小児科 すこやかアレルギークリニック

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ハイリスク、ハイリターン
2014年06月27日 更新

先日、サクランボの負荷試験をやりました。

この患者さんは、昨年サクランボ狩りを家族で楽しんだお子さんでした。普通に考えると、「そんなことする必要ないじゃん」と思うと思います。

実は、少し前に“事件”が起きました。

学校に植樹された桜の木があり、サクランボの実がなったのを子ども達が食べた時のことです。その患者さんだけ、まもなく両まぶたが腫れ出し、養護の先生が慌てて当院を受診させて下さいました。

左右の上下まぶたが赤く腫れており、給食の後だったこともあり、何らかの食物アレルギーが考えられました。

変わったものを食べたかどうか聞いてみましたが、先程のサクランボと細いタケノコが可能性として考えられました。ここで問診が大切になります。サクランボやタケノコを普段食べているかという確認が必要です。

先程述べたように、サクランボは大好きで、サクランボ狩りに行くくらいですから、相当好きなのでしょう。ちなみにうちの子はイチゴが大好きなので、今年は4~5回イチゴ狩りに行きました(笑)。

この学校は昨年秋から2回伺って食物アレルギーの講演をしています。1回は父兄会の講演、もう1回は私がエピペンを処方している患者さんが通学しているので、エピペンの講演です。

そんなこともあって、養護の先生が大変気を利かせて下さいました。被疑食品を持参して当院に同伴して下さったのです。私の講演活動が少しは役に立ったようで、嬉しい限りです。

それを負荷試験の材料に使う訳ではなく、プリックテストという皮膚テストに使うつもりでした。皮膚テストの結果を画像に示します。向かって左がサクランボ、右がタケノコです。特にサクランボは血液のアレルギー検査の項目にないため、皮膚テストは有効な検査法となります。

ちょっと分かりづらいかもしれませんが、左側は蚊に刺されたようなやや白く盛り上がった感じが見てとれると思います。サクランボの方が直径15ミリ近く腫れています。タケノコの方は腫れてはいません。

実は、この皮膚テストをしながら、親御さんに病状説明をしていました。この皮膚テストは15分後に判定するのですが、説明しながら患者さんのテスト部に時々目をやっていました。

よくテレビで、例えば種から芽が出て双葉が開く様子をビデオの早送りで流すことってありますよね?。こんな経験は初めてなのですが、この子の皮膚のサクランボの検査したところが、チラチラ目をやるたびに大きくなっていったのです。ホント、まるでビデオの早送りのようでした。

皮膚テストだけで食物アレルギーの確定診断とはなりませんが、タケノコが全く腫れず、サクランボがこれだけ大きく腫れれば、サクランボが今回の騒動の犯人であると強く疑えることになると思っています。

ここで考えなければいけないのが、今回のサクランボが特殊で、また今年もサクランボ狩りに行ってもいいかどうかを考える必要があります。多分、食物アレルギーに詳しくない医師ならば、サクランボは完全除去と言い放ってしまうことでしょう。

私は、それくらい好きなものを「ホントに除去すべきなのか?」と悩みます。確かにこれまで食べていた果物が、急に食べられなくなることってあることなのです。

例えばキウイもゴールドとグリーンのものがありますが、ゴールドは食べられるけれど、グリーンは食べられないという患者さんも結構います。サクランボも同様に考えるべきでしょう。

となると、普通のサクランボさえも食べられなくなったのか、それとも食べられるのか判断する必要があります。実は、医院に駆け込んだ当時、アメリカ産のチェリーしかスーバーに出回っていませんでした。仕方ないので、それを買ってきてもらい、それで皮膚テストをやったら、そこまで大きく腫れなかったのです。

アメリカ産のチェリーは食べないそうで、今回本人の好きな「佐藤錦」が出回るのを待って負荷試験をやることにしました。

もし症状が誘発されたら、サクランボ全般を除去しなければならないと判断せざるを得ませんし、症状が出なければ、特殊なサクランボのみ食べないようにすればいいという判断をしようと思いました。

こちらも下手に食べさせて強い症状を起こしてもらっても嫌なので、少量から食べさせます。佐藤錦は10個持参して頂きました。結果は、陰性。

今年もサクランボ狩りに行けそうです。ただ、私は詳しくないのですが、残念なことにそろそろサクランボの収穫期も終わるのだそうです(汗)。

負荷試験は、結果はフタを開けてみなければ分からず、私の方もリスクを背負うことになるのですが、“ハイリスク、ハイリターン”じゃないですが、リスクを背負った分、得られる喜びも大きいと思っています。

「サクランボは危険だから食べるな」と言っておけば、私はリスクを負うこともなかったでしょうが、少なくとも私にはモヤモヤが残ります。「医師として正しい判断をしたんだろうか?」と思い悩むのです。

多分、多くの医師が心の痛みもなく、「サクランボ除去」と言ってしまいそうなケースだろうと思っていますが、とりあえずは私自身もスッキリしました。

医療って、患者さんのためなのですが、一部は自分自身のためだと思っています。“心の痛み”を引きずることはなさそうで、それを嬉しく思っています。