せねばと思ってしまいます。この春に修学旅行があり、行き先は大阪だそうです。多くの方(?)が頭に浮かぶのがたこ焼きでしょう。たこ焼きを食べさせてあげられそうです(笑)。
今回の負荷試験で、ご両親が同伴されましたが、ご家族に一気に光が差し込んだのだろうと思っています。一生除去しなければならないものと思っていたのかもしれませんが、光明が見えたのだろうと思います。
多くの医師がリスクを避けたいがために、負荷試験をやろうとしないのだろうと思います。私はこういう経験を踏まえ、負荷試験の深みにいい意味でハマってきたのかもしれません。


