小児科 すこやかアレルギークリニック

クリニックからのお知らせ

病院からのお知らせ

水風船
2016年02月29日 更新

まもなく3月。

4月になれば、桜祭りが全国で開催され、出店が並びます。そこに水風船が売られたりしますよね?。小さな風船に水を入れ、口を輪ゴムで縛った、アレです。

最近、エピペンの説明をする時に、例えとして水風船を使っています。と言われても、ピンとこないでしょう。

アナフィラキシーショックの場合、亡くなるケースもあるのですが、死亡原因は「窒息」と「血圧低下のいわゆるショック」とされます。「窒息」とは、のどの奥が腫れて、酸素が体に入っていかないもので、物騒な言い方ですが、首を絞められ続ければ、どうなるかは想像に難くないと思います。

水風船は、もう一方の「ショック」の説明に使うと分かりやすいかなということで使っています。

水風船も買ったばかりの状態では、プリプリして良い状態なのですが、放置すると水が抜けてブヨブヨになってしまいます。

風船の中の水の圧力を想像してみて欲しいのです。プリプリならば、成人の血圧になぞらえてみて120mmHgあるとすると、ブヨブヨになると例えば80mmHgに低下します。もうフラフラの状況かと思います。

このブヨブヨの状態を回復させるためにはどうしたらいいか?。水風船の中に水を補充してプリプリに戻す方法もあるでしょうし、もう一つは、たるんだ風船のゴムの部分をつまみ集めれば、風船の大きさは若干小ぶりになるかもしれませんが、それでも中の圧力を回復させることができますよね?。

アナフィラキシーショックの場合、血管内の血液が減少して、血管内脱水を起こします。血圧が保てなくなり、危険な状態になってしまいます。処置として、ひたすら点滴で血管内に水を入れる方法があります。ですから、たるんだ水風船に水を足して、元のプリプリの状態に戻そうとしている状況と似ていると思います。

アナフィラキシーショックのショックとは、血圧の下がる状況を指します。血圧が下がりすぎると、全身に血液が行き渡らなくなり、危険になります。例えば、交通事故で大怪我を負い、出血多量になると、“出血性ショック”で死亡してしまいます。アナフィラキシーショックでは、血管が破れて出血する訳ではありませんが、血液は一気に漏れ出ます。出血はしないけれど、ショック死に至り得るのです。

血液が減少した上で、さらに血管が緩みすぎて、一気に血圧低下が進みます。急激に生命の危機的な状態になってしまいます。

そんな状態で、エピペンを打つとどうなるかというと、血管がキュッと縮まります。その結果として、低下した血圧を上げることが可能となります。たるんだゴムの部分をつまむのと似た状況かなと思います。

私の表現がイマイチで、うまく説明できていませんが、何となくイメージできませんでしょうか?(汗)。

体の中で、水風船のたるんでいるのと似た状態を回復させる薬は、抗ヒスタミン薬やステロイドの内服ではありません。エピペンしかありません。場合によっては、急激に悪化するため、エピペンの使用はためらってはいけないのです。

他にも良い説明法があるのかもしれませが、イメージをつかむことは大切だと思っており、しばらくはこの説明でアナフィラキシーショックの子どもを救う方法をアピールしていきたいと考えています。