先日、前日に呼吸困難を起こし、夜間救急外来を受診した10代の患者さんが当院に相談に来られました。
季節の変わり目ということで、ぜんそく発作を起こしたようです。患者さんは、苦しいと言うことで病院に駆け込んだのですが、気管支を開く薬を吸入され、改善して帰ってきたそうです。
過去に何度もゼーゼーしており、当院を初めて受診された際にゼーゼーしていませんでしたが、ぜんそくと診断できる状況でした。
実は、1年前にN市から転居され、上越に来られてからは他院に行っていたようです。つまり最低でも小児科医2人が関わっていながら、ぜんそくとは診断すらされていませんでした。転居以前は長くN市の小児科にかかっていたようです。
私の印象では、低年齢で気管が細い方が典型的な症状が出るように思っています。お子さんが小さい頃はよくゼーゼーしていたようです。ゼーゼーを繰り返すのがぜんそくの定義であり、にもかかわらず「ぜんそくの疑いがある」程度にしか言われていませんでした。
親御さんの話では、「アドエア」という吸入薬も出されていたこともあったようです。ぜんそく治療は、小さいお子さんは内服薬で治療し、症状を抑えきれなければ、「フルタイド」などの吸入薬で治療し、更に上の薬として「アドエア」が位置づけられています。
ぜんそくとも診断されておらず、大した説明もなく「アドエア」が処方されるのは、おかしいと思います。「アドエア」は重症の小児ぜんそくの治療薬なのですから。
小児ぜんそくのガイドラインにも、「過剰治療に気をつけなさい」というようなことは書いてあります。そもそも、診断できない医師がホイとアドエアのような薬を処方できてしまうことが納得できません。専門医の紹介する形にいいと思うのですが、とにかく多くの医師が「アレルギーくらいオレでも診られる」と思っているように感じており、アドエアのような薬でさえも安易に出されているケースも見受けられます。
ぜんそくもアトピー性皮膚炎も「ステロイド」を吸ったり、塗ったりして治療する訳ですが、いずれも「ステロイド」ということを理解して治療に活かすべきでしょう。ぜんそくは強い薬をホイと出すし、アトピー性皮膚炎には症状に見合わない弱い薬が往々にして処方されているようです。
多くの専門医が認めるところですが、小児ぜんそくの治療も吸入ステロイド薬がよく使われるようになり、外来通院だけで症状を改善させられるようになってきました。これまで入退院を繰り返すような重症なお子さんも、ほとんど入院しなくなるようにできるようになったということです。
この親御さんが前医を信じて疑っていなかったのは、その医師のお子さんにもぜんそくがあることを聞かされていたこともあるようです。父親が当直の際によく発作を起こしていたそうで、ぜんそくというのはストレスも要因になると言っていたようです。
ぜんそくはストレスの影響も受けてしまうことは否定しません。ただ、当直の度に発作を起こしていたのは、敢えて言えば日頃の治療が不十分だったこともあるのだろうと思っています。今は、それくらい治療をしっかりすれば、多少のストレスがあろうが、発作を封じ込めることができるくらいにはなると考えています。
自分の子は、小児科医である父が治療するのは仕方ありませんが、人様のお子さんは、発作を繰り返すようなら専門医に紹介するなど万全の体制を取るべきでしょう。
残念ながら小児ぜんそくは、大人に持ち越す可能性もあります。極めて重症なら相当に難治であり、治療は困難な場合もありますが、そうでなければ、できれば子どものうちに治しておきたい。そのためにはキチンと診断でき、病状に見合った治療を選択すべきです。それができないのなら、専門医の紹介して欲しいのですが、これまたそういう紹介してもらった経験は、少なくとも私にはありません。
ぜんそくは、繰り返しゼーゼーいって呼吸困難を起こすので、診断をつけることや治療が十分かどうかを判断することはさほど難しいとは思いません。頻繁にゼーゼー言って救急外来に駆け込むようなら、治療不足は明白です。
今回の患者さんは、私の見立てでは、もちろんぜんそくがあります。小さい頃は明らかに治療不足でした。というか、典型的な症状を繰り返しても“ぜんそくの疑い”としか言われておらず、医師の知識が不足していたということでしょう。ぜんそくは成長とともに治ろうとしているのに、治り切っておらず、今回の呼吸困難につながったのだろうと思っています。
今更言っても仕方ありませんが、小さい頃から私なり専門医が診ていれば、結果が変わっていたかもしれません。それは確かめようがありませんが、その時点でベストと思える治療を選択し、発作を繰り返さないようにするのが、ぜんそくを持つお子さんへの小児科医の愛情だと思うのです。
その辺りのことを親御さんに説明しました。親御さんは悪いとは思っていません。ぜんそくと診断し、長期間安定した状態を作ることで、ぜんそくを治りやすくするというのがぜんそくの対処法ですが、ぜんそくがあることすらハッキリさせられていなかったので、親御さんは反省のしようがないと思います。
「症状が治まると、つい治療を自己判断で止めることもあった」とおっしゃっており、反省しきりでしたが、やはりぜんそくがあり、継続治療が必要であると説明を受けていなかったので、医師に責任があると思っています。
繰り返しになりますが、自分のお子さんへの過小治療は仕方ないかもしれませんが、人様のお子さんは、ミスは許されないという緊張感を持って対応しなければいけないと肝に銘じようと思っています。


