小児科 すこやかアレルギークリニック

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2014年01月16日 更新

昨日も水曜の午後ということで、出張がありました。

某市のある園に行ってきたのですが、そこにはつい先日エピペンを処方した患者さんが通っています。

重症な食物アレルギーのお子さんなのですが、何か食べさせられないかと親御さんの一生懸命に加工品を使った負荷試験をやってきたのですが、厚い壁にはね返されてきたという感じです…。

卵と小麦アレルギーがあるのですが、いずれも微量で症状が誘発されてしまいます。蕁麻疹のほか、腹痛や嘔吐もみられ、抗アレルギー薬だけでは対応できなかったこともありました。

エピペン処方を決定づけたのは、先月のプリッツを使った負荷試験でした。これは微量の小麦を含むのですが、1本はだいたい15センチくらいでしょうか。それを2センチ食べさせたところで、蕁麻疹が出てきたのです。

小麦をもっと少なく含むお菓子を食べさせる努力はしており、わずかでも食べるようにしていたつもりですが、さすがにたった2センチで症状が出るようだと、誤ってもう少し濃い小麦を食べてしまえば、蕁麻疹だけでは済まないだろうと思った次第です。この子を守るためには、エピペンを処方するしかないと思ったのです。

卵も少ない量でアレルギー症状が出ることを確認しており、こちらも卵そのものを誤って口にしようものなら、ショックを起こし兼ねないと考えています。小麦1種類だけでなく、卵もアナフィラキシーショックを起こし得るため、これまでこの園では一生懸命対応して頂いていたのですが、万が一に備え、エピペンを預かって頂くことにしました。

この日は、16時半開始だったのですが、保護者会の講演という形でした。食物アレルギーで困っている親御さんや、知りたいと思っている方々に私の話でよければいくらでも話したいと思っていましたので、良い機会を与えて頂いたと思っています。

1時間半みっちりと話させて頂きました。その後、質問も受けました。この街ではほとんど負荷試験が行なわれておらず、よくあるパターンですが、かかりつけ医から家で少しずつ食べるよう“指導”されていたようです。“”(カッコ)の意味をお分かりの方も多いでしょうが、本来食物アレルギーを疑われる場合は、医師が目の前で負荷試験を行ない、「これくらい食べられますよ」と提示、指導して、家で食べてもらうのが通常なのですが、専門でない医師はこういう言い方をします。お子さんに危険な目にあわせないようにするのが、プロであり、小児科医だと思っています。

私としては、保護者会に参加した親御さんと一緒に園の職員にも聞いてもらうつもりだったのですが、講演が終わり、18時を過ぎると会場に続々と園の先生方が入って来られるではありませんか…(汗)。

18時までは保育の業務があったためで、よりエピペンの使い方を知っておいて頂きたい園の職員の方々へもう一度話す必要がありました。そのままダブルヘッダーの第二試合に突入です。別にエネルギーも有り余っていましたので、「望むところだ」って感じでした(笑)。

結局、また1時間半しゃべり続けました。エピペンの使い方の実技も一緒に行ないました。全てが終わったのが20時過ぎでした。私としては、充実した1日だったと思っています。

ここで苦言と言いますか、この園での講演の経緯をお話ししなければなりません。

実は、この子が重症なため、エピペンを持った方がいいという話は以前から出ていました。当然主治医として私が話に行く必要があるのですが、それを伝え聞いたこの市の保育課が園長に「田中を断れ」と言っていたそうです。その理由は、この市でもエピペン研修をやっているからというのが理由なようです。

理解のない行政は往々にしてこんな意味不明なことをいう場合がありますが、主治医を断る権利があるのでしょうか?。園の先生方もプリッツ2センチの話はインパクトが大きかったようで、身の引き締まる思いだと言っていました。こういう話は主治医でしかできなく、エピペンの取り扱いの他に、主治医でしか話せない詳細な話を園の先生方に知って頂きたかったのです。

なにやら正しい知識が広まって欲しくないというような態度が問題だと思っています。行政も食物アレルギーに詳しくない訳なので、普通拒絶することは有り得ず、これまでいくつもの行政担当者とかかわってきましたが、こんなことは初めてです。同業者なら嫌がるかもしれませんが、行政だと理由が分かりません。食物アレルギーに理解を深め、市内の子どもを守ろうとしないと言われても、仕方ないはずです。

市に妨害されてはやりづらく、市長に改善を求めるメールを出すことになるのですが、担当課から「田中先生を断ったことはない」と事実と異なる返事をしてきて、呆れるばかりです。実は、この市では私への拒絶は過去に何度も繰り返されています。

行政は市民のために汗を流すものと思っており、食物アレルギー対策は子どもの命にかかわることですので、どの行政にとっても大切と考えています。実際、県内の多くの行政が真剣に取り組んでいますが、こんなところも存在することが残念でなりません。

なぜ私がこんな仕打ちを受けなければならないか知りたいと思っても、担当課はまともな返答すらできず、市長にメールをしても市長から返事も頂けない状況です。行政が相手だと、一個人ではテコでも動かないし、捻り潰されてしまいそうです。ちなみに、この市は誤食事故が少なくなく、このままでは事故が減らないため、専門医の知識や技術は不可欠なはずです。

私は嫌われようが食物アレルギーの正しい知識を持って頂くべく、働きかけていこうと思っています。行政の対応、市長や担当課の無理解には呆れるしかありませんが、患者さんや現場で情報不足で困っている園や学校関係者は藁をもつかむ思いで、正しい情報を得たいと思っているからです。

通常、私の方から講演の打診をすることも多く、ある程度の働きかけは大切だと思っています。園や学校側は、お医者さんがわざわざ来てくれるなんて思ってもいないからでしょう。いや、逆に今回のような重症な食物アレルギーの子がいて、エピペンを処方された場合、主治医として患者さんを守るために、私の方から「いざという時はエピペンを使って下さい」とお願いに行かなければなりません。そういうつもりで、出向いています。

妨害が入ろうが入るまいが、食物アレルギーの子どもを守り、園や学校側に正しい知識を持って頂く努力を2014年も続けていく覚悟です。