少し前の話ですが、当時2、3歳だったお子さんがイクラを少し食べて、具合いが悪くなったそうです。
当時は新潟市にお住まいで、急患センターを受診されたそうです。小児科医が対応してくれる県内では唯一の施設で、市民の健康を守ってくれる有り難い施設です。
ただし、食物アレルギーだと話が違うようです…。
この患者さんは、イクラを食べて、蕁麻疹が出たそうですが、グッタリして一時呼びかけに反応しなかったそうです。かなり危険な状況と考えられますが、幸いにもじきに回復し、意識を取り戻します。多分、アナフィラキシーショックが起き、血圧が落ちたためにそういう状況に陥ったと考えています。
よく芸人が緊張する場面で「アドレナリンが出た」と言います。アナフィラキシーショックの緊迫した場面でも、当然アドレナリンは出ます。アドレナリンは人間誰でも体内にある物質なので、要は“自前”のアドレナリンでカバーできたのだと思っています。
数分、意識がなかったようですが、救急車の来る頃には意識は戻り、身体に広がった蕁麻疹も急患センターに着く頃には軽快したそうです。
医師からすれば、一見するとこんな状況で「何で連れてきたの?」と思うかもしれませんが、よくよく話を聞いてみると、アナフィラキシーを起こし、意識消失まで起こしたことが判明するはずです。
私であれば、原因は何か?、アナフィラキシーショックかいなか?などを確認し、かかりつけ医の名前を聞いて、専門でないなら「ここまで具合が悪くなったのだから、翌日アレルギー専門医を受診して、原因の検索と誤食時の対応をよく聞いて下さい」と話したと思います。また、低年齢で体重も満ちていないため、エピペンの適応にはならないと思いますが、誤食時の対応についても説明したことでしょう。
いくら人口の多い市とはいえ、アレルギーの専門医となるとほとんどいないのが現状です。当日の担当医もそうではなかったようです。いや、名前も聞いていませんが、対応が専門医のそれではなかったからです。
虫の居所が悪かったからかもしれませんが、「こんな低年齢に生ものなんて食べさせて」と散々叱られたそうです。
かなり危険な状況だった訳だから、アナフィラキシーショックの説明をしなければいけないし、原因検索や誤食時の対応を話すべきです。しかし、そういう病態についての説明は一切なかったそうです。
そもそも、食べさせてしまったことは仕方がなく、それをウジウジと指摘されてもしようがありません。二度と危険な目に遭わせないために前向きで、建設的な指導が必要だったはずです。
その話を聞いて、食物アレルギーの患者さんを診た時の専門医と専門でない医師の考え方の差がそういうところにあるのかと思いました。私からすれば、かなりズレてると思います。
生命の危機的な状態に陥った患者さんは、専門医が診るべきと思っていますが、専門でない医師は肝腎のソコをみていないので、だから専門医に紹介されることもないのでしょう。実際、当院はかなり専門的な医療を行なっていますが、周囲の小児科からの紹介はほぼありません。せめて専門医に紹介すべき患者さんを当院に回して欲しいのですが、それがないのは仕方のないことなのでしょうか?。
新潟市から上越市に引っ越して来られ、友人の勧めで当院を受診されたそうです。それはママ友だったのですが、ママ友から「食物負荷試験」の話も初めて聞いたそうです。食物アレルギーを持っていれば、「食物負荷試験」のことは医師が説明しなければなりませんが、それすらなかったようです。
更に、親御さんはそれ以来イクラは除去してきましたが、誤食時の対応の説明もなく、内服薬も処方されていませんでした。誤って食べてしまえば、また生命の危機に陥っていたかもしれません。一度でもそういうことがあれば、また起こす危険があります。
当院では、体重が満ちていたため即刻エピペンを処方しました。既に家では万が一に備え、打てる状態にしています。
こう見てくると、「知らぬが仏」というか、「知らぬが“地獄”」で、危険な橋を渡ってきた様子が伺えます。
残念ながら食物アレルギーの患者さんは問題意識を持って当たらないと、“かなりズレた”指導をされ、誤食時の対応もどうしていいか分からず、パニックに陥ってしまうかもしれません。子どもを守る準備すらできていなかった訳です。
親御さんは、子どもを守るために専門の小児科医に診せて、いざという時に適切に対処できるように準備しておかなければいけないことがご理解頂けたのではないかと思っています。


