新年度が近づくと、アレルギー診断書の記載を求めて受診される方が増えます。
昨日も述べたように、「かかりつけ医」がお子さんが食物アレルギーで困っていることを一切知らず、当院に食物アレルギーでかかっていることを把握していないことはよくあるようです。
根底には、食物アレルギーで相談に乗ってもらえないという思いがあるようです。しかしかかりつけ医は、患者さんをできるだけ全人的に診るべきだと思っています。ましてやアレルギー科を標榜するのであれば、「食物負荷試験」をやるのは当たり前でしょうから、かかりつけ医で負荷試験をやってもらうことを基本に考えたいと思っています。
多くの医師が、検査の数値だけで食べられる・食べられないの判断をしており、それをもって食物アレルギーを診ているつもりになっているようで、これは正しいとは言えません。「食物負荷試験」が基本なのは専門医の間では常識になっています。当院へは紹介状を持って受診してもらうようにしなければ、上越の、ひいては新潟県の医療レベルを上げることはできないと思っています。
当院は食物アレルギーに力を入れているつもりですが、先日、受診された患者さんの話を聞いて、「ここは何処?、私は誰?」と自分を見失いそうになってしまいました(大汗)。
まずは約4年前のものですが、アレルギー検査の結果をご覧下さい(添付画像)。
卵がクラス4ですが、ピーナッツがクラス6、魚卵やソバも高く、エビも治りづらいアレルゲンとされており、クラス1であっても「大丈夫かな」という不安は付きまとうと思っています。
4年ぶりに当院を受診されました。結果を見れば、治りづらいアレルゲンが多く、まだ除去を継続しているものと思いますよね?。
「いま除去しているものは何ですか」と聞いて驚きました。卵料理だけ除去しているのだそうです。思わず、「えっ、ピーナッツも他のナッツ類も魚卵も!?」と聞き返してしまいました。
4年前に言ったことは覚えていませんが、除去すべきと説明していたはずです。それ以来、当院に来なくなり、多分親御さんの食物アレルギーの意識が薄れ、あれもこれも食べさせていたようです。
日本の第一人者の先生も、これでは「ピーナッツは危険だから食べない方がいいよ」と説明しているはずです。しかし、現実には食べているのだそうです。
当院では卵がクラス6でも卵焼きを何人も食べさせており、卵や小麦は数値が高くても食べられるということはよく聞くのですが、ピーナッツでしかも数値がこんなに高ければ、食べることは困難だと思っていました。いや、最近の数値は検査していないので、実は低下していて食べられるようになっているのかもしれません。
最近、経口免疫療法、つまり“食べて治す”治療が注目されています。いわゆる少しずつ食べてみる、というものです。ピーナッツなど少しずつ食べることで、食べられるようになったのかもしれません。
この場で「数値が高い」=「除去」というのは正しいとは限らない、負荷試験をやってみないと分からないと繰り返し言っています。卵、乳、小麦といったさまざまな食材に含まれている3大アレルゲンは、特に当てはまると思っています。
ところが、ピーナッツやソバ、甲殻類などアナフィラキシーを起こしやすく、大人になっても治りづらいアレルゲンは、「数値が高い」=「除去が基本」と捉えていました。もしかすると、こういうアレルゲンであっても「少しずつ食べる」というのが基本で、除去していると逆に治りづらくしているのかもしれないと焦ってしまいました。
患者さんに良かれと思ってやっているのに、私のやっている指導が逆効果なのかもしれないと自信をなくしてしまいました。最近は、食物アレルギーは完全除去している方が、かえって食べられなくなってしまう可能性が指摘されています。
もちろん、個人差はあるでしょう。今回のケースは極めて稀な例外かもしれません。ただ、ナッツ類やソバ、甲殻類という一般的に治りづらいとされるアレルゲンであっても、治るという期待感が持てるということかもしれません。
専門医の端くれとして、こういったアレルゲンであってもある程度は負荷試験を進めていく必要があると思い知らされました。どの患者さんにも当てはまるとは思いませんが、一生食べられないと思っている患者さんに一筋の光明を見出して頂きたいなと思っています。



