小児科 すこやかアレルギークリニック

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2016年03月04日 更新

新潟県内の某市で、誤食によるアナフィラキシーが起きた話は何度かしています。

担当者がインフルエンザにかかり欠席した途端、“代わり”がいなかったため、驚くほどの単純ミスで事故が起きてしまいました。牛乳アレルギーの患者さんにシチューを提供してしまったのです。

県内ニュースでも大きく取り上げられました。私の地元、上越市の話ではなかったので、患者さんのかかりつけ医が園の職員に対し、食物アレルギーの指導に行ってくれていました。それは有り難いのですが、ただ、この街も含め専門医がおらず、私が何とかせねばという気持ちは持っていました。

先日も触れましたが、今回の事故で幼稚園自体も大きなイメージダウンを喫しました。それを回復させるには、速やかに食物アレルギーの対策を本格的に取り、それを周囲にアピールすることだと考えました。

そこで、園に保護者対象の食物アレルギーの勉強会を提案したのですが、園側にも受け入れていただき、再来週私が講師を務め、勉強会が実施される運びとなりました。よかったと思っています。

イメージ回復に一役買うことになった訳ですが、普段講演しまくっているため、スライドの用意は簡単だろうと思っていました。

園側で、事故後に速やかに保護者を対象に緊急説明会が行われました。先ほども言った通り、連携ミスで誤食事故が起きた訳ですが、厳しく見れば、“その前の状況”も課題として挙げられると思っています。

以前、アレルギー検査をして卵と乳が陽性だったため、卵と牛乳アレルギーとして扱われていました。この患者さんは最近4歳になりましたが、卵は食べたことがなく、卵アレルギーとは言えない状況でした。ご存知の通り、卵を食べてアレルギー症状を起こすのが卵アレルギーで、数値が高いだけで食べたことがなければ、卵アレルギー疑いとするべきです。

乳については、ちょっとした誤食があり、軽い症状は起きていました。少量の摂取で軽い症状が出ていたので、大量に摂ればアナフィラキシーを起こすことも予想できました。

私がこの患者さんを最初から診ていたならば、卵と乳の負荷試験はやっていただろうと思っています。あくまで理想論ですが、小さいうちから卵や乳を食べさせていたら、食べ慣れて、完全除去をしていなかったのかもしれない。更にはアナフィラキシーも避けられたかもしれないと思っています。

食物アレルギーの考え方が大きく変わってきました。

いまだに多くの医者が薦める「完全除去」は、専門医にとってみるとかえって危険という認識が広まってきています。親御さんからすれば、アレルギー検査が陽性ならば「完全除去」という話は受け入れやすいのでしょう。ただ、それが自分で自分の首を絞めているような格好になり得るのです。

今回は、誤食させてしまった以外に、症状が出ているにもかかわらず、救急車を呼ばなかったことなど反省すべき点もあります。もちろん、二度とこういうことを繰り返さないために、誤食させない、させてしまったら早め早めに動き、親の到着を待たずして救急車を呼ぶという考え方を導入すべきです。

ただし、園のできることはここまでで、本当は医師が「この子は卵アレルギー、牛乳アレルギーなんだろうか?、だとしたら、どれくらい食べられるだろうか?」と負荷試験をして評価してあげるべきであったろうと思っています。そして、食べられる量を設定し、食べ慣れるよう体にも働きかけた方かよかったと考えています。

その辺の今風の考え方も、保護者の方々に伝えたいと思っています。「へー、今はそうなっているんだ」と思う方を一人でも多く作る、そんな勉強会にしたいと思っています。