小児科診療でアレルギーは結構重要です。
いまはインフルエンザが流行しており、どの小児科も“それどころじゃない”のかもしれませんが、アレルギーで困っている患者さんはとても多いようです。
慢性の経過を辿るため、すぐには良くならず、病気を理解した上で「病気とつき合っていく」というスタンスが大切だと思っています。
いつも言っているように、ぜんそくやアトピー性皮膚炎が“誤診”されていて、まともに治療されておらず、だから良くならないという医師側に問題のあるケースもかなり多いと感じています。この場合、咳で苦しくなったり、皮膚をかなり痒がったりするので、黙殺はできずに悪化の都度、医療機関に駆け込むなんて対応をしている患者さんもいます。
一方、食物アレルギーは違うと思っています。諦めてしまっている、のです。先日、来られた患者さんもそうでした。
もう中学生でしたが、エビやカニ、イカ、タコをずっと除去していました。確か、医師からアレルギー検査の数値が高く、除去を指示されていたようです。
食物アレルギーは食べなければ何も起きず、中学生にもなると、ある程度食べないことに慣れてしまうので、大して困らないと感じている方も多いと思います。しかも、甲殻類などは大人も原因のことが多く、治らないものとして捉えられています。
親御さんは「うちの子はエビの形や臭いが嫌いで」とおっしゃいます。申し訳ないですが、私はそれは違うのではないかと思っています。エビを食べないよう子どもに指導していたら、形や臭いさえも嫌いになってしまったのでは?と考えています。
この患者さんは、ずっと甲殻類や軟体類を除去しており、ある意味あまり困っていませんでしたが、どこかで「このままでいいのだろうか?」という思いもあり、当院に思い切って相談に来られたようです。
私の仕事は「なるべく食べさせる」ことであり、上越では誰一人として「食物負荷試験」をやっていないため、多くの医師が患者さんに食べさせることを諦めてしまっています。ましてや、「中学生」、「甲殻類」と聞いただけで「食べなきゃいいじゃん」と思ってしまうのだろうと思います。
私は、この土地が「数値が高い」=「除去」という指導が定着していることを知っているので、まず最初の医師が下した診断から疑っています。この患者さんの場合も「本当にエビアレルギーなのだろうか?」と。そもそも人生でエビを食べたことがないので、エビアレルギーという診断すら正しいのかどうか分からない状況でした。
ちなみに、血液によるアレルギー検査はエビがクラス2、カニやイカ、タコはクラス0でした。これをみて「やっぱりエビにアレルギーがある」と思う方も多いかもしれませんが、そう結論づけるのは負荷試験をやってからでしょう。
私が諦めたら、地元のすべての患者さんが食べることを諦めなければならないというくらいに思っているため、この患者さんにエビを使って負荷試験をやろうと思いました。
もちろん、何かあれば私の責任ですから、こちらも緊張します。しかし、一番緊張しているのは、“形や臭い”さえも嫌いな患者さんです。
蒸したエビを5尾持ってきて頂いたのですが、お母さんの配慮で別に5尾をみじん切りにして味を付けてきたものも持参して下さいました。負荷の食材は、本人の希望もあり、そちらを選択しました。
まず小さじ半杯から負荷しましたが、本人は口の違和感を訴えます。食物アレルギーの症状かもしれませんが、気持ち的なものの可能\性が高いと判断しました。形はみじん切りになっているため、「臭いが」とも言うのですが、そこは頑張ってもらうしかありません。
負荷を続行すると、何とあっさり5尾完食しました。負荷試験後、恒例のがっちり握手をしました。
この結果からすると、エビアレルギーが治ったのかもしれませんし、もともとエビアレルギーはなく、除去する必要もなかったのかもしれません。そうだとすると、医師の誤った判断で、十数年も除去し続け、エビの形も臭いも“嫌いにならされていた”となってしまうのかもしれません。
いずれにしても、食べられて良かったと思っています。この子の中に定着してしまった苦手意識を、食べて何ともないことを確認しつつ克服していって欲しいと願っています。
ここで悔しいのが、「エビアレルギーがある」と診断してしまった医師にこの結果を知らせられないこと。食物アレルギーの専門でない医師は、すぐに除去、除去と言い、ともすると食物アレルギーの“患者”を造り続けています。自分が誤った指導をしてしまったことに歯止めがかからない状況です。
私ひとりで負荷試験をやって解除しても、多くの医師が“患者”を造り続けては、なかなか追いつかないということになってしまいます。今回のケースも食べられて、本当に嬉しく思っています。しかし、なかなか思うように前に進めない状況を歯がゆく感じています。


